二月下旬。まだ道路の雪はしぶとく残っている。毎年のことだが、来月にならなければ溶け始めないだろう。父親の車に乗せられて移動すること一時間弱。ようやく目的の建物が見えてきた。一ヶ月ほど前に見た、大学名とともに星型の意匠のついた五階建ての校舎を仰ぎ見る。僕は早く目的地についてほしいという気持ちと、結果を知りたくないという気持ちで板挟みになっている。今日は第一志望の聖北学院大学の合格発表日だ。 車は大学の駐車場に入る。「浩ちゃん、着いたぞ」 エンジンを切った父に声をかけられる。どくん、と心臓が高鳴る。すでに結果は出ている。緊張したところで結果は変わらないが、確認するまではどうしようもない。もし予備校に通っていれば、もっと自信があったのかもしれない。けれど経済的な理由から国公立大学に通ってほしい、という両親の思いに反して私立大学を第一志望にしている後ろめたさから、自力で受験勉強をすることを決めていた。受験の手応えも、高校受験の時のような確信はなかった。 白地に墨で書かれた「合格発表はこちら」という立て看板に従って父と並んで歩く。今日は晴れていて、足元の根雪の表面は太陽の熱に溶かされ少し滑りやすくなっている。滑ったら不吉だとか、合否になんの関係もないことなんて気にしたくないのに気になって過ごしていた生活はこれで終わるのか。一番上の兄は一浪して大学に入った。僕は大丈夫だろうか。 国公立大学の試験は落ちたが、他の私立大学には合格している。けれどすでに合格した私立に通いたくはない。国公立大学も、合格したら通わされてしまう。だから聖北学院大学の受験に不要な科目意外の勉強はしていない。国公立大学の受験に必要な科目の勉強を途中からやめたので、落ちるべくして落ちた。 勉強時間は他の受験生に比べて引けを取らないだろうが、効率の面ではどうだろう。必要ないものは削ぎ落としたのだが。 そんなことを考えながら歩いていると、合格発表の掲示板の前にたどり着いた。周りにはたくさんの受験生がいて喜んだり悲しんだりしている。コートの内ポケットから受験票を取り出して、すでに記憶している受験番号をもう一度確認する。掲示板の受験番号を探すと、自分の番号を見つけた。良かった。ずっと心にのしかかっていた重圧からこれで解放される。「あった。お父さん、あったよ」 「そうか、良かったな。おめ
最終更新日 : 2025-12-26 続きを読む