城を出る前にやるべきこと――砂時計を自動で回転させるからくり作り――を終えたハリスは充足感も味わうことなく城を出た。 泉ができたと聞いてからゆうに一か月は過ぎてしまった。伝令を受けた直後はすぐにでも出向かねばならぬと感じていたのに、砂時計の管理をおざなりにするわけにもいかず、結局この体たらくだ。 ハリスは自らを叱咤しながら、それでも可能な限り早く馬を飛ばし、従者をはるかかなたへ置き去りにしてまで泉へ向かった。 二百年ぶりの城の外。景色は変わっていない。住む人々の顔ぶれが変わらないのだから当たり前といえば当たり前だ。家の配置も店の種類も、そこに根付く人々が入れ替わるから変遷するのであって、永遠に生きる人々にそのような変化は生まれない。変わらない暮らしこそ安定と平穏の象徴だ。 そんな中、ハリスは国唯一の森の入り口で馬を止めた。森は二百年前に比べていくらか成長と伐採の繰り返しによって少しばかり形を変えていたが、ハリスが気になったのはそんなささいなことではない。 彼の目に飛び込んできたのは森の入り口にかけられた多くの見慣れぬ飾りだった。 薄青のタープが幾重にも張り巡らされ、木々の爽やかな緑に涼やかな印象を加えている。枝葉に吊り下げられているのは青色ジルコニアの結晶だ。サンキャッチャーさながらに日光を浴びてきらめいている。目的地までの景色を楽しむための小道が整備されており、足元には砂時計を模したランタンが点々と並んでいる。夜にはライトアップされ、幻想的な風景を見せるのだろう。 「なんで、こんなことに……」 一体誰が。ハリスが立ち尽くしていると後ろから追いついた従者が答えをくれた。 「美しいでしょう。街のみなが妖精の誕生を祝い、喜んで、今ではすっかりこのように」 従者の言っていることは間違ってはいない。美しいことは
Last Updated : 2025-12-22 Read more