娘が重い病気にかかって、高額な治療費が必要になった。なのに元夫の原田健太(はらだ けんた)は、娘の治療をあっさり諦め、自分の幼馴染である原田菫(はらだ すみれ)とイチャつき始めた。絶望していた私に、手を差し伸べてくれたのは初恋の相手、野口翔(のぐち しょう)だった。翔は私と結ばれ、私の口座に1億円を振り込み、一緒に娘の看病までしてくれた。だけど、娘は死神の手から逃れることはできなかった。それから6年後、私たちの間に新しい命が宿った。一人で妊婦健診に行った病院で、私は偶然、翔と医者の会話を耳にしてしまった。「野口社長、あなたと奥さんの間にもお子さんができた今、もしあの時のことが明るみに出たらどうするんですか?」「当時、菫は重い病気でした。沙耶香(さやか)の子の心臓を菫に移植したのは、やむを得ない手段だったんです。それに今、沙耶香には新しい子供もいて、沙耶香ももう、水に流すべきでしょう」その会話で、私は全てを悟った。娘は……わざと誤診されていたんだ。娘の心臓は、翔の手で密かに菫へと移植されていたのだ。それを聞いた途端、声もなく涙が頬を伝った。今お腹にいるこの子は、翔との愛の証じゃなかった。ただの罪滅ぼしだったんだ。この6年間は、全部、翔のお芝居だった。たった一人の愛する人、菫のためだけの。少し膨らんだお腹を撫でながら、力なく笑った。6年前、私は娘を救えなかった。もう、こんな悪縁は断ち切りたい。診察室で、医者は少し残念そうにため息をついた。「分かりました、野口社長。でも、本当にそれでいいんですか?原田さんはもう結婚しているんですよ。野口社長も自分の人生を大事にすべきです。それに、奥さんは野口社長のことをとても愛していて、良い人ですよ」電話の向こうで、翔は少し間を置いて、きっぱりと答えた。「いいんですよ。俺は名目なんて気にしません。ただ菫を守れればそれでいいです。菫が誰を愛そうと勝手で、俺はただ、彼女が健康で幸せでいてくれればいいです。沙耶香のことだけど、確かに本当に良い人ですよ。良い妻だし、良い母親にもなるでしょう。でも残念ながら、俺は沙耶香を愛してません。人の気持ちは、どうにもならないものですからね」翔の言葉を聞いて、医者は首を振り、それ以上は何も言わなかった。「奥さん、あまり状態が良く
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