紫音はハッとして、父の背中をもう一度見つめ直した。確かにその通りだ。もし自分が父の立場なら、やはり愛する人がメスを入れられている間、のんきにソファで座ってなどいられないだろう。少しでも近くで、少しでも早く無事を確認したいと願うはずだ。「……そうね。私だって、本当はすごく心配だもの。座って待ってるだけなんて、生きた心地がしないわ」紫音は自分の腕を抱きしめるようにして、小さく息を吐いた。このドアの向こうで何が起きているのか。母は今、痛い思いをしていないか。何もできない自分の無力さが歯痒くてたまらない。「だろ?ドアの前に張り付いていたからって何の手伝いができるわけでもない。でも、少しでも母さんのそばにいてやりたいんだよ。……お前が疲れたなら、おとなしくソファに座ってろ。父さんの隣には俺が立っておくからさ」州がどこかからかうような口調でそう言うと、紫音はムッとして眉をひそめた。「何よそれ!私がまるでお母さんのこと心配してない薄情な娘みたいじゃない!私はただ、お父さんの身体が心配だったから言っただけよ!」「わー分かった分かった、悪かったって」怒って抗議する紫音を見て、州は肩をすくめて苦笑した。「ごめんごめん、俺の言い方が悪かった。俺の口が悪いのは今に始まったことじゃないだろ?頼むから、こんなところで俺をボコボコにしてストレス発散するのは勘弁してくれよな」「……ふん。今回だけは見逃してあげるけど、次に変なこと言ったら本当に容赦しないからね」紫音は不満げにそっぽを向いたが、兄とこうしてくだらない口喧嘩をしたおかげで、張り詰めていた緊張がほんの少しだけ和らいだのを感じていた。「それより、もうそろそろ手術が始まってる頃かしら……」「ああ。先生が『30分で終わる』って言ってたなら、もうすぐ終わるはずだ」そこから先、二人はもう何も口にしなかった。紫音と州も隆之介の隣に並んで立ち、三人は無言のまま、祈るように『手術中』の赤いランプを見上げ続けた。永遠にも似た長く苦しい時間が過ぎ――ふと、手術室の扉の上で点灯していた赤いランプが消えた。直後、重々しい自動ドアが左右に開き、主治医と数名の看護師たちが姿を現す。「先生……!妻は、中の様子はっ……!?」隆之介が真っ先に駆け寄り、切羽詰まった声で問い詰めた。「
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