七周年の結婚記念日。篠川南(しのかわ みなみ)の幼なじみは電話をかけてきて、家の水道管が壊れたと言った。彼はためらいもなく、修理に出て行った。まもなくして、須崎夕美(すざき ゆみ)のSNSがきっちり更新された。【いつでもどこでも、電話一本で駆けつけてくれるヒーローさん。どうやってご褒美をあげようかしら?】添えられていた写真は、床一面のコンドームと破れた服。私はふっと笑い、もう一本別の電話をかけた。「うちの水道管が壊れたの。修理に来てくれる?」電話の向こうからすぐに返事が返ってきた。「どういう意味だよ?篠川佳奈(しのかわ かな)、君は俺を水道屋だと思ってんのか?」声には信じがたい気配が漂っていた。そのあと照れくさそうに続けた。「ふざけてねぇよな?明後日帰国の便、変更して直しに行く!」「じゃあ、待ってるね」私は笑って電話を切った。時計へと視線を向ける。長針がちょうど 「12」を指していた。こうして、私と南の七周年記念日は、ただただ静かに過ぎていった。スマホが鳴った。南からの電話だった。私は無表情のまま応答した。「今日は遅くなったから、もう帰らないよ。七周年記念日、おめでとう!」彼の声は情欲に満ち、夕美の大きすぎる喘ぎ声が響いていた。聞こえないはずがない、というように。「南、早すぎるよ、もっとゆっくりして……今日、佳奈との結婚記念日なんでしょ?じゃあ代わりに、佳奈に『記念日おめでとう』って言っといて!」私は思わずおかしくなり、同時に心の底から馬鹿げているとも感じた。電話は切られ、静まり返った家に残ったのは私だけ。午後ずっと心を込めて飾りつけた部屋が、まるで笑い話のように思えた。まるで、南と過ごしたこの数年のように。翌朝早く、私は引っ越しの物音で目を覚ました。行き交う作業員たちが、私が丹精込めて選んだ家具を次々と解体し、運び出していく。私は慌てて彼らを止め、理由を問いただした。次の瞬間、南が夕美を大事そうに庇いながら入ってくるのが見えた。私を見た途端、夕美は怯えたように南の胸に逃げ込んだ。「南、佳奈の目が怖い……」南は不満そうに私をにらむ。「佳奈、夕美を怖がらせるな!」私は無表情のまま二人を見据えた。「何をするつもりなの?ど
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