《偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します》全部章節:第 701 章 - 第 710 章

728 章節

第701話

一花がホテルに戻った時、ちょうど敬子が美穂にテレビ電話をかけてきた。修治が体調を崩してベッドで休んでいて、美穂の表情も良くなかった。彼女は電話はとらず、メッセージで会話をしようと思っていた。そこへ一花が自分で携帯をとり、端のほうへ行って電話に出た。「敬子さん、何日も会っていないから、私に会いたくなりました?」テレビ電話が繋がると、一花はすぐに可愛らしい笑顔を見せた。少し前に見せていた悲しみなど、そこには微塵もなかった。敬子と和彦が一緒に画面に現れた。二人は一花の顔を見て、不安がスッと消えた。「もちろん、一花さんに会いたくてたまらないよ!いつになった帰ってくるの?」美穂が慌ててM国に行く時、二人にはただ西園寺幸雄と伊集院家に小さな誤解が生じているとだけしか伝えていなかった。修治が過去に起こしたトラブルなら、二人もよく知っている。美穂は二人には自分が解決してくるから心配するなと伝えていた。しかし、M国に行ってから、もう何日も連絡をしていなかったのだ。そして今一花が入院していると聞き、また何か問題が起り、修治まで赴いたものだから、二人はとても心配していた。二人が心配して焦るのではないかと思い、美穂はいつも悪い知らせを伝えることはなかった。ただ、二人は全てを知らされていないのが分かり、夜もよく寝られない日が続いている。一花は優しく微笑み、何もおかしなところを感じさせなかった。「あと少しかかると思います。今ちょっとまだやる事がありますから」「やる事?それはどんな事なの?」その話を聞いて、電話の向こうの敬子は少し緊張した表情に変わった。これには和彦も重たい表情に変えた。「柊馬の奴はどうしたんだ。どうして妻もしっかり面倒見られないんだ」本来一花は笑顔を保っていたが、和彦が突然言った言葉がナイフのように鋭く、彼女の心に刺さった。その瞬間、一花は瞳に涙を浮かべ、それがポタリと頬を伝って微笑んだ口元に流れ落ちた。「そんな、柊馬は……私のことをちゃんと見てくれていますよ」一花は自分が涙を流してしまったことに気づき、さらに無理をして笑顔を作った。「おや、一花さん、どうして泣くんだ?」和彦は眉をひそめて、画面に近づいた。敬子もすぐに画面に近寄ってきた。「一花さん、一体何があったの?おばあち
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第702話

「あの二人はこの状況じゃ生きてないだろ?」一人が車体に寄りかかり、タバコに火をつけた。そして他にいる二人は懐中電灯を持ってあたりを照らしながら、それに同意した。「生きてないだろう。だが、ボスが必ず死体を見つけろってよ」彼らはどうしようもなかった。明け方にバスが爆発し、彼らの仲間の六人の命を奪ったというのに、まだ犠牲が足りないのか?あの時、爆破装置はすでにカウントダウンを開始し、亮自ら部下とともにバスに乗り込んだのだ。バスの中には小さい頃からずっと世話をしてきた誠が乗っていたからだ。しかし、どういうわけか、数人が突然車から飛び降り、その後すぐに大爆発を起こした。その時、誠、亮、それからもう一人の男の三人だけがバスから逃げ出したが、仲間たちはバスの中から逃げ出すことができずに命を落とした。しかし、そのせいで亮が負傷し、仲間たちは死んでしまい、誠はその男を連れて慌ててどこかに逃げてしまった。亮の部下が車で崖まで追いつめ、亮があの二人を生きたまま捕まえるよう指示を出した。それで、彼らは銃で脅したのだが、あの二人は死をも恐れずにそのまま崖を飛び降りたのだ。崖の下には川があったが、こんなに浅い川だから生きているはずもない。しかし、彼らが亮が目を覚まして指示を仰いだ時に、ひどい叱責を受け、あの二人の死を確認するまで戻ってくるなと言われてしまった。しかし、このような深い森では死体を探すことすら容易ではない。「だったらさ……野犬にでも襲われて骨すら持ってかれたって伝えるとか?」「まあいいんじゃねえか?明日また別の奴らを寄越すかもしれねえし」数人で口裏合わせをし、急いで車に乗り込んで、その場から去った。車が去ってから、川の上流付近にある木の陰がカサカサと動いた。誠が柊馬の体を支えつつ木の下まで引きずっていき、川に水を汲みに行った。「伊集院さん、起きて、起きてくれ!」誠は汲んできた水で、柊馬の唇に残る血を綺麗にし、頬をパチンと叩いた。柊馬はまだ呼吸もしているし、鼓動もあるが、このように気を失ったままでは体温が下がってきてしまうだろう。「……」一日前に遡る。誠が爆破装置の解除をしている時、亮が部下を連れてやって来た。亮は銃口を誠の後頭部にあてて、苦しげにどうして裏切ったのかと詰問した。
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第703話

しかし誠が柊馬を見つけたとき、彼はすでに川辺に倒れており、体から血を流し、顔色は真っ青になっていた。誠はその光景に驚いたが、柊馬にまだ呼吸と心拍があることを確認した後で、急いで彼を連れて立ち去った。しかし二人とも体力が衰えており、ほぼ一日かけてもわずか数キロメートルしか移動できなかった。誠は、常に緊急時に使える薬を身につけている。それはさっき飛び降りた時に粉末状になってしまったものの、なくすことはなかった。このような突発的な事態に備え、しっかり体から離れないようにしていた。誠はまず、柊馬に薬を飲ませて、それから相手の傷を丁寧に確認した。柊馬の額、四肢、胸部、背、腰および腹部には多数の外傷が見られたが、幸いなことにほとんどの傷は深いものではなかった。誠は自分のベストを脱ぎ、それをいくつかに引き裂いて、布の切れ端で彼の腰の傷口をしっかりと締め付け、止血した。それからまた柊馬の骨を調べた。柊馬の足には軽傷があるようだったが、他の部位には大きな問題はなかった。誠は、柊馬が飛び降りた瞬間、意図的に木の枝を掴もうとし、そのため木から滑り落ちる過程で体の重要な部分を避けたのだと推測した。これほど高い精神力は、訓練を受けたプロよりもさらに圧倒的だ。誠は暫くの間身につけているものを探したが、二人には何ら連絡手段がなかった。ちょうどその時、亮の部下たちが再び捜索に来たため、彼は柊馬を連れてまず木の陰に隠れ、いつでも応戦する準備をしていた。そして車の音が遠くに消え去った後で、誠はようやく柊馬を必死に起こそうとしたのだ。柊馬もついに反応を見せた。彼の口元がわずかに動いて、何かを低い声で呟き始めた。誠が彼に近寄ってみて、彼が一花の名前を呼んでいることに気づいた。「ああ、奥さんはあんたの帰りを待ってるんだ。だから早く起きるんだ!」誠がすぐに柊馬の呟きに応じた。しばらくして、柊馬はようやく苦しげな表情で目を開いた。冷たい空気が肺に押し込まれると、彼は激しく咳を起こし、血が混じった唾を吐き出した。それには誠も驚いた。「伊集院さん、大丈夫か?」「大丈夫だ……」柊馬は激しく咳をして、口元を拭った。無事でなければならないのだ。すでに生死の境なら経験した。彼女との約束を破ってこのまま死ねるわけなどないだろう?
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第704話

夏海と侑李が休憩室で話している時、陸斗が突然その場に現れた。陸斗はまるであちこち嗅ぎまわっている猟犬のように、何か緊急事態が起こると必ず姿を見せる。陸斗が来たのに気づくと、夏海と侑李は会話を止めた。「おや、これはこれは勇おじさんのとこの西園寺家のお坊ちゃんじゃないか、何を話してるんだ?」陸斗の皮肉交じりの言葉に、侑李は顔を不機嫌そうに暗くさせた。夏海が何か言ってやろうと思い口を開いたところで、また陸斗が付け加えた。「あ、そっか、わりぃ、忘れてたよ。今は西園寺家の坊ちゃんなんて呼べないよな。だって、侑李君はもう西園寺家の人間じゃないんだし」「ちょっと、副社長、それってあんまりじゃないんですか?」侑李は陸斗と言い争う気などなかったが、夏海が陸斗の言葉を聞いて、侑李よりも腹を立てた。陸斗は冷たく鼻で笑った。「須藤さん、俺は今侑李君と話してるんだよ。なんでお前のほうが怒ってるんだ?彼はすでに二階堂さんと結婚してるんだぞ。まさか、こいつに片思いしてるとか?」「このク……副社長、勝手な事を言わないでくれませんか。私はただ、あなたが誰かに皮肉を言う筋合いはないと思っただけです」夏海は唾を飲み込み、陸斗を見つめる瞳には怒りの炎が燃えている。夏海が毎回陸斗に我慢しようとするたびに、この男はどうにかして更に嫌悪感を抱かせてくれる。陸斗は唇をキュッと閉じ、不機嫌そうな表情を見せた。陸斗は遠くから侑李と夏海が話しているのを見て、思わず怒りが湧いてきたのだ。夏海が侑李を見つめる目は、まるで彼が何かのヒーローや救世主であるかのようだ。一方、陸斗を見つめるときには、まるで彼が意図的に悪行を企む悪魔のような人間を見ているかのようだ。だが、この何をするのもパーフェクトな侑李のようなお坊ちゃんと、自分はどこが違っている?奴の優雅な気品など外付けされたようなものだろう。数日で一般庶民に成り下がって数日もかからず、その優雅さがなくなるだろう。このような野郎が自分の目の前で何を偉そうに、空っぽなくせに。「須藤さん、僕はこれで失礼します。何か連絡があればすぐに教えてくださいね」侑李は小声で夏海にそう伝えると、背を向けて去っていった。陸斗のほうには一切一目も向けることはなかった。まるで陸斗は彼の前ではただの空気であるかのよう
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第705話

陸斗はまったく夏海の言葉など聞こえていないらしく、自分勝手に彼女の耳元で囁いた。彼はもう夏海には我慢の限界だった。夏海が一体何をしようと思っていてもどうでもいい。自分を誘うような真似をしてきても、嫌われても構わない。陸斗は今夏海をどうしても手に入れたかった。その気持ちが強くなるほどに狂いそうだ。「それはそれは光栄ですね。でも、あなたはそんなことよりも、母親に任されたことをどうやって報告した方がいいか、しっかりお考えになった方がいいのでは?それに、一花さんのこともね!」「一花君?彼女がこっちに帰って来られるかはおいといて、俺が彼女に何かを報告する義理はないな」陸斗は焦って口を滑らせた。夏海はその言葉に驚いた。「それはどういう意味ですか?」陸斗が数秒ほど呆然とした隙に、夏海は彼を押しのけた。「副社長、さっきのはどういう意味です?一花さんがどうしたんですか?何かあったんですか?」夏海はその言葉に焦りだし、陸斗のほうは長いため息をついた。彼は傍にあるソファに腰かけ、落ち着いて彼女を見つめた。「そんなこと俺に聞いてどうするんだ。俺とお前は別に何の関係もあるわけじゃないんだ。どうして俺が答えてやる必要がある?」「あんた……」夏海は陸斗がわざとこうやって自分の弱点をついて言うことを聞かせよとするとわかっていた。彼も実際何かを知っているとは限らない。今はただわざと脅すためにこうやっているのかもしれない。「副社長、この前私があなたに言った事、考えてくれましたか?今、どうするか決める最後のチャンスですよ」夏海のこの頭の回転の早さには陸斗も不意を突かれた。本来彼のほうが夏海に選択させるつもりが、今立場が逆転しようとしている。陸斗は笑った。実は、夏南が前回彼に伝えたことを、彼は実際に考えてみた。彼と一花の間には確執のようなものがあるわけでもない、別に二人が相手を追いつめるほどに争う必要はない。和香に認めてもらえないのであれば、彼は一花と共に西園寺グループを発展させることに尽力することだってできる。しかし……和香には彼を育ててくれたという恩があるのだ。和香を裏切るような真似を、彼はどうしてもできなかった。しかも、彼はM国の状況についても把握しており、和香はまもなく一花に西園寺家の権
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第706話

茉白は耳まで真っ赤にさせた。同僚たちが何を噂しているのか聞くまでもなく分かる。各大手メディアは、西園寺勇が西園寺侑李が勝手に結婚したことで、親子関係を絶縁させることにし、息子を西園寺家から除名されたと一斉にニュースを流した。このようなゴシップニュースが流れても、勇の手にかかればすぐにそれを消すことができる。しかし、このように大っぴらになってしまったのは、つまり勇にその意思があったということだ。メディアは茉白の身分ですらも、世間に隠すことなく書いていた。彼女の本名は非公開にされているが、南関市の某大手玩具メーカーの養女だと書かれているから、つまり直接茉白を指しているのは誰が見ても明らかだ。しかも、誰かが侑李がレストランで茉白の手を引いていく様子の写真を撮っていた。茉白の横顔はそこにはっきりと写っている。さらに、メディアによってはさらに閲覧数を増やすために、どこからか茉白の「黒歴史」を暴き出し、彼女はビジネス界の問題児であり、小さい頃から反抗的で、二階堂家はそんな養女を教育しきれなかったとまで書いていた。しかも、茉白の昔の恋愛事情まで赤裸々に書かれてしまい、世論は侑李が可哀想だという方向に流れている。業界内ではかなり評判が良かった御曹司が、クズ女に夢中になり地に落ちたと惜しんだ。この二人は本当にお似合いではない。恋愛は身分など関係なく自由だと謳うネット民たちも、次々にこの二人は家柄が釣り合わないと騒いだ。それで世間の多くが、勇が侑李との親子関係を断ったというのには十分な理解を示していた。娘がクズ男のもとに嫁いだら、家族が巻き添えになるが、息子が同じくクズ女と結婚した場合も同じ道理だろう?侑李は世間ではこのように言われていると、とっくに心の準備をしておいた。だから侑李は以前持っていたSNSのアカウントの内容を全て消してしまい、ただ【僕も彼女も気にしてない。事情を知らない人が勝手に評価するべきではないことです。みなさん、冷静になって衝動で変な噂を立てないでください】などと書かれた内容だけを残していた。それにより、今回への自分の回答と態度を表し、精一杯妻である茉白を守ろうとした。その後、侑李は茉白の携帯にあるニュースアプリなど全て消させた。彼女に世間の評価や、意見などに耳を傾けるなと伝えた。彼らの前に
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第707話

侑李は西園寺家という強い手札も失い、仕事もなく、既婚者だ。たとえ侑李が穏やかで気品がある人間だったとしても、見るからに落ちぶれている。今の侑李の姿を目撃した人が言うには、彼はスーツに革靴姿ではあるが、以前つけていた高級時計はなく、外出時の高級車もない。どうやら父親の勇は本気で息子にひどい制裁を加えたらしい。今回、侑李が得意先で手こずったのも、勇の手が回っていたからだろう。今回ばかりは侑李もお手上げだろうとみんなは思った。そして数カ月も経たずに彼は音を上げて、二階堂茉白と離婚するとみんなが予想した。茉白はネットに上がっている情報を見た後、ズキズキと心が刺されるように痛んだ。侑李は昨日、友人を探して起業する方向もあたってみると言い、とても遅くに帰ってきた。茉白は彼を心配して待っていた。もう外で食事を済ませてきているだろうと思っていたら、彼は帰ってとてもお腹を空かせていたので、彼女に作ってもらい、一気にそれを平らげていた。しかし、彼は嬉しそうに彼女に対して、すでに仕事を見つけたから心配するなと言っていた。それに、これからはできるだけ節約して、お金を稼いだら家や車を買ってあげると約束した。彼女はその時他のことなど一切考えずに、とても幸せに感じていた。しかし今見てみると、彼が全てを負担してくれていることに、茉白は泣きそうになるほど心が締め付けられた。エレベーターが、とある階に着くと、茉白の隣にいた人が先に降りていった。そして最後にしっかりと彼女をちらりと一瞥していった。茉白は今回はそれほど辛くなかった。侑李のことを思うと、自分のことで悲しむなど必要ないと感じられたからだ。そしてすぐに、彼女は侑李が言った店に到着した。それは路地に入った先にある小さな店で、会社からはそう遠くないのだが、彼女は探すのに苦労した。彼女は普段から食費にお金をかけていないが、こんなに小さな店に来ることはあまりなかった。二階堂家は彼女にケチだが、家の体面を保つために、ある程度ギリギリのラインは保証していたのだ。そして二階堂家を去った今、彼女は経済的に厳しくなっている。それでも西園寺グループの給料はなかなかだし、福利厚生もしっかりしているので、生活費は問題ない。しかし、侑李のほうは……どれくらい持っているのか分からな
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第708話

侑李は気楽になんともないといった様子で話した。西園寺家の一切を失い、彼は今ただの一般人と変わりなくなったが、それでも束縛から解放され、気分はこの上なく良かった。すると茉白も心から熱い眼差しで彼を見つめた。しかし、彼女はとても複雑な気持ちだったし、やはり心が苦しかった。「だったら今日はどうして私を食事に誘う暇があったの?」茉白は少し考えてからまた尋ねた。「何か用があった?」「それも君には気づかれちゃうんだな」侑李は笑い、茉白に手を引かれるのに合わせ彼女のいる前方へ体を寄せた。「今日こっちまで来たのは茉白に会う目的じゃなくて、一花さんのことについて聞きたかったからだよ」「一花さん……彼女に何かあったの?」一花の話になり、茉白はとても心配になった。一花は少し前に、侑李に何かの調査を依頼していたはずだ。彼女は今M国で問題は発生してないだろうか?今では侑李は茉白と結婚し、彼女のことを信頼しているので、何も隠す気はなかった。それで茉白に、一花がM国の幸雄に会いにいってからあまり状況が良くないことを伝えた。幸雄はあの夫婦を離婚させようとしている。一花と柊馬はまたきっと何かの罠にはまっているだろう。そのような企みの首謀者は誰か、侑李が名前を出さずとも、茉白にもよくわかった。彼女はテーブルとバンッと叩いた。「あの西園寺和香とかいう人ね、まだ懲りてないわけ?なんでここまで卑劣なの。あの人が正当な後継者である一花さんと比べられる?裏でひどいことを企むなんて!」「その通りだよ。あの人は本当に恐ろしい人だ」侑李は頷いた。彼がこの日の朝夏海を探しに行った時、一花からの連絡はずっと来ていなかった。そしてさっき茉白を待っている間に、やっと一花から連絡が来た。電話越しに聞こえてくる一花の声はかなり衰弱しているようだった。そして侑李も向こうで一体何が起きているのかを知った。和香が極悪人を使い一花を陥れようと企んだ。その企みの中で柊馬は一花を救うため今行方不明となっており、生死すら分かっていない……それを聞いて、侑李は心に言いようのない怒りと苦しみを覚えた。しかし、彼はまず先に一花に聞かれていた情報を伝えた。そして一花に元気を出すように励ました。もし一花がここで倒れてしまえば、柊馬の犠牲は無駄になって
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第709話

「一花さんの父親は大バカ者よ!だからあんな毒蛇女なんかに騙されたんだわ!」茉白は侑李がでたらめを言っていると思い、聞こうとしなかった。こんな状況になってまで、まだ西園寺和香を庇う気か?何と言っても、西園寺和香を絶対に許すべき存在ではない!もし伊集院社長に何かあれば、あの女を地獄に突き落としてやる!と茉白は思った。一花でなくとも、彼女ですらあの女を殺してやりたいと思っていた。伊集院社長はとても良い人なのに……ただ西園寺グループの覇権争いのために、他人の命まで危険に晒すとはどういう事だ?どうしてこれほど人間性を失うことができるのか!「分かった、分かったから落ち着いて。僕の言葉が悪かったよ、あの人は叩き落としてやらないと!」侑李は本来説明しようと思っていたが、茉白が本気で怒りを爆発させているのを見て、さっき彼女を怒らせる言葉を吐いた自分の口をパシンと叩いた。そんなことをする彼を見て、茉白は慌てて彼の隣に来ると、腕を掴んだ。「ちょっとなにやってんのよ!間違った事を言ったからって自分で自分を叩いてどうするの。痛くなったらどうする気よ……」茉白は大きな瞳をぱちぱちと瞬かせ、腕を掴むだけでなく、彼の顔を自分のほうに向かせて口元から耳のほうへと優しく撫でた。この彼女の行動に侑李はドキッとして、思わず喉を鳴らした。さっきまで彼は、ここに漂う料理の香りに思わず食欲がわいていた。しかし、茉白を見た瞬間、食欲だけでは解決できない別の欲が湧き上がっていたことに気づいた。彼は唇をキュッと閉じ、顔を傾けて茉白にぐっと近寄った。茉白もその瞬間、唇を閉じた。侑李はそっと彼女の鼻先にキスをすると、彼女の緊張が解けたのを感じ取り、今度は唇にキスを落とした。彼女の肌、そして彼女の香り、それに加えて柔らかい唇の虜になってしまった。今二人は人が多く集まる店の中にいるというのに、侑李はもう我慢できなくなり、さっきよりももっと深く何度も唇を重ねた。しかも舌まで彼女の唇から侵入させて、奥の方へ彼女の舌と絡ませた。侑李は普段、教養があり、まだ少し青っぽいところがあるが、こちらのテクニックに関しては彼女も驚かされるほどだった。優しさの中にワイルドさを兼ね備え、心地よくさせ性欲をかき立てる。ベッドの上でのそのテクは言うまでもなく、
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第710話

茉白は侑李を見つめた。「なんだかあのクソ真面目な感じがなくなって、饒舌になったし、へらへらしてる時があるというか」侑李はそう言われて真面目に聞いた。「茉白は好き?」「……」彼女は何も言わずにご飯を口に運んだ。すると侑李がまた口を開いた。「実際、前の僕も別に真面目過ぎるわけじゃなかったんだ。別に面白いことがあるわけでもないのに、周りに冗談を言っておちゃらける必要もないだろう。でも、今は違う。今は好きな人がいて、両想いなんだよ。だからどんな話だってしたいし、どんな事だって彼女と一緒にやりたいよ」「……」茉白は食事をしながら笑顔に変わっていった。彼女は顔を俯いたが、侑李は彼女が嬉しくてニヤニヤしているのが見えた。「僕の話を聞いてるのがそんなに嬉しい?」侑李は茉白が黙々とご飯ばかり食べているのを見て、急いで彼女にからあげを取って皿にのせ、顔を近づけて小声で言った。「僕と結婚してみて、なかなか良かったでしょ?」茉白はその言葉に一瞬動きを止め、からあげを一気に口の中に運び、しばらくもぐもぐと食べていてから顔をあげて彼と目を合わせた。やはり思わずにやけてしまう。それからまた暫くして彼女はやっと頷き「うん」と一言答えて、からあげを飲み込んだ。「まあ……なかなかいいかな」そう言い終わると、茉白も侑李の取り皿におかずを分けてあげた。「お腹空いてないの?ずっとこんなふうに私を見てばかりじゃなくて、早く食べて」侑李はにっこりと笑い、おとなしく箸を動かし始めた。二人が食べ終わると、侑李が会計に行こうとしたところを茉白が引き留めた。「もう払ってあるから」侑李は驚いた。「なんで、僕が払うつもりだったのに」「あなたったら、今でも西園寺家のお坊ちゃんのつもり?今お金はないでしょ。私よりも持ってる?」茉白にそう質問されて、侑李は少し気まずそうにしていた。今の彼には頑張っても十万円あるくらいだ。彼は普段から現金を財布に入れていつでも誰かにチップとして渡せるように持っていたからだ。「僕がいくら持ってるかはどうだっていいんだ。ご飯代を出すくらいなら問題ないんだから」「私たち結婚したのよ。あなたのお金は私のお金であるし、その逆もでしょ?なんでそんな私に気を使ってるの?」茉白はそう言い
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