彼女は、父親が子供の人生に関わることを拒むつもりはなかった。幼い頃から、父は彼女を掌中の珠のように大切に守り、愛してくれた。だからこそ、昔のことを思い出すたびに父が恋しくなる。彼女を悩み一つない、少しわがままなほどのお嬢様に育て上げたのも、他ならぬ父だった。娘だって、同じように父親からの愛を必要としていることを、彼女は失念していた。湊はこれまで、娘との接し方において全く隙がなく、完璧だった。父親としての役割を果たし、優しく、細やかに気を配っていた。結衣が湊のことをとても好きだということも、遥には分かっている。それならば、二人が関わることを邪魔する理由はなかった。湊は口を開きかけたが、結局何も言えなかった。彼女の瞳の奥に、少しの波風すら立っていない、あまりにも穏やかで冷淡な感情を見たからだ。こんなはずじゃない。彼女は俺に向かって腹を立て、罵り、殴りかかってくるべきじゃないのか?そうしてくれれば、俺だってどう弁解すればいいか、どうやって彼女を宥めればいいか分かるのに。だが、目の前の遥はあまりにも静かすぎた。その静けさに圧倒され、湊は一言も発することができなかった。霊園にはすぐに到着した。父の墓石には、満面の笑みを浮かべた写真が貼られていた、どことなく遥に似ていた。その隣にはもう一つ小さな墓石があり、そこにも嬉しそうに笑っている子犬・レオの写真が貼られていた。正男の写真の笑顔と並べると、一目で家族だと分かる。墓石には、【立花正男 愛犬レオの墓】と刻まれていた。湊が墓石を見つめているのに気づき、遥はレオのために買ってきたデンタルボーンを供えながら口を開いた。「レオは私より五歳下なの。道端で、父が拾ってきた捨て犬だったのよ。その時、レオはまだレオのお母さんのお腹の中にいてね、父の車の中で産まれたの。レオのお母さんは周りに毒蛇がいることに気づいて、父の前に立ちはだかって父を助けたの。でも、自分は助からなかった」その日から、レオは遥の家の大切な家族の一員となった。「レオは、私よりも父に一番懐いていたわ。父が亡くなった後、水もご飯も一切口にしなくなって、一週間後には息を引き取ったの」そう語る遥の顔には、微かな笑みが浮かんでいた。だが同時に、涙が頬を伝ってとめどなく
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