学園案内は、残念ながら莉愛ちゃんと一緒には周れなかった。だけど、まさか私の出席番号の後ろが寮で話を聞いて仲良くなりたいと思っていた優ちゃんだったのだ。 そのお陰で、私は心細さを忘れて楽しく校舎を周ることができた。 ……とはいっても、会話のほとんどは私が一方的に喋って、優ちゃんが優しく返事や相槌を打ってくれる形だったけど。それでも同じ時間を一緒に過ごせたことが、すごく嬉しかった。 いくつかの場所を周るうちに、特に私の心を惹きつけたのは──専門棟の“魔械工学棟”。 魔械歯車が壁一面に並んだ廊下の途中に並ぶ教室にある、複雑な器具や見慣れない魔械機器。その光景に胸が高鳴る。(ここだ) あの時、菊理が見せてくれたように「こんなのがあったらいいな」っていう願いを形にできる場所。誰かの生活を変えたり、心を動かしたりできる場所。 その瞬間、私の胸の奥に芽生えた感情は、ただの好奇心じゃなかった。 ──ここでなら、私も、あの感動を人に伝えられるかもしれない。 夢が確かに、またここで生まれた。・・・ 別館の案内も終わり、私と優ちゃんは自分の教室へ戻ってきた。机の上にはすでに山のような教科書が積まれている。「わっ! これが教科書かっ!」 思わず声が出てしまう。どれどれ、と一番分厚そうな本を手に取って適当にページを捲ってみた。(さっぱり分かんない) 文字だらけのページに目が泳いでしまい、顔をしかめる私。その様子が可笑しかったのか、横で見ていた優ちゃんが小さく吹き出した。「本当、詩乃といるとずっと楽しいわ」 クスクスと笑いながら、そんな嬉しいことを言ってくれる。優ちゃんはそのまま私の後ろの自分の席に座る。「えっ、そう? えへへ……でもたまに“うるさい”って言われちゃうんだけどねっ」 私が肩をすくめると、優ちゃんは首を横に振った。「そんなことないわよ。学園案内中も、ずっと賑やかで楽しかったわ」 私は胸の奥がポカポカして、自然と笑顔が溢れてしまう。 その時、教室の外から芽依ちゃんの声が聞こえた。思わずそっちに顔を向けると、教室の外で莉愛ちゃんと、見知らない男の子が隣のクラスに向かって手を振っていた。 男の子は、少し顔を赤くして芽依ちゃんがいるであろう方向を見ていて、莉愛ちゃんはその様子を見て、微笑ましそう
Last Updated : 2025-12-02 Read more