あのヒステリックな爆発の後、私は高熱を出して寝込んでしまった。意識は泥のように重く、熱は上がったり下がったりを繰り返す。湊斗は会社へも行かず、家に居座った。医者を呼び、薬を飲ませ、甲斐甲斐しく世話を焼く。沈黙を守りながらも、頑なに「夫」としての義務を果たそうとしていた。けれど、私は彼との接触を一切拒絶した。視線が交錯するたびに感じるのは、凍てつくような断絶と、心が死んでしまったかのような疲労感だけだ。熱が引き、ようやくベッドから起き上がれるようになった頃。私は以前から用意していた離婚届を、書斎の彼の机の上に静かに置いた。「サインして、湊斗」「財産分与については記入済みよ。法的に私が受け取るべき分だけをもらうわ。それ以上は一銭もいらない……この七年は、高い授業料だったと思うことにするから」私の声は枯れていたが、奇妙なほど落ち着いていた。彼は離婚届を睨みつけた。その瞳は陰鬱で、殺気立つほど鋭い。彼は衝動的に手を振り上げ、書類を引き裂こうとした。「破ってもいいわよ」私は先手を打った。感情の波一つない声で告げる。「破ったら、またプリントアウトするだけだから。もしサインを拒むなら、調停を申し立てるわ……桐島社長。泥沼の裁判沙汰になったら、世間体が悪いんじゃない?」振り上げられた彼の手が、空中で凍りついた。彼は信じられないものを見る目で私を見つめる。彼は想像もしなかったのだろう。いつも影のように後ろをついて歩き、言いなりだった遥香が、これほど冷徹かつ決然とした態度で、自分を切り捨てるとは。「遥香、俺たちは……」「私たち、もう話すことなんて何もないわ」私は彼の言葉を遮り、書斎を後にした。挽回の余地など、一ミリも残さなかった。私の態度は彼を激昂させた。いや、焦らせたと言うべきか。彼は目に見えて情緒不安定になり、家の中を落ち着きなく歩き回った。私と会話しようと必死になり、あろうことか初めて自分から「愛理とは何でもない」と言い訳までし始めた。だが、私はすべての感覚をシャットアウトし、彼からの情報を一切拒絶した。私の心は、あの高熱と激情の爆発と共に燃え尽き、もう灰しか残っていなかったのだ。数日後、私はまだ本調子ではない体を引きずり、あの邸宅を出た。独身時代に購入していた都内の小さなマンションへ
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