言葉を投げ捨てると、彼は突き放すように電話を切った。「落ち着いてください一雄さん。そう怒らないでください」直哉は溜息まじりに首を振った。「ですが、本当にあの証拠を警察に渡さなくていいんですか?」「急ぐことはない」「え?」直哉は理解が追いつけなかった。「午前中あんなに休みなく動き回って、ようやく掴んだ証拠ですよ?なのに……」主人の決定にまた口を挟みそうになったことに気づき、直哉は慌てて口を閉じた。一雄はふと歩みを緩め、廊下のフェンスに手をかけた。「あの頑固な性格だ。一度手痛い教訓を与えておく必要がある」それと、分をわきまえない輩にも、身の程というものを教えてやらねばならない。まだ産毛も生え揃っていないようなガキが、救世主にでもなったつもりでいるのは不愉快極まりない。女性警官がスマホを回収して去っていった。ドアに鍵がかかると、真帆は糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。夜の冷気は水のように冷たい。天井の薄暗い電灯が点滅を繰り返し、部屋の中は真っ暗になった。彼女は怯えたように、部屋の隅々を見渡した。どうしてか、脳裏に断片的な記憶がよぎる。湿り気を帯びた冷たい地下室。逃げ場のない暗闇。クローゼットの角を何かがガリガリと齧る音。そして、その隅っこで泥だらけになりながら、布人形を抱きしめて震える小さな女の子……脳の奥深くに封じ込めていた記憶が、悪夢となって侵食してくる。真帆の呼吸は次第に荒くなっていった。無意識に後退し、背中が壁に触れた瞬間、何かに弾かれたように飛び起き、激しく肩で息をした。どれほど長い時間、その恐怖に耐えていただろうか。不意に、入り口から解錠の音が聞こえた。精根尽き果てていた真帆は、カッと目を見開き、恐怖と警戒を剥き出しにしてドアを凝視した。鉄の扉が開く。真帆はたまらず部屋の隅へと後ずさった。「あなたに電話よ」女性警官が腕を伸ばし、スマホを真帆の前に差し出した。いつまでも受け取らない彼女に、警官は催促する。「ほら、出なさい」真帆は唾を飲み込み、震える手でそれを受け取った。受話器の向こうから、冷徹な声が響く。「……考えはまとまったか?」昨日と同じ問い。そして、追い打ちをかけるような一言。「自分の過ちが、どこにあるか分かったか?」だが、真帆の態
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