実習生の女が散々おもちゃにした指輪。彼氏にそんなものでプロポーズされた瞬間、私はこの恋に終止符を打つ決心をした。でも、彼らは私の手にある「ある物」を見て、どうしてそんなに慌てているのかしら?付き合って七年目。周藤蓮也(すとう れんや)は、激しい豪雨の中で私、江口智美(えぐち ともみ)の退勤を待っていた。助手席のドアを開けると、そこには最悪な光景が広がっていた。座席はびしょ濡れで、長い髪の毛が一本、不自然に落ちていた。蓮也はハンドルを握ったまま、こちらを振り返りもしない。「さっき、企画部の実習生を家まで送ったんだ。傘を持ってなくてずぶ濡れだったからな」私はその冷たく湿った座席に腰を下ろした。心までがじわじわと、一気に冷え込んでいく。「蓮也、私がひどい潔癖症だって、知っているはずよね」彼は鼻で笑った。その声には、隠しきれない疲れと苛立ちが滲んでいた。「たかが座席一つでガタガタ言うなよ。彼女は君より若いし、一緒にいて楽しいんだ。雨に濡れた姿だって、君よりずっと綺麗だったよ。正直、彼女とはもう一通り試してみたが、確かに君といるより楽しかった。でも、プロポーズは予定通りする。君が知らないふりさえすれば、これからも上手くやっていけるだろう」窓の外では激しい雨がカーテンのように視界を塞いでいたが、車内の空気はそれ以上に重く、私を窒息させた。座席の冷たい液体が、私の高価なレザーのスカートを容赦なく濡らしていく。そのじっとりとした不快感が肌を伝い、心臓まで凍りつかせる。あまりの気持ち悪さに、胃の底からこみ上げてくるものがあった。道中、蓮也は聞いたこともない小唄を鼻歌で歌っていた。彼はとても機嫌が良く、私の様子など微塵も気にかけていない。到着したのは、市内でも指折りの予約困難店として知られる、ミシュラン星付きの高級レストランだった。彼は先ほどの無礼を謝ることも、私をなだめることもしなかった。料理が半分ほど運ばれてきた時、彼は突然ベルベットの箱を差し出した。それは婚約指輪だった。だが、箱の表面は擦り切れ、まるで誰かが何度もおもちゃのようにいじくり回したかのようだった。「はめてくれ、智美。もう七年だ。いい加減身を固めて親を安心させないと」彼は立ち上がることも、プロポーズの定番である片膝をついて跪くことさえし
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