車が学校の駐車場に滑り込むように停まった。見渡すと、もう他の家の車も並んでいた。 時計を見ると、まだ八時五分。集合時間にはまだ時間があるけど、やっぱりみんな考えることは似ているらしい。 車のエンジンが止まってドアのロックが開く音が聞こえたから、私は車のドアを開けて降りた。朝の空気はまだ少し冷んやりしていて、長い袖が風に揺れた。 後ろでドアを閉めた利玖がちょっとぐったりした様子でいることに気付いて、私はすかさず声をかけた。「やっぱり酔ったでしょ」「卒業式が始まる頃には治るさ。……多分」 利玖は軽く口角を上げて返してくる。うん、冗談が言えるなら大丈夫だ。「それじゃあ、校門から入ろうか」 お父さんが車に鍵をかけながら、みんなを促した。お母さんは小さく頷き、私は深呼吸をひとつして、通い慣れた校門へと歩き出した。 今日はいつもと違う。制服も、気持ちも、全部がちょっとだけ大人びている。 正面玄関へ足を踏み入れると、袴姿の先生たちが並んで立ち、にこやかに「おはようございます」と声をかけてくれる。 みんなの胸元には、綺麗な白いリボンのようなものが付けられていて、いつもとは違う雰囲気。少しだけ背筋が伸びる。「おはようございます」 私がペコリと頭を下げると、その中のひとりがパッと顔を明るくして声を上げた。「はいっ、莉愛さん、おはようございます! 卒業おめでとうございます」 見覚えのあるその声に顔を向けると、雷斗《らいと》先生だった。利玖の初等部時代の担任の先生。背が高くていつもエネルギッシュで、どこか“お兄ちゃん先生”って呼びたくなる雰囲気の人。 雷斗《らいと》先生が私にピンクのリボンのバッチをくれた。そして私の隣にいた利玖の顔を見るなり目を丸くする。「えっ! 利玖か! うわっ、背ぇ伸びたなー! ……どうした? ぐったりして」「……ちょっと酔った」 利玖がむにゃっとした声で応えると雷斗《らいと》先生は大きく笑った。「はははっ! 卒業式が終わるまで座ってな! 莉愛さんのお父さんお母さん、本日はおめでとうございます」 さっきまでの砕けた口調から一転、きちんと背を正して、お父さんとお母さんに丁寧に頭を下げる。その切り替えの早さに、ちょっとだけ笑ってしまいそうになった。 お父さんとお母さんもにこやかに「ありがとうございます」と返して、互いに頭を下
Terakhir Diperbarui : 2025-11-26 Baca selengkapnya