「あ、あなた……なぜここに?」「琳果様に付いてきたんです。それより副主任、なぜバーにいらっしゃらなかったんですか?副主任がいれば、こんな騒ぎにはならなかったと思いますが」茜は、絵美里の首元へさりげなく視線を滑らせた。絵美里が駆け込んできた時、てっきりベッドにいるのが茜だと思い込んでいたのだろう。大きく開いたドレスの衿元から、くっきりとした赤い痕が覗いていた。今夜のパーティーの責任者という立場でありながら、途中で場を抜け出して何をしていたか――大人なら誰でも分かる。絵美里は挙動不審な様子で諒助の背に隠れるように近づきながら、逆に問い返した。「で、あなたさっきまでどこにいたの?」「バーが暑くて、少し酔い覚ましに外の空気を吸っていました。諒助さんと副主任が場にいらっしゃるなら、何も問題はないと思っておりましたので」茜は真っ直ぐに二人を見据えた。諒助の端整な顔が、険しく歪んだ。しかし茜に向けるその目は、怒りというよりも、愕然とした色を帯びていた。電話をかけたのに、なぜ来なかった?一方、絵美里はもはや言い逃れができない状況に追い込まれていた。矛先を千代に向ける以外に、逃げ道はない。「こいつ、以前から平野様のことを褒めていたし、きっと変な気を起こしたのね」そう言いながら、諒助の腕をそっと引いた。諒助にはもう、全ての構図が分かっていた。それでも彼は、絵美里をかばう道を選んだ。「桜井千代が平野さんに近づいたのは個人の身勝手な行動だ。ウォーカーヒルとも、絵美里とも関係ない」その言葉を聞いても、茜は驚かなかった。どのみち、茜の目的はすでに達している。「私は関係ない!」千代が激しく声を上げ、憎悪の目を絵美里へ向けた。だが諒助は、千代に弁明の機会すら与えなかった。苛立たしげに手を振ってスタッフに命じる。「連れて行け」千代が暴れながら抵抗したが、無駄だった。茜は少し首を傾げ、静かに口を開いた。「諒助さんと副主任は、なぜ桜井さんが平野様を誘惑したと断定されたのでしょうか?」「他にどんな魂胆がある?女が男の部屋にやって来て、何を期待されると思う?たとえ本人にその気がなかったとしても、そういう行動を取った結果は自分で引き受けるべきだ」諒助は冷たく吐き捨てた。「それでは、なぜウォーカーヒルの客室スタッフの大半
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