2階にある佳奈の部屋は、元のままだった。佳奈がいなくなってからも、仁は毎日部屋を掃除させて、彼女の帰りを待ち続けていた。部屋は真っ暗で、明かりはついていない。仁は呆然としたままドアを開けると、思いっきり息を吸いこんだ。まだ残っているかもしれない、佳奈の香りを求めて。すると突然、背後からまわってきた誰かの手が、そっと彼の胸に触れた。仁の心臓がどきんと跳ねる。喜びが一気にこみ上げてきた。「佳奈か?」声が震える。背後から相手を強く抱きしめた。まるで自分の体の一部にしてしまうかのように。「やっぱり、生きてたんだな!佳奈、俺が悪かった。本当に……」しかし次の瞬間、彼は言葉をぴたりと止めた。違う。佳奈はここ数年、ひどく痩せてしまっていた。だから、片腕でも十分に抱きしめられる。しかし、腕の中にいるこの人物は肉付きが良くて、佳奈とは感触が全然違う。「誰だ?」相手を突き放し、鋭い声で問いかけながら、部屋の明かりをつける。明かりで目が痛い。そこに立っていたのは若葉だった。シルクのネグリジェ姿で、恥ずかしそうに頬を赤らめている。「仁、何するのよ……」若葉は唇を軽く噛んだ。その目元は恥ずかしさで赤らみ、少し拗ねたような、うらめしそうな表情を浮かべている。むせそうになる程の強い香水の香り。そのせいで、部屋に残っていた佳奈の香りが一瞬でかき消されてしまった。「誰がここに入っていいと言った?出ていけ!」仁の表情は冷たく、その声にはむき出しの嫌悪がこもっていた。「ただ心配で、様子を見に来ただけなのに。どうしてそんなに怒るの?」若葉の笑顔はこわばっている。「佳奈はまだ見つかっていない」目を瞑りながらそう一言答えた仁の声は、氷のように冷え切っていた。「佳奈、佳奈って!あなたは横山のことばっかり!」若葉がかん高い声で叫ぶ。「私がいるのに、何が不満なの?岩崎家なら、あなたが望むものは何でもあげられる。でも、あの女にそれができるの?」彼女は一歩踏み出し、仁の手首をつかんだ。「仁!あなたの心にまだあの女がいるのはわかってる。でも、もう死んだの!私が彼女の代わりになるから。いいえ……私のほうが、あの女よりもあなたのことをずっと理解しているわ」若葉の声が優しくなった。でもその言葉は、まるで毒のように心に侵食してくる。「
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