綿霧子(わた きりこ)は、桐山行人(きりやま ゆきと)が海外の闇市場から救い出した美人だった。彼は彼女のために、一人で闇市場の勢力を潰し、かつて彼女を辱めた者を全員縛り上げ、彼女に触れた部位をことごとく切り落とした。ある密売人が彼女に向かって口笛を吹いただけのことで、彼はその密輸ルートを一掃し、血は川となって流れた。彼女に清らかな未来を捧げるため、行人は絶頂期に権力を投げ打ち、裏方に身を引いたのも、ただ彼女を安心させたい一心だった。誰もが彼女を幸運だと言った。行人は愛を刃に鍛え上げ、その切っ先は外へ向けあらゆる茨を断ち切り、柄の部分だけを彼女に握らせた。半年前、国中を騒がせた結婚式は、彼が全世界に突きつけた宣言だった。花火が国の半分の夜空を焦がしたあの夜、行人は彼女の手を握りながら、こう言った。「これからは、お前の世界にいるのは俺だけだ」彼女はそれを信じた。……けれど、ある雨の夜、彼女は一報を受けた。行人が露崎白雪(つゆざき しらゆき)のため、天新町を焼き払ったという。白雪は、露崎川悟(つゆざき せんご)の妹だ。川悟は行人の最も忠実な腹心で、長年の彼のそばに従い、最後は行人のために、蜂の巣のように撃たれて果てた。死の間際、彼は白雪を行人に託したのだ。天新町は、行人の勢力範囲の中で最も「穢れのない」土地。全てを洗い清めた後、霧子と二人きりで隠れ住むと、約束してくれた場所だったのに――霧子は黒い傘をさし、天新町に立った。焦げ臭い匂いが立ち込め、地面には所狭しと人々が倒れていた。彼女は一瞬で、焼け跡の中心に立つ行人を見つけた。彼は白雪をしっかりと抱いている。白いスカートは血と泥に染まっているのに、彼の顔には微塵も嫌悪の色はない。行人は片手で白雪をがっしりと抱き、もう片方の手には拳銃――銃口からはまだ硝煙が漂っていた。銃口を向けられた男は地面に半跪き、口元から血を流しながら、かすれ声で笑い続けていた。「桐山行人!……お前、そんなにこの女が好きなのかよ……お前が抱いてる奴が何者か、わかってんのか……」言い終わらぬうちに、銃声が炸裂し、男はその場に崩れ落ちた。行人は一瞥もくれず、彼女を抱えたまま車へ歩き出した。動作は優しく、白雪を後部座席に寝かせ、自分の上着を脱いでかけさえし
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