時雨は一瞬ぽかんとしたが、すでに二人の男が近づき、彼女の両腕をつかんで地下室へ引きずっていった。我に返った時雨は必死にもがきながら、弱々しい声を上げた。「悠真さん、違うの!本当に違うの!きっと何かの間違いなんだって!」しかし、悠真の目には一片のぬくもりもなかった。「お前は紗帆にホオズキを混ぜた。わざと大量出血するまで待ってから助けを呼んだ。俺が一生気づかないとでも思ったのか?」細かく言い当てられ、時雨は悟った。——彼はすべて知った。それでも口だけは否定する。「わざとじゃないの!あのとき私、ただパニックになってただけなの!」時雨を拘束する護衛たちが腕力を強めて地下室へ引きずると、彼女はとうとう怯えの色を隠しきれなかった。「悠真さん、ごめんなさい!私が悪かったから!そんなことしないで!」悠真は動かない。時雨は叫ぶ。「もし私にこんなことしたら、お父さんが黙ってないから!」悠真は冷たく鼻で笑った。「見てろよ」リビングには静けさが戻った。どれほど時雨を罰したところで、紗帆の目には届かない。――夕方。助手が紗帆のスマホを持って戻ってきた。「久藤社長、調べました。紗帆さんのスマホにはウイルスが仕込まれていました。痕跡から追ったところ、時雨さんの部下が仕掛けたものでした」悠真の胸に冷たい何かが落ちる。頭に浮かぶのは、あのパーティーで紗帆を疑い、彼女が必死に訴えていた姿。あのとき、どれほど傷ついたのか。思うだけで胃が捩れる。――そして彼は想像した。家に閉じ込められた紗帆の、ひとりきりの恐怖と絶望を。痛みは限界を越え、悠真は自分の頬を勢いよく叩いた。だが皮膚の痛みでは、胸の奥の苦しみには到底届かない。時雨は地下室に閉じ込められた最初の数時間、まだ希望を持っていた。悠真は本気ではない。父親と悠真は提携している。自分には後ろ盾がある——そう信じ込んでいた。だが一日が過ぎ、ようやく不安が胸を締め付け始めた。二日目。彼女は扉を叩いた。「悠真!悠真、開けて!ここから出してよ!」二度ほど叩いたところで、扉は自動的に開いた。驚いて息をのむより早く——彼女の視線は、獣のように血走った悠真の目に飲み込まれた。真紅に染まった瞳。底に満ちる憎悪。長く見つめるほど、呑み込まれてしまいそう
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