All Chapters of 念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-: Chapter 11 - Chapter 20

34 Chapters

11話 レルゲンの過去

旧王朝がまだ栄えていた頃、いや、革命により没落する前、レルゲンは庭で遊んで、勉強して、少し昼寝をして、また勉強して。そんな王朝の中では平和と呼べる日常だった。幼い頃は常に両親の言う通りに生活し、決まった事を決まった通りにこなす日々。そんな日々にも疑問は持たずに、二年の月日が流れた頃、ある魔術師が小綺麗な鞄を片手に訪問してきた。「皆さん、本日はお招き頂き恐悦至極。私はナイト、ナイト・ブルームスタットと申します」「ようこそナイト殿、我が王朝へ。さっ、長旅でお疲れでしょう。どうぞお寛ぎを」レルゲンの父が挨拶を返す。普段は自分こそここの主人だと言わんばかりの態度だが、このナイトと呼ばれた人物は、父が畏まった態度に出る程の人物なのだろうか。幼い頃のレルゲンは新鮮な気持ちになり、それは青年になった今でも鮮明に覚えていた。「おや?そちらが“例”の?」「ええ、シュトーゲンになります」初めは父の後ろに隠れたが、勇気を振り絞ってナイトに挨拶を返す。「レルゲン・シュトーゲンです。初めまして」「とっても礼儀正しい子ですね。初めましてこんにちは。今日から貴方の魔術の先生になりました。これからよろしくお願いしますね。シュトーゲン君」ナイト先生の授業はとても難しく、魔術理論に関してはさっぱり理解できなかった。それでも、何日かに一度の課外訓練は楽しかった。「ねぇナイト先生、今日は何を教えてくれるの?」「そうですねぇ、シュット君は座学がまだまだですが、実技が素晴らしいですからね。今日は念動魔術について教えようと思います」「それ知っているよ!お屋敷の人がよく使っている、魔力の糸を使うんでしょ?」「そうです。でもこの魔術は、お屋敷で使える人はいないと思いますよ」「そうなの?どうして?」「魔力で糸を作らず、ただ自分の意思のみで有りとあらゆる“事象の操作”ができる魔術です」「事象の操作?」ニコッとナイト先生が笑う「例えばそうですね。シュット君、今欲しい物はありますか?」「うーん、新しい剣が欲しい!」「それはまた何故でしょうか?」「お父さんが言っていたの。真の戦士は、剣と魔術、どっちも一流?なんだって!」「それは素晴らしい考えですね。私は魔術以外が全くなので、もしそれができるようになったら、シュット君は私以上になれ
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12話 中央までの旅路

街から中央までは馬車を使えば一ヶ月。歩きだと三ヶ月はかかるだろう。膨大な魔力量を誇るレルゲンなら三人に念動魔術をかけて空を飛んでいく事も出来るだろう。しかし、彼はそれを嫌った。恐らくマリーとハクロウも気づいているが、あえて口にしない。まだ時間にすれば短いが、出来るだけ一緒の時間を増やしい気持ちがお互いにあった。最寄りの街までは後三日というところ。出発前に買った地図を広げながら、次の街までの道のりを確認する。「次の街まで後三日くらいか」「あの街では馬車自体なかったから、行商人にでも乗せてもらいたかったわね」「ユニコーン騒ぎで噂が広まって、行商人すら来なくなっていたからな」「まぁゆっくり行こうや、お二人さん」砂埃が舞っていた街とはまた変わり、芝が生えて背丈の低い草花が咲いている。唯一、行商人が通っているであろう轍の上を歩いて進んでいた。「レルゲン、お水頂戴」「どうぞ」念動魔術で三人分の荷物を浮遊させて運んでいるレルゲンが、マリーの分の水を取り出して渡す。「ありがとう。それにしても本当にこういう時便利よね、念動魔術」「パーティに一人は欲しいだろ?」「絶対欲しいわ」後ろについてくるハクロウもうんうんと頷く。「そうだ!私にもその魔術教えてよ」「それは構わないが、マリーの魔術適正ってどのくらいあるんだ?まだ魔法と魔術、どっちも使っているところ見た事ないけど」得意げにふふんと笑う「聞いて驚きなさい。適正ランクAよ」「なら系統適正があれば大丈夫そうだな」「これでも魔剣士目指して頑張っているのよ」魔術適正とは物心つく時にどの程度魔術が扱えるかを測る、いわば才能テストみたいなものだ。全部でD〜Sまで評価分けされており、魔術の一般常識では才能八割、努力二割と言われている。血統やその育った環境などで後に適正の上下が発生することはあるが、滅多にないと言っていい。ちなみに幼少期にレルゲンが測った時はB評価で、今のマリーより下だ。B評価だと判定された時は少しナイト先生が落ち込んでいたが、当時のレルゲンにはBもあってなぜ落ち込むのか分からなかった。ハクロウはC。元々魔法より剣を好む性格で、魔力運用は自身の身体強化が大部分を占める。魔術適正がAもあれば念動魔術は恐らく使えるようになるだろう。念動魔術は使えるよう
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13話 謁見の間

いよいよ中央の門を潜る。さすがにどの行商人も厳重に門兵が確認している。マリーとハクロウ辺りは門で兵士が気づくと思うが、ではお前は何者だ?となる展開が容易に予想できる。仮にそうなった時は行商人に化けるつもりだったが、意外もあっさり通され、肩透かしを食らう。うーんとマリーが考え込んでいたが、答えは出てこないようだった。さすが中央なだけあって、街の景観は白を基調とした清潔感があり、街行く人々には笑顔が多い。中央通りの床は白い石が規則的に並び、そこを行商人の荷車が通る。とにかく街がでかく感じた。レルゲンが中央を去ったからというもの、大きさは約二倍にはなっているだろう。外周は高い壁で囲まれており、“綺麗な円”の形をしている。街の中心にマリーの住まう王宮が鎮座しており、遠くからでも威厳を示す出で立ちはまさに壮観。王宮に近づくほど、高級な洋服店や宿泊施設が立ち並ぶ。鍛冶場も確認できた。そして中央ともなればギルドの本部もある。ギルド本部には地方のギルドの情報がすべて集約されている。地方ではできない魔術適正・魔術系統を測定でき、最大魔力量なんかも測れるらしいが、ギルドでもしもお世話になるときは面白半分でやってみようと考える。更に中央には“王立図書館”なるものがあると聞いたことがあるが、王立とだけあって一般公開されていないのだろうか。これは後でマリーに聞いてみよう。反対に王宮から遠ざかれば庶民的な雰囲気が漂うが、貧民街が見当たらない。体を荷車から乗り出して、幼少期に自分が少しの間過ごした貧民街を探していると、マリーが口を開く。「懐かしい?」「街並みが変わりすぎて、面影が全くないな。まるで別の街に来ているようだよ」「急速に発展しているから、確かにわからないか。私が子供の頃はこんなに綺麗な街じゃなかったもの」この王国はまだまだ絶賛発展中のようで、未だに街のいたるところで建物の施工音が聞こえてくる。完成された街というよりかは活気あふれる未完成の街という表現が的確だろう。行商人の取引先まで一緒に見て回りたいほど、観光資源が豊富な街である中央。だが、ここに来たのは観光ではなく、もちろんここまで来る口実である鍛冶屋でもない。マリーの“安全を確保”する為だ。もちろんその役目はハクロウに任せても良かったと、この短い旅
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14話 騎士団長ベンジーとの一騎打ち

「それでは模擬試合、初めて下さい!」「わざわざ付き合ってもらって悪いな、レルゲン殿」「報酬は頂きますよ」「やる気になってくれて助かる。個人的にも貴殿の戦い方には興味があるのでね」「それは光栄ですが、そんな見せびらかすものでもございませんので、期待されても困ります」手には片手直剣、帯同させている剣が空中に浮かびながら、魔力糸無しでレルゲンの魔力が込められていく。ベンジーが魔力を目に集中し、どういったカラクリで浮遊しているのか、魔力が込められているのかを確認するが、魔力の繋がりを感知する事が出来ないでいた。ベンジーが眉をひそめ、レルゲンに正直に伝える。「それが貴殿の武器か。見たところどうやって魔力をその浮いている剣に込めているかは知らんが、面白い戦い方だな」ここでレルゲンに戦闘スイッチが入る。「どこかで見覚えがあるのか?」「似たような戦い方は見た事があるが、貴殿の“それ”は完全に別物だな」「そうかい。そろそろ観客も痺れを切らす頃だ。始めてもいいか?」「いつでもいいぞ」先手は譲ってやるとでも言いたげに余裕を見せる。「ではお言葉に甘えて」(最初の一撃で決める)長引く程観客は盛り上がるだろうが、レルゲンにとってはその分手札をこの大衆の前で晒すと同義だ。出来るだけその事態になる事を避けつつ、かつ皆に実力を認めさせるには(螺旋剣)帯同していた一本の剣に魔力を集中し、強引に剣の形状を維持しつつ刀身を捻る。ギリ、ギリと無理な力で捻じられて悲鳴を上げるようだが、念動魔術で空間ごと捻じ曲げることで剣の崩壊を防ぐ。「回れ」命じられた螺旋剣が回転を始め、高速回転により砂埃が中心に集まっていくように巻き上げられる。「ほう」ここで感心したような声を上げ、ベンジーがゆっくりとロングソードを上段に掲げる。ロングソードに魔力が込められていき、ハクロウとは違い螺旋剣を正面から向い打つつもりだ。その様子を見てレルゲンが更に動く「ウィンドカット」ウィンドカットはその利便性から材木の切断などでよく使われるが、攻撃魔法としては下位で、一段階目の魔物を追い払う時などの用途に限られている。その風の初級魔法であるウィンドカットを高速回転されている螺旋剣に纏わせることで、ウィンドカット自体が回転に巻き込まれ、溶けるよ
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15話 念動魔術の真髄

件のマリーとレルゲンは少し離れた所で。マリーは貴族との会話をしながら、レルゲンと出会う前からの話題を順番に話しているようだ。一方のレルゲンはというと、貴族の若い女性に言い寄られる訳でもなく、騎士の面々に先程の騎士団長との戦いについて聞かれるというのもなく一人で出された料理をつつく、訳でもなかった。(この料理、食ってもいいのか?)毒でも入っていたらと考えると目の前に出された豪勢な料理も喉を通らなかった。気分転換にでも夜風に当たるかと思い、会場の大窓を少し開け外に出る。数人分の広さの半円に近いバルコニーの柵に肘をつき一息つく。マリーの位置は魔力感知で補足している。闘技大会では意識を集中しなければ広範囲に微力な自然魔力を感知できなかったが、今は比較的神経を使わなくても捉えることが出来た。暫し落ち着いていると、ある事を思いつく。(もしこの水の中に毒が入っていたとして、その毒の部分だけ念動魔術で取り除けないだろうか?)基本的に念動魔術は目で一度見たことがあるものに限定されるが、無我夢中だったとはいえ闘技大会の一件の時は剣を補充する時に一度できている。ここで念動魔術を教えてくれたナイト先生の言葉を思い出す。(念動魔術とは魔力で糸を作らず、ただ自分の意思のみで有りとあらゆる“事象の操作”ができる魔術なのです)「答えは“ここ”か」胸に手を添えて、懐かしむように遠くを見つめる。ナイト先生の言っていたこと、そしてあの時掴んだ念動魔術の真髄の一端。(やってみるか)念動魔術で自身を空中に浮かべ、花が生い茂る中庭へと降りる。降りる前に持参した水とグラスに花壇から土を掬い、グラスの中へ入れる。細かい土の粒子が水の中へ溶け、茶色く濁る。意識をグラスの中の水へ集中させ、綺麗になった水をイメージする。念動魔術を発動し、土と水の分離を行う。水面が波立ち徐々に土が取り除かれ、水の濁りが薄くなる。(ここからだ)更に深く集中するために目を閉じる。もう見る必要は無い。次に目を開ける時は完全分離の後。水が渦を巻き、渦の中心へ目に見えない程細かい砂が集まっていく。水面が静かに落ち着いてゆき、土の粒子がゆっくりと持ち上がり花壇へと戻っていく。出した命令は、水と"不純物"に仮定した物質群の完全分離。目を開ける。見たところは真
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16話 毒殺

朝食がマリーの部屋に運ばれて来るタイミングで、バルコニー側の窓ガラスからノックする。「レルゲンだ。マリー、入ってもいいか?」「こんな朝早くから何かしら?どうぞ、入って」事情を掻い摘んで説明する。「それで?これから毎食、私の料理を貴方が毒味するって?」「ああ」「あのねぇ、もしもの事があったらどうするのよ」「それは大丈夫。出される料理全てに「毒分離」の念動魔術をかける」「念動魔術ってそんなことも出来たのね」「意外とあっさり信じるな」「あら、私に嘘ついているの?」「まさか」「そ、ならいいのよ。その毒分離の念動魔術、やって頂戴」「分かった」意識を集中し、昨晩の砂分離の感覚を呼び起こす。レルゲンがイメージしたのは「マリーに害のある物」の分離。空いている皿を予め用意し、分離できてしまった時の為に保存できるようにしたが、果たしてどうだろうか。すると、やはりと言うべきか、空いていた皿に白い粒が少量積もっていた。これを見た時に自然魔力が大きく揺らいだのが一人。急いでその場を後にしようとする使用人を念動魔術で捉え、身動きを封じる。(間に合ってよかった)「さて、事情を説明してもらおうか」身動きを封じられ、流石に観念したのかポツリポツリと話始める。「私は、フィット様に命じられこの料理を運んできました。嘘ではございません。どうか、どうかお慈悲を」魔力糸をマリーに繋げ、思念で会話する。糸電話の要領だ。(どうなの?)(分からないが、自然魔力の揺らぎは問題ない。セレス様みたく魔術に秀でているなら別だが)(そう、ならいいのよ。それよりも「セレス様」ってどう言うことよ。あなたたち、いつの間にそんなに仲良くなっていたの?)(昨日)ここでレルゲンが魔力糸をマリーから離し、会話を遮断する。これ以上はマリーの機嫌を損ねる一方だ。「後でちゃんと説明してもらうからね」「御意に。そういえば、元・毒入りの料理、流石に下げるよな、すまんが新しい料理を頼む。悪いが作っている工程は全て確認させてもらう」「いえ、そのまま食べるわ」「は?いやいや、これ、本当に毒だぞ。何の毒かは分からないけど」「自信ないの?」さっきの仕返しと言わんばかりの口調で、自分の命を賭けに使ってくる。「ある、が先にコレは俺が食べる」「あっ、ちょっと!」
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17話 薬学研究所 カノン・トスレティア

「薬学研究所には我が第二王女のカノン・トスレティアがいます。彼女にはまだレルゲン殿は会った事がありませんでしたね」「セレス、彼に案内をお願い出来ますか?」「承りました。女王陛下」ここでマリーが待ったをかける。「お言葉ですがお母様。案内でしたら私が行います」優しく諭すようにマリーに女王が告げる。「いいえ、マリー。貴女にはハクロウを護衛につけ、安全な部屋で待機してもらいます。分かってくれますね」「承知致しました」不満そうな口振りだが、女王のお願いを承諾する。話しがまとまったところでセレスティアがレルゲンの元へ向かう。「ではレルゲン、参りましょうか」「承知致しました。女王陛下、マリーをよろしくお願いします」「任されました」薬学研究所、もとい魔術研究所に向かう最中、昨日できるようになったばかりの物質分離の念動魔術が早速役に立ったことをセレスティアに伝える。するとセレスティアが少し笑い。「対策を昨晩遅くまで話し合った甲斐がありましたね」と返してきた。一部の貴族がこの会話を聞いたら白目を剥くだろう。「全くです」とレルゲンも笑って返すが、その表情はどこか表面的なものだった。頭を切り替え、気になっていた事を尋ねる。「時にセレス様、フィットとはどのような人物なのでしょうか?」「フィット伯爵は、第二王女であるカノンの「支援貴族」になります」「なるほど、それでセレス様は私に案内を買って出て下さったのですね」「それもあります」というのも、マリーがもし案内役になっていたら、フィットの支援対象となるカノンと修羅場になる可能性があったのだ。「他にもあるのですか?」ニコッと笑い、片目を閉じて「内緒です」と一言。マリーの命がかかっている以上、隠し事は避けて欲しいのだが、屈託のない笑顔を見せられると、マリーには関係ない事なのだと理解する。きっと個人的な事だろう。それから少し歩くと、植物園のような全面ガラス張りのドーム状の建物が姿を見せる。「驚きましたか?」「ええ、ガラスのみでここまで大きな建物は初めて見ました」イタズラが成功した時の子供のような笑いを見せるセレスティア。「いい反応ですね」(セレス様。意外と柔らかいところもあるんだな)「では、中に入りましょう」「はい」中へ入ると栗色の髪に、目には深いクマを蓄え
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18話 中央の街ぶらデート

常に気を張っていては身体ではなく心が疲弊する。そこで兼ねてより約束していた鍛治屋、もとい街のぶらり旅をレルゲンが提案したのだった。「いいわね!私も振り回されてちょっと気分転換が必要だと思っていたのよ。今からだと陽がすぐ落ちちゃうだろうし、明日行きましょう!」「分かった」マリーが予想していたよりかなり乗り気な反応をする。余程ストレスが溜まっていたようだ。次の日、軽く朝食を済ませて、出かける準備をする。もしもの時の為に剣を一本背負い込み、待ち合わせに指定された噴水のある広場に足を運ぶ。マリーを驚かす品物を鞄に詰め込む事も忘れなかった。約束の時間までまだ余裕があった筈だが、感知し慣れた魔力反応が既にある。「お待たせ、マリー」「ううん、私もさっき来たところ」白いワンピースに茶系の帽子、目には最近流行っていると噂されている日避け用の眼鏡をかけ、白いサンダルを身につけている。結ばれている金色の髪は真っ直ぐに下され、普段とは全く装いが違った。思いがけず見惚れてしまい、一瞬言葉に詰まってしまったが、すぐに彼女の容姿について似合っている旨を伝える。「とても似合っている、綺麗だよ」「そう?時間をかけた甲斐があったわ。でも貴方、それいつもと同じ旅の格好どうにかならなかったの?」「すまない、街にふさわしい服を持っていなくてな。流石に騎士服を着るわけにはいかず…」これには本当に申し訳ない気持ちになる。こうなるなら、セレスティアに相談しに行けば良かったかも知れない。「まぁ、いいわ。それなら貴方の服装を私が見繕ってあげましょう!」「それはありがたい」「で、その大荷物はまた何?」突っ込み所が多すぎて頭が痛いと言わんばかりに額を抑えるマリー。ここで挽回しなければと思い、鞄の中から念動魔術で、驚かす為の品を出す。「それって」「そうだ、アシュラ・ハガマの尻尾にある増幅器代わりになっていた鉱石と、ユニコーン二種の角と魔石だ」「なるほどね、それらを持ち込んで唯一無二の装備を作ろうって訳か」「そうだ、アシュラ・ハガマは武器として、ユニコーンは魔石を使って武器の核にしようと思う。残るはユニコーンの角二本と魔石一つだが、これはマリー。君の防具か武器、もしくは装飾品を作って貰う予定だ」思いの外喜ぶという感じではなく、冷静に
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19話 魔族の襲撃

緩み切った空気になることを待っていたのだろう。草陰から音もなく暗器が投げ込まれる。こんな人混み中で強行してくるとは、流石のレルゲンも一瞬出遅れる。投擲物が来たとわかってから、自分とマリーに念動魔術をかける。“矢避けの念動魔術”自身に害があると認識した投擲物の軌道を自動的に曲げる事ができる魔術で、レルゲンが旧王朝出身でありながら今まで生きてこられたのも、この魔術を早期に会得したことが大きいと言える。最初に使ったのは暗殺ギルドの長との戦いで、同じく投擲物の軌道を曲げるために使い、それを加護によるものだと誤認させた。マリーがもっている“連続剣の加護”も同様に、加護には弱点が存在する。連続剣の加護は自身の闘志が無くなると効果が消える。“矢避けの加護”の弱点は攻撃されたと認識しなければ発動しない。付与される加護の希少性では矢避けの加護は下位に位置し、その弱点もある程度知られている。つまり、レルゲンの緊張が緩み切った瞬間を狙って、マリーから中々離れないレルゲン共々暗殺しに来たというわけだ。矢避けの念動魔術によって暗器が逸れたと同時に集中を深くし、周囲の魔力反応を探る。人型・強い魔力。人間とは自然魔力の流れ、大きさが異なっていた。(この感覚、忘れもしない。魔族だな)魔族は最低でも三段階目、多くが四・五段階目に分類される種族だ。(いよいよマリーを狙う敵側もなりふり構っていられなくなってきたか)通常、魔物は消滅時に魔石を生成するが、魔族は別で最初から魔石を体内に有している。身体の一部となる事で魔力の運用効率が爆発的に向上し、高い戦闘能力を有している事が多い。ここまで入念に準備して、かつこちらはマリーも帯剣していない。今自分が持っているのはお守りで持ってきた鉄の剣と黒龍の剣。黒龍の剣なら相手することはできるが、鉄の剣では螺旋剣にした所で倒せる魔族は一体のみだろう。狙撃に近い遠方からの攻撃手段があるかもしれない。ここまで後手に回ってしまうと分が悪い。念動魔術で空を駆ける。「逃げるぞマリー!」「戦わないの?」「こいつを使えば戦えるだろうが、いきなりの実戦が魔族相手は分が悪い、一旦体制を立て直す」全速力で王宮を目指す。魔族側も羽を展開して追いかけてくるがレルゲンの方が速い。王宮まであと少しという所で、
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20話 マリーの戦力上昇訓練

次の日、早速マリーの強化訓練が開始される。いきなり実演に入る前にざっくり訓練の内容を説明する。マリーの持っている剣は王国の宝剣と呼ばれる代物の一つで、魔剣に分類されている。この魔剣の効力は簡単に言うと使い手の速度上昇と魔力強化だ。一見地味な効果だと思いがちだが、マリーの場合は別だ。マリーには「連続剣の加護」がある。連続剣の加護と速度上昇の効果は相性がいい。加えてマリーの膂力の高さも相まって、連続剣の加護が発動し続けると、理論上はどんな攻撃よりも速く、そして強く繰り出せるようになる。「マリーは連続剣の加護を持っているよな」「ええ」「でも試合で戦っていた時は発動が切れた。なぜだと思う?」「あの時は正直に言うと押し返された時に負けを覚悟したわ」「そうだな、マリーの心が先に折れていた。俺も正直に言うが、あの戦いは実際賭けだった。あのままマリーの加護が発動し続けたら俺は負けていたかもしれない」「そうなの?」レルゲンが力強く頷く。加えて更に伸び代がある事を伝える。「それにマリー、あの時は剣に魔力を大して付与していなかっただろう?」「そうね、剣術だけに頼っていたわ」「その魔剣は魔力強化もされると聞いた。折角魔術適正がAなんだ。もっと剣に魔力を込めて戦えるんじゃないのか?」「無理よ」ん?と首を傾げるレルゲン。ここで躓くとは思っていなかったようだ。「私、魔術適正は高いけど、魔力量はそこまで多くないのよ。だからあの時だって、剣に魔力自体は流していたわ」「なるほどな」ここまで聞ければ十分と言いたげに、レルゲンがマリーの強化方法を告げる。「よし、マリーの修行は魔力の効率的な運用じゃなくて、魔力の絶対量の上昇だな」「簡単に言うけど、どうやるの?」「簡単さ、マリーには何回もマインドダウン状態になってもらう」マリーの顔が青ざめる。マインドダウンは本来避けるべき症状だが、恩恵もある。それはマインドダウン状態になって体内の残存魔力がゼロになった時に発生する“器の破壊”だ。身体が怪我をした時により強い組織へと修復するのと同じで、一度魔力がゼロになると、より多くの魔力を蓄えられるようになる。幸いこの土地には地脈も通っている。器の修復自体は直ぐにできるだろう。後はマリーがマインドダウンの症状に耐えられるか次第だ。「ど
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