「そういえば、バーテンダーが愚痴をこぼしてたんだけどね。和人がわざわざ、自腹で高級な洋酒を大量に取り寄せたんだって。こんなに手間のかかるパーティー、今まで見たことないかも。うちのホテルだって、どんなお酒でも揃ってるじゃない?」星羅が腑に落ちない様子で首をかしげる。茜はしばらく考え込んでから、声を落とした。「星羅ちゃん。バーテンダーに連絡して、『客室部で二日酔い対策の薬を準備したいから、届いたお酒の度数と銘柄を事前に確認させてほしい』って伝えて。できれば、ボトルのラベルを全部写真で送ってもらえるか聞いてみて」さすが親友だ。星羅はすぐに茜の意図を汲み取った。「分かった。すぐ手配する」電話を終えてオフィスへ戻ると、茜はわざとらしく憮然とした表情を作った。「桜井さん、風花にお客様が待ってるって言ったじゃない。誰もいなかったんだけど?」千代は待ってましたとばかりに満面の笑みを浮かべ、わずかに得意げな色を浮かべた。「あら、申し訳ありません、西園寺チーフ。お客様が急用で来られなくなって、そのことをお伝えするのをすっかり失念しておりました」「…………は!?」茜は悔しそうに唇を噛んだが、一言も言い返さずに席へ戻り、スマホを無言で見つめ続けた。その屈辱的な様子を見て、千代は腹の底で嘲笑っていた。ざまあみない。チーフ風吹かせて偉そうにしてるからよ。それにさっき、湖沿いの遊歩道で偶然を装って諒助に声をかけることにも成功した。彼が最初に口にしたのは茜のことだったが、それでも自分の名前を覚えていてくれたのだ。このまま押し切れば、そのうち必ず振り向かせられるはずだ。しかし、千代は知らない。諒助がウォーカーヒルに滞在する際、必ず湖沿いの遊歩道でランニングをする習慣があることを、茜はとっくの昔から知っていた。交際していた頃、何度も待ち伏せして「偶然の出会い」を楽しんだことがあるのだから。今回も茜はタイミングを見計らって、千代をあそこへ向かわせたのだ。思惑通り、千代の裏アカウントが嬉々として更新されていた。コメント欄には取り巻きたちからの祝福の言葉が溢れ、千代は口元が緩みっぱなしだった。だが、茜の目に映ったのは、浮かれる千代の背後で、目を細める絵美里の険しい表情だった。女の直感は恐ろしい、まさにその通りだ。絵美里はすでに千
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