All Chapters of ★毎日更新《堕胎告知》「オマエみたいなゴミ、産むんじゃなかった。」「テメェが勝手に産んだんだろ、ころすぞ。」: Chapter 151 - Chapter 160

218 Chapters

117. おれたちには信念がある! We have different beliefs !

「あぁ、俺の考えじゃあ…… |地獄《パンドラ》では…… “神が人間を”創ったんじゃあねぇ、 “人間が神を”創ったんだ。 底なしの自分たちの悪意に……|地獄《パンドラ》の“邪悪なる存在”である自分たちに抗うために。 だが、おれらは|地獄《パンドラ》人ほど醜くない。“原罪”が俺らを完全に堕天させるまでにはまだ間に合う。まだ|猶予《ゆうよ》がある。 おれらは|地球人《あくま》どもとは違って、“神”なんて創り上げなくても、“聖者”になれると思う。もとの|文学界《リテラチュア》の“無垢なる存在”に。」 「……そのために必要なのが――」 「――あぁ、ただ、“人間であること”だ。 家族を思いやり、友を|労《いたわ》り、部下を守り、他人にやさしくする……そんな当たり前のことでいいんだ。 だが……そんな“当たり前”のことが今はひどく難しい。 なぜなら――」 「――おれのおかあさまが、“原罪”をこの|文学界《リテラチュア》に持ち込んだから――!」 ◇◆◇ 「そうだ。 ……だからおれはお前の母親を、殺さなくちゃあならない。これはおれの|お《・》|母《・》|様《・》|の《・》|敵《・》|討《・》|ち《・》ってだけじゃない。そんな|小《・》|さ《・》|な《・》|話《・》じゃないんだ。 むしろ俺はあの日……“砂神アデライーダ”と“雷神エレクトラ”が|対峙《たいじ》した日に……|砂《・》|神《・》|が《・》|果《・》|た《・》|せ《・》|な《・》|か《・》|っ《・》|た《・》|本《・》|懐《・》|を《・》|果《・》|た《・》|し《・》|た《・》|い《・》。 つまり……“原罪”……“|地球人《あくま》の悪意”がこの|文学界《リテラチュア》に広がり切る前に……まだこのパンドラ公国に|留《とど》まっている間に…
last updateLast Updated : 2026-05-14
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118. おれたちは、あいいれない。We Never share Our Love.

アイは哀しそうに、眼では|好敵手《しんゆう》をみながら、口では家族への思いをこぼす。 「……“家族だから”……だから、わたくしは貴方が大好きですけど、|反政府組織《レジスタンス》に|与《くみ》することはできないのです。 “家族だから”……だからわたくしは大好きな貴方と戦わないといけないんです。だって……彼らはわたくしの“家族だから”。」 アイは確かな信念と共に、言葉より|雄弁《ゆうべん》な瞳で|好敵手《しんゆう》をみながら言う。 「……それだけで、たったそれだけでわたくしには“命をかけるに値する理由”なのです。 ……“大好きな貴方と戦う理由”になるのです。」 ◇◆◇ ザミールは哀しそうな、でも納得がいったようにゆっくりと立ち上がる。 「……確かになぁ……俺も|未《いま》だ眠り続けてるお母様を守るためだったら、誰が相手でも、|其奴《そいつ》のことをどんなに好きでも、戦うだろうな……。 あぁ……どうにもこの世は生きにくい。」 「『|智《ち》に働けば|角《かど》が立つ。情に|棹《さお》させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。』 ……とわたくしが読んだ日系|地獄《パンドラ》文学者も言ってましたよ。」 「……|地球《パンドラ》人もたまにはいいこと言うなぁ……。 ――だがそれも……“原罪”の一部だ……。 俺は認めない……!」 アイがとても|徐《おもむろ》に立ち上がる、立っているというには、背も縮こまり、膝に手をつき、頭も下がり、前髪がその瞳を隠すぐらいに|垂《た》れ下がっている。 しかし、その髪の間から覗くサファイアの瞳からは、闘志は失われていなかった。 「んじゃあ……まぁ、“夜明けまでにテメェを殺す”っつう誓いもあるし……やるかぁ……。」
last updateLast Updated : 2026-05-15
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119. ある独りの決断 A lonely decision.

「……こいつらはボクが全員殺すからね。」 ナウチチェルカが中指と親指を使って指をパチンと鳴らす。その音は夜の暗闇に響きわたった。 3人が苦戦して、何とか、それでも少しずつ倒していた敵の残党達が一瞬にして消し飛ぶ。 |文《・》|字《・》|通《・》|り《・》……消し飛んだ。 ◇◆◇ そこには消し飛んだ彼らの影だけが残っていた。ただ彼らの肉片が黒いシミとなり、地面にこびりついて、影として残っていた。 ラアルとはるひ、かげろうはあまりの早業に……自分たちが何とか苦戦して闘っていた相手を一瞬にして消し飛ばしたナウチチェルカを見て、そのあまりの次元の違う強さを見て……感じた。 しかし、感じたのは頼りになる味方が助けに来てくれたという安心では決してなく……“異形の怪物”をみる“|惧《おそ》れ”に近かった。 急いで駆けつけて助けた生徒たちに、そんな瞳で見られたナウチチェルカが感じたのは、驚きや失望、悲しみではなく…… ――あぁ、またか……。 という“|諦観《ていかん》”だった。 彼女は|人間種《ニンゲンたち》に“失望する”には|老《・》|い《・》|す《・》|ぎ《・》|て《・》|い《・》|た《・》し、人間種にそのような視線で見つめられて“悲しみを感じる”には……|慣《・》|れ《・》|す《・》|ぎ《・》|て《・》|い《・》|た《・》。 「……。」 ナウチチェルカは少しの間、押し黙っていた。その時彼女のこころがどんな形をしていたのかは、彼女自身にも分からない。 ラアルが王女として率先して話し出す。 「ナウチチェルカ教官、お助け頂き感謝致します。|パンドラ公国《わたしのくに》を裏切った不届きな教官たちは、彼らはどうされたのですか?|多勢《たぜい》に|無勢《ぶぜい》でしたが……。」
last updateLast Updated : 2026-05-16
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120. 陽炎日和と小春月夜 Der Altweibersommer et Brum de chaleur

ナウチチェルカは迫りくる敵に対抗するために、地面に両手をつき|心《ヘルツ》の根を張り巡らせる。 「まぁ。ボクは……|忠実なる騎士《あいつら》を……“教育”、してあげようか。 なんたってボクは、アイたんが|慕《した》ってくれる…… ――“マンソンジュ最強のチェルせんせー”……だからね……。」 ◇◆◇ かげろうとはるひは連携を取り、|索敵《さくてき》をしながら|疾走《はし》っていた。 「たくっ……どこまで敵を引き離したんだよ……あの子は……!」 「何か見えるか?はるひ。」 「いいや、ぜんぜん。進んでも進んでも闇、闇闇。やんなるわ。 まじでどこまで|砂漠の黒死病《デシエルト・ペスト》を私たちから遠ざけようとしたのさ……全くあの子は、“自分が弱っちい”ってことも忘れて……!」 |心《ヘルツ》の炎で足元を照らしながら陽炎が答える。 「……俺にはこの距離が、どれだけアイ様が俺たちを|大《・》|事《・》|に《・》|思《・》|っ《・》|て《・》|く《・》|れ《・》|て《・》|い《・》|る《・》|か《・》を表している気がするよ。それだけザミール・カマラードから俺たちを守りたかったんだろう。」 「……ふーん、私にはをこの距離が遠ければ遠いほど、あの子が私たちを|信《・》|用《・》|し《・》|て《・》|く《・》|れ《・》|て《・》|な《・》|い《・》|ん《・》|だ《・》って、頼ってくれてないんだって思うけどね。 この距離が……まさにあの子と“私たち”との――」 そこではるひは夕陽の指す教卓でアイを襲った時に、アイが|縋《すが》るようにかげろうに助けを求めていたことを思い出して、言い直した。
last updateLast Updated : 2026-05-17
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121. どこにいきますの♡ Where are you going, handsome?

《どこにいきますの♡》 その声は真後ろから聞こえた。 その声は|先刻《さっき》この手で殺したはずの――!! ◇◆◇ 振り返った瞬間に腹に何かを感じた、腹になんかぶっ刺さってやがる――! あつい……!!いやこれは……痛みだ!! 目を見開くと、|艶《つや》めいて|蠱惑《こわく》的な笑顔を浮かべたアイ・ミルヒシュトラーセが、|柄《つか》にルビーのついた短刀で俺の腹をぶっ刺しているのがみえた。 「……わたくしを置いていくなんて、|随分《ずいぶん》と|寂《さび》しいじゃあありませんか……♡ 遊ぶだけ遊んだらポイっ!……ですかぁ……?」 思わず|膝《ひざ》をつく、うまく呼吸ができない。腹をぶっ刺されたんだから当たり前か……。 いや、そんなことより――。 「……アイ……なんで死んだんじゃあ……ゴフッ……!」 アイが俺の腹から短刀を引き抜く。 なぜか俺の胸は高鳴っている。ソンジュが生きてたと知った時みてぇだ。|亡《な》き友が生きていたような、そんな感覚。 「……おれも死んだことなんてなかったから知らなかったが……|お《・》|れ《・》|ぁ《・》|ず《・》|っ《・》|と《・》|女《・》|性《・》|体《・》|で《・》|戦《・》|っ《・》|て《・》|た《・》|ろ《・》? ……死んだと思って意識が薄れてよぉ……なんだかふわふわと|揺蕩《たゆた》っていたら、そうして気がついたら勝手に男性体になってたんだ。」 「……そうか……ゴフッ……お前、ほんとうに|両性具有者《セラフィタ》……だったか……。 ……|神聖ロイヤル帝国《ロイヤル》の奴らは……ミルヒシュトラーセの人間に|箔《はく》をつける為の嘘だって言ってたが……|神聖ロイヤル帝国《う
last updateLast Updated : 2026-05-18
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122. おれを呼んだかぁ……? Calling me? Baby.

「ザミール……。」 アイは早く友を助けに行かないといけないのに、ザミールを胸に抱いて泣きじゃくっていた。こんなに泣いたのは、|彼《・》|の《・》|く《・》|る《・》|し《・》|い《・》|人《・》|生《・》|で《・》|初《・》|め《・》|て《・》|だ《・》|っ《・》|た《・》。 親に何をされたときでも、親に捨てられたときでさえ……|親《・》|の《・》|た《・》|め《・》|に《・》|は《・》|こ《・》|ん《・》|な《・》|に《・》|泣《・》|い《・》|た《・》|こ《・》|と《・》|は《・》|な《・》|か《・》|っ《・》|た《・》。 「|嗚呼《ああ》……わたくしの|強敵《とも》よ……。ザミール・カマラード……。」 アイの胸の内で声がした。聞こえるはずのない声が。 《おれを呼んだかぁ……?》 ◇◆◇ アイの目は見開かれ、そのちいさな揺れでまた|泪《なみだ》が一筋落ちる。それは、アイの胸のなかにいた一人の女性の頬を濡らす。 |アデライーダ《ザミールのはは》にそっくりな女性の頬を……! 「……ザ、ミール……?」 その女性は、アイの知るザミールのように、ニカッと微笑んだ。 「あぁ、呼んだかよ?」 アイの身体が震える、それは決して自ら殺した|敵《かたき》が生きていたからという恐怖ではなかった。 ……それは|寧《むし》ろ亡き友が生きていたような|高揚感《こうようかん》。 「ザミール……なのか?……なんで……?」 その女性は愉快そうに笑う。 「俺だって言ってるだろ?……アイ。ダチの顔見間違えんなよ?……くくくっ……冗談だ。」 アイは敵が自らの胸の中にいるというのに、臨戦態勢も取らず、まんじりともしない。 「……ザミール……お前
last updateLast Updated : 2026-05-19
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124. 神なき聖者+神を愛する哲学者=? a Godless Saint + a God-loving Philosopher = ?

なのに、俺はいい気になって|人間体《アニマ》を……アイを……! そうして、お母様との約束を破ってしまったこと……|人間体《アニマ》に暴力を振るってしまったことを後悔していた俺は、気が付かなかった、アイが俺の目の前に立っていたことに――! アイが俺を優しく|抱擁《ほうよう》する。 「|爆裂の《バオチャー》……」 ――そして、小鳥が|囀《さえず》るように|呟《つぶや》く。 「……|哀しみ《トリステッツァ》……。」 ◇◆◇ 爆発した。 何が、ではない。 全てが、だ。 爆発した。 弾け飛び。のたうち周り。ぶつかり合い。弾けては混ざる。 爆裂の反流のなかで、アイの悲しみの|濁流《だくりゅう》のなかで、ザミールは|砂塵《さじん》で身を守ろうとしたが、アイにひしと抱きしめられているから、上手く|心《ヘルツ》を全身には|纏《まと》えない。 仕方なくアイの身体ごと自身の砂塵で包み込もむとする。そうして、二人の水流と砂塵が混ざり合う、ザミールの砂塵はアイの水流から|潤《うるお》いを奪い、アイの水流はザミールの砂塵に潤いを与える。 ◇◆◇ 全てが落ち着いた時には、洞窟は吹き飛び大きなクレーターができて、二人はそこに倒れていた。 アイはザミールに抱きつき、ザミールはアイを抱きしめていた。といっても虚弱なアイの手にはもうほとんど力が入っておらず、ザミールに抱かれるがままになっていた。 「……ちくしょう……自分が|人間体《アニマ》であるっていう“|強《よわ》み”まで使って、お前の信念にまでつけ込んで勝とうとしたのに……結局負けちまった……。」 アイが悔しそうに、でもどこかスッキリしたように呟く。いくら強大な|心《
last updateLast Updated : 2026-05-21
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125. 勝手に押し付けられた家族と自分で選んだ友 Imposed Family or a Self-selected Friend

「……あの方たちは|反政府組織《レジスタンス》のリーダーである貴女と、ミルヒシュトラーセ家の|こころをもつもの《プシュケー》であるわたくしを|戦《や》り合わせ、|漁夫《ぎょふ》の|利《り》を得て……二人とも殺してしまおうという作戦でしょう……?」 「あ、ああ……この状況をみるにおそらくな……?」 「じゃあ、わたくしと手を組みましょう。」 アイはザミールに手を伸ばしたまま続ける。 「ああいった、|狡《こす》いゲロクソ以下の|糞滓《くそかす》野郎どもに……わたくし達がいいように討ち取られるのは――」 アイはその天使のようにうつくしい、慈愛に満ちた微笑みと共に言った。 「――クソみてぇにムカつきませんか?」 ◇◆◇ 天使の口からはおおよそ発せられない言葉を聞いて、その感覚の|間隙《ギャップ》で、ザミールは笑った。 ……そして、天使の手を取った。 ――しっかりと、母が幼子を決して離しはしないというように、確かに……握った。 「はははっ! 確かに俺らみてぇに直接戦場にでて心をぶつけ合わずによぉ!裏工作で高みの見物しといて、漁夫の利ってのはぁ……虫がよすぎるし、何より……ムカつくなぁ……!! ――俺はのったぜ!アイ!」 膝立ちになって、それでも自分よりちいさいアイをそっと抱きしめるザミール。するとザミールの身体から愛の|心《ヘルツ》が溢れ出してアイの|華奢《きゃしゃ》な|体躯《たいく》を包み込む。 そして、かつて|アデライーダ《おかあさま》にそうしてもらったように、背中を鼓動の|律動《りつどう》でぽんぽんと叩く。 アイが抱かれるままに言う。 「お前はなんどおれを泣かせば気が済むんだよ?こんなこと……|エレクトラ《おかあさま》にもしてもらったことがねぇよ……。
last updateLast Updated : 2026-05-22
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126. 夏の陽炎は春のひだまり Summer Shimmering is Springtime's Sunny Spot.

「……俺は仲間は決して見捨てない。家族も地位もすべて|亡《うしな》った俺にはもう仲間達しかいないんだ。だから、俺は決して部下も、兄弟分も見捨てない。」 「ハァハァ……!……へっ……この|誠実な犠牲者《リウー・タルー》め……。」 |忠実なる騎士《ロイヤル・ナイト》の放った水の槍の一撃がアイの眼前に迫る――! 「しまった!アイ――!」 ザミールは必死に手を伸ばすが、間に合わない――! 「……あぁ、わたくし、死ぬのかな?……本当にクソみてぇな……人生――」 ◇◆◇ アイに迫っていた水が爆発するように|蒸発《じょうはつ》して消えた。 |此《こ》れは、炎の|心《ヘルツ》によるものだ――! ◇◆◇ ……?……何が起きたんだろ? 血を失いすぎたのか、もう目がよく見えない。 誰かが助けてくれた?でも、誰が? いや、そんなの決まってる……いつもわたくしを助けてくれる。やさしい陽炎のような炎の|心《ヘルツ》。 誰かに横抱きに抱え上げられる。 やさしいひだまりのような体温。 誰かはわからない、わからないけど、きっと。 目はもう上手く見えないけどきっと。 わたくしを助けてくれるのはきっと。 今までもいつもいつでもずっと助けてきてくれたのはきっと。ずっとずっと。 「……か……げろう……?」 「……。」 返事はない。でもわたくしをいつも助けてくれるのは。|聖別の儀《セパレーション》の後に全てを|喪《うしな》ったわたくしにやさしい言葉をかけてくれたのは。 「かげ、ろう……なんでしょ……? わたくしを、助けてくれるのは
last updateLast Updated : 2026-05-23
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127. わたくしのこころ、おれのことば My Heart, My Words

かげろうの瞳が赤く燃え上がる。 「なんだと……?」 |忠実なる騎士《ロイヤル・ナイト》は告げる。 「その|こころをもつもの《プシュケー》を引き渡せばお前たちは見逃してやる……我々の目的はその兵器を|鹵獲《ろかく》することだからな。」 かげろうの白目が純黒に染まる。 「……|兵《・》|器《・》……?|鹵《・》|獲《・》……?」 「……どうした? |ソ《・》|レ《・》を引き渡しして生き延びるか、それとも――」 「――黙れ。この方はアイ・ミルヒシュトラーセ。……|兵《・》|器《・》でも|物《・》でもない……|神《・》だ……。 ……俺の前でよくそんな発言ができたな。 ――俺は1人の|人《・》|間《・》として、この方を護ると“誓った”んだ。 ……自らの命惜しさに差し出すと思うか? ――この方を|世《・》|界《・》|で《・》|い《・》|ち《・》|ば《・》|ん《・》|愛《・》|し《・》|て《・》|い《・》|る《・》この俺が……!!」 「――ならば、ここで死ね。」 「……お前がな……!!」 ◇◆◇ 普通に考えて、神聖ロイヤル帝国の皇帝にその称号を与えられた|忠実なる騎士《ロイヤル・ナイト》と、一介の士官学生であるかげろうが戦えば結果は見えている。 しかし、そんなことはかげろうには関係がなかった。かげろうにとって“世界”とは“アイ・ミルヒシュトラーセ”だった。 だから、自分の世界を脅かすものは、傷つけようとするものは、万難を排して燃やし尽くす。 ただ、それだけだった。 アイをしっかりと、愛情の炎の|心《ヘルツ》と防御の炎で包み込んだかげろうは立ち上がる。
last updateLast Updated : 2026-05-24
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