もともと、二人はあまりにも違う世界で生きてきたのだ。極端なまでに自己防衛本能が強く、すべてを拒絶しようとする有加里と、一度決めたら絶対に手放そうとしない執着心の強すぎる自分。歪に絡み合った二人の歯車は、どれだけ互いを深く愛し合っていても、決して噛み合うことはなかった。この数日間の苦悩と深思熟考の末、州はようやくその残酷な真理を悟り、狂おしいほどの執着を手放す覚悟を決めたのだった。もはや、これ以上交わす言葉はなかった。愛する女性に静かな別れを告げると、州はゆっくりとその場から背を向けた。胸の中に渦巻く感情はあまりにも複雑で、到底言葉にできるものではなかった。ただ今は、誰の目にも触れず、一人きりで静かに息をしたかった。「……有加里さん」州の背中が見えなくなった後、紫音は静かに口を開いた。「事ここに至っては、私もこれ以上何も言わないわ。過去のことはすべて水に流して、今はただ、あなたの身体が少しでも楽になることだけを祈っている。……私はこれで失礼するけれど、もし何か困ったことがあったら、遠慮なく私を頼ってちょうだいね」紫音は短くそう告げると、静かに会釈をしてその場を後にした。足早に廊下を歩き、病院の入り口近くで立ち尽くしていた兄の姿を見つけると、紫音はそっと歩み寄った。「紫音……」妹の姿に気づいた州は、ひどく掠れた声で言った。その顔は限界まで疲労しきっており、虚脱感に満ちていた。「母さんの容態はまだ不安定だから、お前には苦労をかけるが、もう少しだけ母さんの傍についていてやってくれないか。何かあったら、すぐに連絡してくれ。……ごめん、俺は今、少しだけ一人になりたいんだ。少しの間、母さんのことはお前に任せる」それだけを言い残し、州は逃げるように病院の出口へと向かっていった。今は誰とも話したくなかったし、何も考えたくなかった。ただひたすらに、心を閉ざしてしまいたかった。この数年間、すべてを懸けて愛し抜いた女性との完全なる決別は、彼のような精神力の強い男でさえも、根こそぎ心をへし折られるほどの決定的な打撃だった。「分かったわ、お兄ちゃん。……母さんのことは私に任せて!」紫音は遠ざかる兄の背中に向かって、必死に明るい声を取り繕って叫んだ。「お兄ちゃんは昔から、どんな困難にも負けない強い人じ
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