All Chapters of 念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-: Chapter 21 - Chapter 30

34 Chapters

21話 セレスティアの課外授業

笑っているとセレスティアが歩いてくる。その表情はどこか羨ましそうだ。「楽しそうですね。何かありましたか?」「ああ、セレス様、マリーは俺のところでは卒業です。後は自主的な修行に変えようかと」「随分と早いですね。そういえば、マリーがレルゲンと発注しに行った首飾り、完成したようなので届いていましたよ。そして……」と続けたセレスティアは、今日の講義は課外授業にしたようだ。レルゲンが心の中で握り拳を作る。修練場に案内されたレルゲンとマリーは口を大きく開けて驚いていた。本来なら木製の床が敷き詰められ、雨除けの屋根がある程度の簡素な場所だったが今日は違う。自分の背丈の五倍はあろう巨大な水晶玉に、測定する人の魔術系統がわかる特殊な白い紙が用意されている。魔術系統は全部で七つに分類される。火、水、風、雷、光、影、無無属性魔術は言ってしまえばレルゲンがよく使っている念動魔術が含まれ、六種類で分類出来ない系統の総称とされる。驚かせたことに満足したのか、微笑みながらセレスティアが続ける。「今日はここで、最大魔力量と魔術適正、魔術系統を再確認します。まず始めは最大魔力量と魔術適正になります。この水晶に手を当て魔力を注いで下さい。こんな感じで」セレスティアが意識を集中し、全身から魔力が溢れ出る。ゆらゆらと陽炎の様に周囲の空間が歪んで見えるほど、魔力濃度が高いことが分かる。セレスティアの結果は最大魔力量A、魔術適正S。魔術師としての素質はほぼ頂点と言っていいだろう。続いてマリーは最大魔力量B、魔術適正A。修行前の最大魔力量はCだったというから、大きな進歩だ。これにはセレスティアも驚いており、レルゲンに方法を教えて貰おうと必死になったのはまた別のお話。続いてレルゲンが水晶に手を触れ、アシュラ・ハガマと戦った時の事を思い出す。あの時の全魔力解放は……こうだ。ドスンと空気が一気に重くなり、水晶の管理でついてきていたギルドの女性が重さに耐えかねて座り込む。レルゲンの全身から真っ赤な魔力が、アシュラ・ハガマの時よりも濃い赤色となって溢れ出る。マリーは一度側でレルゲンの魔力解放を身に受けているためそこまでの驚きは無かったが、セレスティアはというと額から冷や汗がこぼれ落ちるほどの圧力を感じ取っていた。ピシッと水晶にヒビが入っ
last updateLast Updated : 2026-01-12
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22話 インフラ攻撃

こんな具合で王立図書館での本選びに飽きた時に、カノンの研究所に足を運び、研究を手伝っていた。カノン自体の魔力量や適正はいいとこC止まりで、潤沢に研究に使う魔力が無いのでレルゲンの魔力タンクには助かっているそうだ。(これは、俺が切り取った魔族の魔石か?)「おや、気づいたかい?調べてみるとその魔族から奪った魔石は君が前に倒した五段階目のアシュラ・ハガマの尻尾についている鉱石と構造が似ていてね。実際に魔力を込めたら光り輝く事から、少量の魔力で結構な魔力運用が見込めるのがわかったよ。あっ、そこまででストップね」魔力を込めるのを止めて、カノンに返す。ペンを雑紙に走らせながら結果を記入していく。前に見せてもらった事はあるが、セレスティアの講義よりもサッパリな内容だった。いつもはもう少しスッキリした作業机だが、今日は何やら書類が山積みだ。「今日は忙しそうだな」「あー、この山積み書類のことかい?良ければ内容確認を手伝っておくれよ。大体が体調不良を訴える国民の意見書だよ」「いいけど、意見書がどうしてここに来るんだ?」「なんでも、体調不良になっている原因を探って欲しいんだと。私は何でも屋じゃ無いんだぞー」椅子にもたれかかって不満を口にするカノン。試しに何枚か読んでみると、腹痛・嘔吐・下痢・果ては関節の痛みまで多岐に渡る。確かにこれは街の医者に頼んだ方がいい案件な気がするが……と思っていた時に一つ気になる症状があった。これは症状と言っていいのか分からないが、魔力量が急激に伸びて、性格が少し荒っぽくなった子供がいるとのこと。これは医者ではなく研究所で調べる必要があるのかもしれない。そう感じたレルゲンがカノンに件の書類を渡す。「これはうちの案件かもねぇ」なんともやる気の出ないカノンの声は本当に面倒くさそうだ。「まぁ、俺もやれる事はやるから」「頼り切って悪いねぇ、ほんと助かっているよ。うちの研究員にこの症状が出ている親御さんへ話を聞きに行かせるから、結果次第で助手君にも作業を割り振るよ」カノンから再びお呼びがかかって研究室に行くと、更に机のみならず通路にまで書類の山が積み重なっている。カノンの目には一時期改善したと思っていたクマが色濃く浮き出ている。「カノン、また寝てないのか?」「やぁ、レルゲン助手…よく
last updateLast Updated : 2026-01-12
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23話 極秘任務

ここでセレスティアの主要貴族の一人であるドットハム卿が発言を求める。「恐れながら申し上げます。王国民の体調は悪くなる一方、ここは大規模調査団を川の上流に派遣し、原因を一刻も早く除去するべきです」だが、ここで違を唱えたのはそのセレスティア本人だった。「お待ちになって下さい。ドットハム卿。このセレスティア、貴殿のお気持ちは痛いほど理解できます。しかしながら今、国が弱っている中で騎士団の大部分がここを空けてしまった場合、王国民は誰が護るのでしょうか?」「しかしそれではどうしろと…」セレスティアが女王であるダクストベリクに向きを変え、力強く意見する。「女王陛下、ここは少数精鋭で原因を除去し、王国の守護は騎士団に任せるべきだと進言致します」女王が目を閉じて考える。数秒の間、謁見の間が静まり返り、再び女王が口を開く。「セレスティア、貴女が現地に行くと言うのですね?」「はい、ここにいる騎士レルゲンと共に」ざわざわと貴族が話し込み始める。「静粛に。貴女は王位継承権第一位です。このまま行けば貴女が次期女王となるでしょう。危険を犯してまで出向く必要は本当にありますか?」ここで普段優しく、そしてよく笑う表情が多いセレスティアの表情が引き締まり、女王を強い意思の瞳で見つめる「王国民なくして国は成り立ちません。空っぽの玉座に座れたとて、本当に王国と呼べるでしょうか?私はそうは思いません。今こそ位の高い者が自らの手で救いの手を差し伸べなくてはならないのだと、私は強く思うのです」「……分かりました。貴女のその強い意思に王国民の明日を託しましょう」女王が一度窓の外をどこか遠い眼差しで見つめてから、今度はレルゲンを見る。「騎士レルゲン、貴方にもこの疫病とも呼ぶべき負の連鎖を断ち切ることを命じます。よろしいですね?」「お言葉ですが女王陛下、私はここにおりますマリー王女殿下の専属騎士にございます。このように皆様からの厚いご支援賜り今日まで努めさせて頂いておりますがマリー様のご意思無くして、マリー様のお側を離れることは出来ません。ご容赦を」「マリー、貴女はどう思われますか?」「私の側を離れての極秘任務、騎士レルゲンにお命じ下さい。私はもう、護られるだけの姫ではございません。一刻も早くこの自体を解決できるのはこのレルゲ
last updateLast Updated : 2026-01-12
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24話 魔石龍との邂逅

地図を広げ、おおよその位置を把握する。ここの地点でも水には魔石が確認できたが、そろそろ水の源流近くの山間の洞窟に入ってくる頃合いだ。「セレス様、これから先はすぐ洞窟になる。もしかしたらだが、そこで隠れて魔石を流しているかもしれない」「可能性は高いですね。魔力が戻り次第、再度隠蔽魔術をかけて進んでみましょう」魔力が戻った段階で、魔力探知を限界まで広げる。すると、あった。いや、あってしまったが正確な表現かもしれない。五段目のユニコーン亜種、アシュラ・ハガマよりも濃密な魔力。「セレス様、隠蔽魔術をお願いします。奴らがどうやって魔石を川に流しているのか知りたい」「わかりました」すぐに詠唱を始め隠蔽魔術がかかり、魔力糸で念話の準備まで整えてから岩陰に隠れて観察する。王国全土を汚染した元凶にして原因がそこに鎮座していた。六段階目にして、全身が魔石で構成されている魔石龍、サクロクス・マギクス。文字通り魔石の外殻から身体の内側の“血肉”に至るまで、魔石から構成される龍種だ。こんな王国近くの洞窟ではなく、人が立ち入れない深域に生息しているはずだが、召喚陣を上手く利用してここまで引っ張ってきているに違いない。魔族の反応も二つあり、やはり王国が魔族に狙われていたことがわかる。(魔石龍、どうしてこんなところに)セレスティアが念話越しに思わず溢す。(魔族が何らかの方法で呼び寄せたのでしょう。魔族は黒龍の剣があれば問題なく倒せるが、伏兵の存在も気になる。飛び道具なら無効化出来るが、どうしますか?)(レルゲンの魔力感知では他にはいなかったのでしょうし、早めに倒しましょう。伏兵が来る前に。では、打ち合わせ通りに)コクンと頷き黒龍の剣を鞘から引き抜く。セレスティアが高速詠唱でバフをかけ、攻撃、物理防御、速度、魔力消費軽減、精密動作性、状態異常無効化、魔力防御の支援魔法を二人分かける。ふぅ、と一気に高速でバフをかけ終わり一息つき、バフがかけ終わったと同時に魔力を消費した分を魔力糸で受け渡す。全開に戻ったセレスティアが上級攻撃魔術を詠唱し始め、レルゲンが魔族の背後から黒龍の剣で暗殺を図る。音もなく静かに接近し、隠蔽魔術によって隠された一撃が魔族を襲う。「ぎゃっ」と短い声をあげ、何が起こったか分からないまま核となる魔石を粉々に切断。一体目は静かに、そして素早
last updateLast Updated : 2026-02-07
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25話 訣別

「では、その黒い剣で我を討つが良い。我はもう長くないが、これ以上そなたらの国民を苦しませるのは忍びない。レルゲン、頼めるな」一度セレスティアを見るが、セレスティアは目から大粒の涙が溢れ出していた。少ない時間だが、「いい魔物」だったように感じるのはお互いの共通認識のようだ。何とかならないかとも一瞬考えたが、案が浮かばない。黒龍の剣に魔力を限界まで込めて、せめて一撃で楽になれるようにと思いながら剣を振りかぶる。剣を振り下ろす直前、何者かがレルゲンよりも早く魔石龍の首を落とした。ドスンと首から上が地面に落ち、衝撃が響く。暗闇からの一撃はレルゲンの魔力感知をすり抜け、魔石龍を切断した面は恐ろしく滑らかだった。弱っているはいえ硬い外殻で覆われている魔石龍をこうも容易に絶命させる者は、一体…カツカツと音を立ててこちらへ向かってくる足音が近づいてくる。即座に敵と判断して魔力糸をセレスティアに繋ぎ、支援魔法を要請する。「おや、思考の切り替えが早いですね」「アンタ何者だ?ここにはもう魔族はいないぞ」魔石龍にぶつけるはずだった黒龍の剣を声の主目掛けて放つ。斬撃は声の主に到達すると同時に二つに分たれ、更に後方の壁に衝突する。(魔石龍の首を落とす斬撃を、斬ったのか?!)「酷いですね、会話の途中で斬りかかるなんて」「魔石龍の首を落としたのなら、それだけで敵だ」「?それは貴方も同じ事をするつもりだったのではないですか?」「そうだ、だからこそお前は敵なんだよ」「よく分かりませんが、私の親切心があなた方を怒らせてしまったことは理解しました。ではここで戦いますか?ええ、構いませんよ。この魔物達の相手ができるならですが」空中に魔法陣が浮かび上がり、そこから巨大な魔物が三体出現する。これ程までの魔術行使、魔力消費は凄まじいものだろう。しかし、遠目で薄暗い中、自然魔力の揺らぎしか確認出来ないとはいえ、全くと言っていいほど変化がない。言うなれば中庭で初めてセレスティアと出会った時の感覚に近い。(間違いなく高位の魔術師だな)たがここで一つ疑問が残る。先程打った黒龍の剣の一撃をどうやって“両断した”のか。純粋な魔術師では決して防げるほど生易しい一撃ではない。(奴はどうやってさっきの一撃を防いだ?)まだ魔物達は動かない。召喚主の指示を待っており、完璧な調教
last updateLast Updated : 2026-02-07
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26話 二つの誓い

「最後の手術は見事でした。やはり貴方は見ていて飽きない。もっと成長した姿を私に見せて下さい。それとその魔法陣ですが、転移先は転移後の王都の中心に座標が設定されていますのでご安心を。それではまた近いうちにお会いしましょう。シュット君、いえ、レルゲン・シュトーゲン」強烈な上昇によりかかる重力に耐えながらも、セレスティアを抱き抱える。この転移魔法陣が奴の言っている通りだろうが、そうで無かろうが、この手を決して離さず強く抱きしめる。魔法陣に吸い込まれる。視界が明滅しあまりの眩しさに目を閉じ、再び開けると空の色こそ違うがそこは王都の噴水近くに転移していた。「ここは、本当に王都か」意識を失っているセレスティアを抱きかかえて王宮まで念動魔術で飛んでいく。かつての師がマリーやセレスティアを狙った真の黒幕だったことのやるせなさと縫合したセレスティアの傷跡と力のない表情、己の無力感が全身を包むが、それよりも早くセレスティアをベッドに寝かせてやりたい気持ちが強かった。全魔力解放を短時間とはいえ行使したからか、ふらふらとした空中起動で、出発地点だった屋上庭園に降り立つ。するとセレスティアが意識を取り戻したのか、レルゲンの頬を優しく撫でてこう告げる。「結局助けて下さったのですね。貴方に最上の感謝を」「大切な人を護る事が、騎士の本懐ですから」「ふふふ、お上手」掠れかけた声でセレスティアが感謝の言葉をかける。屋上庭園から辺りを見回すと、そこには地平線の彼方まで山や木々が鬱蒼と生い茂り、隔離された世界となっていた。屋上庭園を降りて、女王の場所まで歩いていく。セレスティアも満身創痍だが、レルゲンも消耗が激しい。もう念動魔術の発動すら危ういだろう。だが、気力のみで廊下を歩いていく。普段から歩いているはずの王宮の廊下がやけに長く感じるが、歩みは止めない。女王の私室の前に到着するが警備が全くと言っていいほどいない。ここには誰もいないのだろうか。「影さん、いるかい?」「はい、こちらに」女王直属の影部隊は機能しているようだ。少しホッとする。「女王陛下はこの中にいらっしゃるか?」「現在公務のため不在になります。女王陛下へのご報告がございましたら、私めに」「分かった、これからいうことを一言一句、伝えてくれ」伝えられた影の目が驚きのあまり丸くなったが、すぐに諌
last updateLast Updated : 2026-02-07
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27話 水神伝説

地下の水道網が転移前の場所に置き去りになっていることから、外の店は軒並み臨時閉店。街の人々にとってはまさに死活問題だろう。明日から単独任務を与えられてはいるが、早くに国民に新鮮な水を届けなければ、衰弱していってしまう。こうして何か手掛かりがないか魔術研究所によった訳だが、カノンにも久しぶりにあった気がする。「やぁ助手君!今回の任務もよくやったねぇ偉いぞぉ!」ゴシゴシとレルゲンの頭を撫でてくるカノン。初対面こそよそよそしかったが、いざ仲良くなってくると歳はあまり変わらないがセレスティアとはまた違った安心感がある。「カノン様、やめて下さい」「おや、失礼。それで?任務から帰ってきたばかりの助手君は私に何をお望みだい?」「ここは深域のど真ん中です。水源を探しているのですが、何か手掛かりがあればと思いまして」「そうだねぇ、研究者としては水源の濾過をどうするかが気になるね。水源は空を飛べる君なら問題ないだろう。その次を考えるとなると、安定した水源確保の為の工事とその濾過方法なら幾つか心当たりがあるよ」「さすがカノン様。俺は水源とその道を作ればいいわけだ」「その通りだね。もう一つ方法が無いこともないが、こっちは不確定要素が多いから水源を見つけてからでいいだろう。一応聞いておくかい?」「お願いします」「わかった。まず水神伝説って聞いたことあるかい?」「いえ、聞いたことありません」「簡単に言うと、深域近くに建国した領主が、深域を縄張りにしていた水龍の怒りを招いて折角作った国が洪水に晒されるって話だよ。水龍以外にも神域には縄張りにしている龍種が実際にいる。いないことも珍しくないけどね。ほら、今の私たちと状況が似ているだろう?」「なるほど、心に留めておきます。流石所長」「そうだろう?へへん、私はなんてったって第二王女だからね!凄いのサ」鼻を上に向けてまるでどこかの童話に出てくるような反り方をする。「大変参考になりました。ありがとうございました」「また私の知恵が必要になったらいつでも頼ってくれたまえ、私は大体起きているからね」「そこはしっかり寝て下さい。では、失礼します」「明日からの任務、頑張れよぅ」一礼して研究所を後にする。深域だからか地脈からの魔力供給が王都と比べても比較にならない程効率がいいのは嬉しい誤算だった。しかし、それだ
last updateLast Updated : 2026-02-07
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28話 自動人形と作戦会議

女王は水神伝説のことを知っており、大変驚いていたが、素材と浄化水晶を見せると「これがあの水神様の…」と一言だけ漏らし「これで街までどう引くか、検討してみてください」と更に念押しされる。女王自体は特に何か手段を持っている様子ではなく、こうなればまた魔術研究所に知恵を借りに行こうと再び向かう。「カノン様、すみませんがまた知恵をお借りにきました」「やぁ助手君、水源確保の調子はどうだい?」「水龍と戦って、水源を頂く約束はしたのですが、どう引いたものかと思いまして。ここから数キロ離れた場所なのでそこまでは遠くありませんよ」「まさか本当に水龍がいるとは…ははは、流石深域。で、確保した水源をどうやって届けるかだよね。無難に行くなら川を引く工事をする事だけど、時間がかかり過ぎるからあまり得策ではないね」お互いに数秒の沈黙。自分が今までに見た魔術で、別のところから持ってくるものと言えば念動魔術で荷物を運ぶ、召喚魔術で魔物が現れた…り?そこでレルゲンが閃く「カノン様、召喚魔術って使えないですかね?」「召喚魔術か、でもあれは術師が専用の入り口と出口を設定する事で発動する魔術だから、街の全土を賄うには術師が足りないかな」「なら、召喚の魔法陣だけ刻印する形で各家庭に普及するまでの間、彫り師を使って実現出来ないでしょうか?」「なるほど、彫り師か、刻印する事で消す、修理も用意だし、蛇口を回す要領で欲しい時だけ魔法陣として成立させれば無駄な水を使わなくても済むね。うーむなるほど!距離が予想より近い事も魔法陣の簡略化に繋がりそうだ。何とかなる気がしてきたぞぉ!!」「では魔法陣の作成と普及方法についてはお任せしてもいいでしょうか?俺はまた水龍のところに行って地下に魔法陣を設置しても良いか交渉してきます」「うむ!内政についてはこの私に任せてくれたまえ!」君は水龍との交渉がうまく行ったらお母様に報告頼むよ」「わかりました、では早速行ってきます」念動魔術で再び水龍の元へと向かう。それを見たカノンは「空飛べるって便利だよねぇ」と言いながらコーヒーを啜るのだった。水龍との交渉がうまくいき、女王にカノンとのやり取りを報告すると、大変喜んでいた。「後は下水などの排水方法ですが、これはこちらで何とか致します。騎士レルゲン、迅速な任務達成。誠に大義でした」「いえ
last updateLast Updated : 2026-02-07
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29話 決戦前

五段階目の討伐で自信をつけたマリー達は少しの休憩の後、五段階目一体、六段階目も一体討伐して帰還して来たのだった。六段階目は魔力量と大きさ、一撃の破壊力は大きいがセレスティアは標的にならない程前衛二人の働き凄まじくアシュラ・ハガマに似た形状の魔物を討ち取ったのだった。王国に帰還してからというもの、レルゲンにこの事を報告に行った三人は気力、魔力が尽きかける限界近くまで消耗はしていたがそれでもやり遂げたのを見て、レルゲンはただ一言「お疲れ様」と労った。それから発注した武器が完成するまでは、レルゲンは三人の連携を崩さないように立ち回り援護に徹することが多く、念動魔術による牽制くらいしか必要としない力量まで実力が底上げされていた。この成長ぶりにはマリー達自身も驚いており、レルゲンも背中を預けられると安心していた。武器が出来たとドライドから連絡が入り、早速届いた剣を試し斬りするべく、鍛冶屋の裏に周る。「この前の黒龍の剣とは違って、どっちかっていうとマリー嬢ちゃんの魔剣に近いな。要望通り作りはしたが、どんな目的があってそんな仕様にしたんだ?」掻い摘んでドライドに話す。「それをしたところでなぜそうなるんだ?」と返って来たので、説明が難しいと言って逃げる。試し斬りだけして切れ味を確かめ、要望通りの品質を確認してドライドに感謝を伝えた後に持ち帰るのだった。実は新しい武器はレルゲンが幼少期に体験したある出来事が元になっている。まだ魔法すら使ったことのない年齢のレルゲンが、火炎魔法を発現させたと大騒ぎになった事があった。結果的には魔法の痕跡は無く、原因が分からないまま終わったが、それを見た両親がナイトを家庭教師としてつけて魔術を教えることとなるのだが、レルゲンは今でも鮮明に覚えている。“この世は魔で満ちている”魔術適正が無くても、魔法くらいなら誰でも出来るのだという確信がレルゲンを形作った。その手段を魔術で応用することによって、真の魔術として昇華させる。まさに十八番ともいえるレルゲン独自の技の基礎だ。準備は整った。敵の本陣とも言える座標に徒歩で向かう。相変わらず魔力揮発剤が常時巻かれており、魔物が寄り付かない道がこの深い森の中に出来ている。森を抜け、木々が不自然に生えていない場所に出ると陽の光が入り込み、暖かな日差しが差し込んでくる。芝の上
last updateLast Updated : 2026-02-07
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30話 自動人形との戦い

建物の入り口を潜ると自動で閉まっていく。一度入れば最後、どちらかが全滅するまでこの扉は決して開かないだろう。もう緊張も迷いもない。皆がただ勝利を信じてここへ立つ。中へ入ると軍服を着た少女が二人。奥にはナイトも見える。軍服の少女達とナイトを一度に相手取るように見えたがナイトが下がり、玉座とも取れる椅子に腰掛ける。「アンタは高みの見物か」レルゲンがナイトを煽ると、ナイトがにやっと口角を上げて答える。「その娘達は私の“最高傑作”です。私をここまで待たせたのですから、じっくり味わいたいではありませんか。それと油断していると幾らシュット君でも、死にますよ?」「俺の「挨拶」に耐えたんだ。そんなつもりはないさ」帯同させる剣の中には、ドライドが丹精込めて鍛え上げた剣もある。刀身は白銀で細く、細剣に近い形状を取る。鍔部分はアシュラ・ハガマの増幅鉱石があしらわれており、他にも王国から直接貸与された名剣とも呼べる切れ味を誇る鉄剣が五本。黒龍の剣も入れれば計七本の剣を扱うこととなる。マリーとセレスティアの装備は変わらず、ハクロウのみ魔物討伐の時から日本刀のような形状の刀を二本、始めから抜刀している。レルゲン達に対する軍服の二人組は、片方が短剣を両手に一本ずつ持ち、もう片方は片手直剣を持っている。レルゲンの挨拶の時は両者共何も持っていなかったが、最初から武器を手にしている事から、挨拶時は始めから「どちらも本気ではなかった」のだ。レルゲンの額から汗が流れ、地面へと落ちる。「いくぞ!!」両陣営共駆け出す。前衛はマリーとハクロウ、レルゲンは遊撃として一歩下がり、セレスティアは小声で攻撃魔術の詠唱を始める。最初は様子見とばかりにお互い魔術の追加攻撃はせずに前衛同士の鍔迫り合いが繰り広げられる。レルゲンも鉄剣を一本ずつ相手の横腹に射出するが、あっさりと短剣使いは弾き、片手直剣の方は素手で弾く。射出速度と剣の切れ味から考えても無傷で防げるとは考えづらい一撃だが、ここでレルゲンが挨拶をした時に放った赤い光線を両者とも素手で受け止めていたことと重なる。(やはり身体の構造的に何かあるな)ちらっとナイトの方を見るが依然として動かず、表情も変えず、戦いを楽しむように観戦している。レルゲン剣を弾いた直後に両者とも鍔迫り合いを止め、剣戟が室内に響く。マリーとハクロ
last updateLast Updated : 2026-02-07
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