もう少しだけ、横になっていようと思った。一日でいろんなことがありすぎて、頭の中が追いつかない。天井をぼんやり見つめながら、力の抜けた体をベッドに沈める。静かな部屋。外からは遠くで車が走る音がかすかに聞こえるだけで、やけに現実感が薄い。何も考えたくなくて、逃げるようにスマホを手に取る。指先で無意識に画面をなぞり、TikTokを開いた、その瞬間——通知がひとつ、目に入った。メッセージ。心臓が、どくんと跳ねる。なぜか、嫌な予感がした。見たくないのに、見なければいけない気がして、震える指でその通知をタップする。——「あの男、だれ?」一行だけの短い文章。けれど、その文字を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと掴まれたように苦しくなった。ドクン、と心臓が強く鳴る。みおんだ。すぐにわかった。言葉の冷たさも、踏み込んでくる距離感も、全部。しかも——ブロックしたはずなのに。画面のプロフィールを確認する。フォローもフォロワーもゼロ。アイコンは初期設定のまま。新しいアカウント。わざわざ作って、私に連絡してきている。背中に、じわりと冷たいものが走った。……怖い。無意識に、スマホを持つ手に力が入る。指先がじんわりと汗ばんで、少し滑る。あんなことをしておいて。あんなに、私を傷つけておいて。まるで何もなかったみたいに、こうして平然とメッセージを送ってくるなんて。今まで一度も連絡なんてなかったくせに。——どうして、今?頭の奥で、嫌な予感が形になっていく。きっと、また何かあったんだ。またトラブルを起こして、そして——私を利用しようとしている。そう思った瞬間、胸の奥がざわざわと騒ぎ出す。無視すればいい。関わらなければいい。わかっているのに。画面に映るその一文から、目が離せなかった。
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