結婚して六年目、周防蒼介(すおう そうすけ)の傍にはまた別の女がいた。以前と同じように、何事もないふりをしたかった。でも今回の女は大人しくなく、あの手この手で私の前で芝居を打つ。蒼介の彼女への態度も今までとは違い、彼女はこんなに我が儘放題なのに、ずっと甘やかしている。病気のせいで頻繁に注射を打たれて腫れ上がった左手の甲に触れると、突然どうでもよくなった。「蒼介、離婚しましょう」出会って、分かり合って、そして顔を合わせるのも嫌になるまで、たった六年しかかからなかった。あなたは私が最も必要としていた時に現れたのに、私が闇から抜け出した後、再び深淵へと突き落とした。もう疲れた。残り少ない時間、私はただ自分のために生きたい。繋ぎ止められない犬なら、他の人を噛ませておけばいい。*私は呆然とした表情で、手に取ったばかりの癌の診断書を見つめていた。上には私の名前、周防遥(すおう はるか)が書かれた。予兆はあったのだ。私が一晩中、病気の痛みで眠れなくなった時から……蒼介との学生時代から結婚生活まで、六年の時間が、私たちの全ての気力をほぼ使い果たしていた。同じ家に住み、同じベッドで眠るのに、いつからか彼はいつもベッドの端で私に背を向けて丸まり、私には背中だけを見せるようになった。私は毎晩痛みで顔が歪むほどだった。もし彼が一度でも振り返って私を見てくれたなら、私の異変に気づいただろうに。いつからか、私たちの間には口論と沈黙しか残っていなかった。麻痺したようにスマホを手に取ると、開いたばかりのSNSの投稿を見て一瞬目眩がした。写真には若くて綺麗な女の子が後ろから飛びついて、蒼介の首に抱きついていて、蒼介は彼女が転ぶのを心配してか、左手を後ろに回して女の子を支えている。彼女がはしゃいで、彼が笑っている。女の子は口角を上げ、目を細めて、満面の笑みで蒼介を見つめている。まるで学生時代の私そのものだった。この数年、私はもう笑い方を忘れかけていた。画面の中の蒼介も、かつては私をこんな風に見てくれた。闇の中に差し込む唐突な明るい光のように、暗雲を突き破って、私を丸ごと光の中へ引っ張り出してくれた。18歳の蒼介には揺らがない意志があるように見えた。「遥、怖がらないで。僕が守る。一生僕に頼っていいから」
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