あれから、ヒナタくんからの連絡は一度も来ていない。スマホの通知は静かなままで、画面を開いても、そこに彼の名前が表示されることはなかった。——なのに、不思議と胸は騒がなかった。「ああ……またか」ぽつりと漏れた言葉は、思っていたよりもずっと軽かった。かつてなら、既読がつかないだけで心がざわついて、何度もトーク画面を開いては閉じて、勝手に傷ついて、勝手に不安になっていたのに。今は、ただ静かだった。たぶん、慣れてしまったのだと思う。裏切られることにも、期待を裏切られることにも。傷つくことに、耐性ができてしまった。「人生って、こんなもんだよね」窓の外に目を向ける。夕方のやわらかな光が部屋に差し込み、何でもない景色が、やけに穏やかに見えた。「恋愛なんて、もういいや」吐き出すように笑う。でもそれは、投げやりな言葉ではなかった。どこか、すっと肩の力が抜けたような、そんな軽さがあった。——私は、ずっと勘違いしていたのかもしれない。中身なんて何も知らないくせに、「好きだよ」なんて言葉。それを信じて、喜んで、期待して。でも結局は、相手の理想に当てはめられて、少しでも違えば、簡単に手放される。都合のいい女。その言葉が、やけにしっくりきた。——でも。ふっと、自分で笑ってしまう。「それ、私もじゃん」相手の顔や優しい言葉に惹かれて、その奥にある本質なんて見ようともせずに。ただ、自分の寂しさを埋めてほしくて。コンプレックスを、誰かに肯定してほしくて。私は、誰かで自分を満たそうとしていた。静かな部屋の中で、ゆっくりと息を吐く。胸の奥にあった何かが、すっとほどけていく。「……もう、やめよ」その一言は、驚くほど自然に出てきた。誰かに満たしてもらうことも、誰かに価値を決められることも。もう、いらない。「私、自分で満たす」小さく呟いたその言葉は、確かに自分の中に響いていた。——私は、私でいい。男がいなくたって、誰かに選ばれなくたって、私はちゃんと、幸せになれる。そう思えた瞬間、胸の奥にあった重たいものが、ふっと消えた。代わりに、じわじわと湧き上がってくるものがある。「……ていうか」口元が、自然とゆるむ。「こんな魅力的な私を捨てたとか、普通に見る目なさすぎじゃない?」思わず、くすっと笑ってしまう。以
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