7時を少し過ぎた頃だった。 まだ朝の光はやわらかくて、夜の気配が、ほんの少しだけ残っている。 その静けさを破るように、インターフォンが鳴った。 一瞬、身体が強ばる。 ——また、あの人じゃないよね。 胸がざわつく。 でも、モニターに映った顔を見た瞬間、その緊張はすっとほどけた。 ルカさんだ。 「大丈夫か?」 低くて落ち着いた声。 画面越しでも伝わる、焦りと、まっすぐな気遣い。 急いで出てきたのがわかる。 タンクトップにダルっとしたズボン。 寝癖のついたままのボサボサの髪。 普段なら少しラフすぎる格好なのに、今はそれが、ただ必死に来てくれた証のように見えた。 ——本当に来てくれたんだ。 その事実だけで、胸の奥がじんわりと熱くなる。 すぐにオートロックを解除して、ドアを開ける。 「ありがとう…」 声に出した瞬間、思っていたよりも、少し震えていた。 ずっと張り詰めていたものが、一気にゆるみそうになる。 ルカさんは、少しだけ私の顔を見て、状況を確かめるように目を細めた。 「…大変だったな?」 その一言は、必要以上に踏み込まず、でもちゃんと気持ちに寄り添う、やさしい距離感だった。 「紗月ちゃんが無事でよかった」 それだけを言って、次の瞬間、何も言わずに、私を抱きしめた。 一瞬、息が止まる。でも、すぐにわかる。 その腕に、力はこもっているのに、どこかやわらかい。
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