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第12話

作者: 皆無
一か月後、時雨の妊娠が判明した。

悠真は、紗帆の写真で壁一面が埋め尽くされた部屋の中央に座り、無表情のまま電話口の秘書に告げた。

「一か月後、中絶させろ。そのあと……また妊娠させろ」

通話を切ると、部屋に残ったのは写真を照らす淡い灯りだけ。悠真はその中心で、静かに闇に沈んでいった。

——紗帆がいなくなってから、どこにいても暗闇の中にいるようだった。

夜は酒に溺れてやっと眠りにつき、夢の中でだけ彼女に会える。目を覚ませば、そこには狂わせるほどの虚無だけが広がっている。

そうして三年が過ぎた。

その三年の間、紗帆の消息は一度も掴めず、悠真は何度も自分が壊れてしまいそうだと感じた。

それでも狂わなかったのは——彼女を見つけるという執念だけが、まだ彼を繋ぎ止めていたからだ。

――ある日。

家で何日も泥酔していた悠真は、山積みになった書類を前にようやく仕事に取りかかっていた。

数枚目を通したところで、秘書が勢いよく扉を開ける。

「久藤社長!奥様の行方が分かりました!」

紗帆は父の葬儀を終えたその日に、母を連れて家を出た。

翌日、近所の人が母に電話を寄こし、「家の前に、見たことない男が立っていた」と知らせてくれた。

紗帆はすぐに悟った。

——悠真だ、と。

間一髪で逃げられたことに胸を撫で下ろし、彼に会いたくないのはもちろん、母にも会わせたくなかった。

小さな町を離れ、紗帆は海外へ出た。一年の終わり頃、道端でひとりの幼い子どもを拾った。失った我が子への想いもあったのだろう。

紗帆はその子を養子に迎え、「小林心音(こばやし ここね)」と名付けた。

海外生活も三年目に入り、心音は幼稚園に通える年齢になり、紗帆は、心音には自分の生まれ育った国の教育を受けさせたいと考えた。

——三年が経った。さすがに悠真も諦めているだろう。そう信じて、母と心音を連れ、そっと帰国した。

だが悠真は一瞬たりとも捜索を止めていなかった。

帰国して数日で、その情報は彼の元に届いた。知らせを受けた悠真は、書類を放り出し即座に航空券を取り、紗帆の故郷へ向かった。

着いたとき、ちょうど幼稚園の下園時間だった。門の前には、紗帆が立っていた。

その姿を目にした瞬間——悠真の目が赤く染まった。三年の歳月は確かに彼女を変えた。

だが、変わっていないところもたくさんあった。遠
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