長年辺境を守っていた夫が、ようやく息子の誕生日に間に合うように帰還した。再会に胸を躍らせながら彼の荷物を整理していた私は、そこで何百通もの手紙を見つけてしまった。それは毎月少なくとも五通は届いていた計算になる。だが、その手紙の差出人は、私ではなかった。私が頻繁に便りを送っても、彼から返事が来ることは一度もなかったというのに。息子の誕生祝いの宴を取り仕切っていた最中、私は偶然にも、夫が息子を連れて姜晚(きょう ばん)という女に会いに行く場面を目撃してしまった。夫は息子にその女を「母上」と呼ばせ、息子もまた「世界で一番きれいな母上」と懐いている。物陰に隠れてその様子を覗き見ていた私の心は、冷え切った。夫の心は離れ、息子にまで疎まれているなら、私は潔く身を引いて二人の望みを叶えてやろう。……私が死を偽って逃げ出してから、今日で十日が経つ。金彩で装飾された馬車に揺られながら、向かいに座る兄弟子を見ると、彼は目に涙を浮かべ、私がここ数年いかに苦労したかを繰り返し嘆いていた。「しかし、本当によいのか?陸則聞(りく そくぶん)と松松(しょうしょう)を捨ててしまって。陸則聞は六年連れ添った夫、松松は手塩にかけて五年育てた実の息子だろう。お前は昔、あれほど陸則聞を愛していたじゃないか。師匠がどれほど止めても聞かなかったのに、今になって要らないと言うなんて……松松はまだ五歳だ。ずっとお前のそばで育ってきた、一番母親を必要とする時期だろうに……」兄弟子の言葉に、胸が締め付けられるような激痛が走った。私の心はとうに死んでいるはずなのに、口元には苦笑が浮かぶ。「私と彼らの縁は、もう終わったのです」私はもともと、天下一と謳われる神医の最後の愛弟子だった。それがある日、どういうわけか行方不明になっていた丞相府の令嬢だと判明し、姜家に引き取られることになったのだ。一方、姜晚は丞相府で長年育てられてきた偽の令嬢であり、陸則聞の幼馴染でもあった。私が実の娘として認められ戻ってくると、彼女はへそを曲げて家を出て行ってしまった。私は陸則聞に一目惚れし、彼は勅命を受けて私と結婚した。私はてっきり、彼と想いが通じ合っているのだと思い込み、三年の間、喜びいっぱいに夫婦としての時間を過ごした。しかし、三年間行方不明だった姜晚が再び
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