「ああ、陰陽師だ……!」 凛とした印の切り方 桜の龍を模した術 そう、あなたは立派な陰陽師だ もう、「死化粧師のなりそこない」じゃない 満開の桜の下 蒼天に花びらが舞い踊る 真紅の狩衣に漆黒の袴、金色の髪をはためかせ 愛しい横顔に花弁がすり抜けていく 彼の術は疾風 華やかに渦となる さながら桜の龍のごとく、河童の瞳を襲った──── 「すごい……っ」 術を放ったのは、まだ無名の陰陽師だ 千年さまは死化粧師より、才能があったのであろう。花びらが、龍のカタチとなり。音を響かせて桜の竜巻を起こす。シュルルルルルルルル──── 「ぎゃあああああああああああああああ」 河童の目が、花びらで目隠しされる! 竜巻の中でフワッと浮き上がると、上空からヒュンと落ちてきた。 ゴッ──── 「邪を祓い、調伏せよ。オンアビラウンケン!」 地面に落ちた河童から、漆黒の煙がブワッと立ち昇る。黒い霧が一瞬、あたりを包むと風にスウッ……とかき消えた。あるのは桜とあやかしと、私たちだけ。静かになった庭園に、しんしんと花びらが降り積もる。 「千年さま、河童は……浄化されたの?」 「ああ、邪のみを祓った。おそらく悪いのは此奴じゃねーからさ」 「そう、だよね。元は穏やかな河童だったって、話してたもんね」 気を失った河童の元へ、お坊さんたちが駆け寄ってくる。 「霜花、大丈夫か霜花ーー!」 「え、河童ってメスだったの!?」 勝手にオスだと思ってたわ! お坊さんたちは、濡れた布で顔を拭いてやったり、名前を呼んだりしている。先刻も思ったけれど、この子……妖怪だけど愛されてたんだな。てっきり「悪しき河童を退治する仕事」だと勘違いしてた。 この人たちは、元の優しい河童に戻ってほしかったんだ。 今の今まで、気付かなかった。 まだまだ鈍感だなあ、あたしも。 そんな想いに駆られていると、千年さまが河童の目が覚めるようにと、印を切り、気を放った。 ドクン──── 脈打ち、大きくのけぞる。水かきのついた手の平が、ピクリと動いた。「じき、正気に戻ると思うぜ。邪気、祓ったからさ」 千年さまの言葉には、優しさが滲んでいた。 紫の袈裟を纏いしお坊さんは、どうにも腑に落ちないといった顔で問いかける。 「感謝いたします。……ですが、いまだに
Terakhir Diperbarui : 2026-01-05 Baca selengkapnya