「というか、私はそういう性格の男が大嫌いなんです。付き合ってみて、それでも好きになれなかったら別れればいいだけの話じゃないですか?無理に引き留める必要なんてありません」遥の目は澄み切っていた。個人的な感情は一切混じっておらず、純粋に本心を語っていることが見て取れた。湊は少し口ごもった。「それって……そんなに重要なことか?たった一言のことだろう」「社長にとっては些細なことかもしれません。でも、女性プレイヤーにとっては非常に重要なんです。もし私がプレイヤーの立場で、こんなメインキャラに出会ったら、絶対に攻略を諦めますね」遥は手元のペンをクルクルと回した。「これは女性向けの恋愛ゲームであって、現実ではありません。プレイヤーの意思が全てですから、社長が個人的に気になさる必要はありませんよ。特に他にご用がないなら、私はこれで失礼します」湊は顎を引いた。「ああ」会議室のドアが開いて、そして閉まる。長いテーブルの端で、湊はポケットに手を伸ばしたが、ここが会議室でありタバコを吸うには不適切だと思い出し、その手を引っ込めた。しばらくして、彼は指先でこめかみを揉みほぐした。スマホに蓮から、夜飲まないかという誘いのメッセージが入っていた。湊はスマホを手に取り、返信を打ってから横に置いた。少しの間を置き、彼は遥から提出されたシナリオの台詞集を開くと、スマホのマイクボタンを押し、一つの音声メッセージを送信した。自席に戻っていた遥は、湊からメッセージを受信したのを見て、危うくスマホを取り落としそうになった。二十五秒の音声データだ。文字起こし機能を使ってみたが、奇妙な一文だけが表示された。遥は左右を見回し、こっそりとイヤホンを耳に押し込んだ。仕事中に社長から個人的なメッセージが送られてきたなんて、誰にも知られたくない。そもそも、彼とLINEを交換していること自体、誰一人も知らないのだ。イヤホンをつけると、遥は音声データを再生した。長く、深く喘ぐような息遣いが耳に流れ込んできた。それに続いて、途切れ途切れではあるが、はっきりとした声が聞こえる。ゲームのメインキャラの台詞だ。「偶然の再会なんてない。すべては俺が仕組んだ、不純な企みだ。俺の理性をかき乱すのは、いつだって、
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