真帆は何も言わず、静かに麗香を見つめていた。波風一つ立たない瞳だが、その目を向けられた麗香は言いようのない威圧感に背筋が凍る思いだった。麗香の額にじわりと汗がにじんだ。ふと視界に入った一雄を助け舟と言わんばかりに掴み、涙を浮かべて彼にすがりついた。「一雄、見て。真帆さんのあの目……私のことが嫌いなのかしら?」一雄は自分にしがみつく麗香を冷静な目で見下ろした。その眉間には隠しきれない不快感が滲んでいた。彼は冷ややかな声で問いかけた。「真帆が言ったことは、事実なのか?」「そんなわけないわ!」麗香はパニックになりながら叫んだ。「一雄、分かってるでしょ? 私はひいおばあさまに喜んでほしかっただけ。あのブレスレットは素敵だけど、一点物でも何でもないわ。もっと高価な宝石なんていくらでもあるのに、わざわざ真帆さんと奪い合う価値なんてあると思う?」その言葉には一理あった。さっきまで麗香を冷たい目で見ていた客たちも、「確かに、鶴見家の令嬢がそこまで執着するか?」と決心が揺らぎ始める。麗香は周囲の目などどうでもよかった。彼女が気にしているのは一雄の考えだけだ。必死に彼の顔を覗き込んだ。一雄もまた、しばらく彼女と視線を合わせた後、淡々と言い放った。「君の言う通りなら、監視カメラを確認すれば済む話だ」その瞬間、麗香の顔から血の気が引いた。麗香だけでなく、真帆までもが一雄の言葉に耳を疑った。なんで……? 麗香は彼の婚約者じゃないの?彼はどうして……まさか、本当に彼が言った通り、麗香との結婚話は嘘なの?真帆は無意識に麗香を見た。麗香取り乱して正気を失いかけており、ただこの場の手前、必死に平静を装っていた。「そ、そんなことしなくていいわ……」声が震え、一雄の腕を掴む手もガタガタと震えている。「一雄、今日はひいおばあさまのお誕生日なのよ……?」言い終わらぬうちに、老婦人が冷然と遮った。「一雄の言う通りだ。真実かどうかは、カメラを見ればはっきりする」数々の荒波を乗り越えてきた清子の鋭い瞳が、麗香を射抜いた。「麗香さん、異存はないね?」「も、もちろんです……」清子にまで言われては、麗香も承諾せざるを得なかった。一雄は躊躇うことなくスマホを取り出し、直哉にメッセージを送った。五分もしないうちに、一雄の元に動画
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