All Chapters of 私を散々泣かせたクズ男たちが、今さら本気で愛してくる: Chapter 61 - Chapter 70

93 Chapters

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 10

「ヒナタくん、こっちだよ」 彼は、きょろきょろと辺りを見回していた。 まるで初めて来た場所で迷子になった子どもみたいに、行き先を探している。 案の定、反対方向に歩き出しそうになったので、思わず声をかける。 こちらに気づいたヒナタくんは、少し照れたように笑って小走りで近づいてきた。 (やっぱり方向音痴なんだ……) そんな姿が、どこか可愛く見えてしまう。 今日のカフェは、つい最近ルカさんと行ったあの店にした。 古い木の扉と、落ち着いた照明。 店内に流れるゆったりした音楽と、どこか懐かしいレトロな空気。 男性とカフェに行くことなんて、ほとんどない。 だから、ヒナタくんでも居心地がいい場所って考えたとき、真っ先に思い浮かんだのがあそこだった。 ……ルカさんを思い出して、少しだけ胸が引っかかる。 でも、デートで落ち着いて話せる場所といえば、あのカフェしか思いつかなかった。 店の扉を開けると、コーヒーの香りがふわりと漂ってくる。 木のテーブル、赤茶色の椅子、柔らかなオレンジ色の照明。 そんな空間の中で、ヒナタくんはどこか落ち着かない様子で周囲を見回していた。 「カフェとか……初めてでドキドキする」 ぽつりと、そんな言葉がこぼれる。 (え……?) 思わず心の中で声が出た。 女の子とデートでカフェに来たこと、ないんだ。 初対面のときも、LINEでも、あんなにグイグイ来ていたのに。 てっきり女の子の扱いも慣れていて、自然にエスコートするタイプだと思っていた。 でも実際は、まるで真逆。 席に座っても、どこかそわそわしている。 メニューを手に取っても、ページをめくる手が少しぎこちない。 私はゆっくりアウターを脱いだ。 今日の服は、ヒナタくんが選んでくれたもの。 デコルテが少し開いたトップスに、チェックのミニスカート。 少しだけ勇気のいるコーデだけど、 「似合いそう」と言われた言葉が、ずっと頭に残っていたから。 アウターを椅子にかけた瞬間、彼の視線が一瞬止まった。 「……あ」 小さく声を漏らす。 そしてすぐに俯いて、慌てたようにメニューを開いた。 でも、ページを見るふりをしながら、 ちら、ちら、とこちらを見ているのが分かる。 耳が少し赤い。
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 11

真正面に座ると、ヒナタくんは落ち着かない様子でメニューを開いた。 ぱらぱらとページをめくりながら、誰に言うでもなく小さくつぶやく。 「へええ……こんな風に紅茶って飲むんやあ……」 声は妙にハイテンションなのに、視線は一度もこちらに向かない。 メニューに顔を近づけたまま、独り言のように話し続けている。 ああ、緊張しているんだ。 そんなことが、言葉よりも仕草から伝わってくる。 「ヒナタくん、何頼む?」 そう声をかけると、やっと顔を上げた。 「うーん……コーヒーかなあ」 メニューの同じ場所を指でなぞりながら、真剣な顔で悩んでいる。 「アメリカンコーヒーと……ブレンドコーヒー……どっちがいいかなあ」 その迷い方が、なんだか可笑しい。 たった二つの選択肢なのに、まるで人生の決断みたいに考えている。 「アメリカンの方は、薄めであっさりしてるみたいだよ」 そう言うと、ヒナタくんは「ふーん」と小さく頷いたあと、 「苦味ある方が好きやな」と、あっさりブレンドコーヒーを選んだ。 「ケーキセットにしないの?」 私が聞くと、ヒナタくんは少し困ったように笑う。 「いや、俺そんな甘いもん食べへんから」 そう言ったあと、少しだけ間を置いて、 「でも紗月ちゃん、ケーキ2個食べたいなら俺セット頼むよ」と、さらっと言う。 「いやいや!そんな大食いじゃないから!」 思わず笑って突っ込むと、ヒナタくんもつられて笑った。 さっきまで張り詰めていた空気が、ふっと緩む。 やっと、カフェの時間らしい空気になった。 私は紅茶とオレンジのショートケーキ。 ヒナタくんはブレンドコーヒー。 しばらくして運ばれてきたコーヒーを見て、ヒナタくんの動きがぴたりと止まった。 目の前に置かれたのは、カップだけじゃなく、小さなポット。 それを見つめる顔が、少し固まっている。 ……あ、これ。 きっと、ポットで自分で注ぐタイプのコーヒー、初めてなんだ。 そんなことが、すぐに分かるくらい表情に出ていた。 カップにそっとコーヒーを注ぎながら、どこか慎重な動き。 その姿があまりにもぎこちなくて、思わず笑ってしまいそうになる。 ほんとに、表情に出やすい人だなあ。 しばらく、静かな時間が流れる。
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 12

ヒナタくんはさっきから、どこか落ち着かない。フォークを持つ手が少し早く動いたり、メニューを意味もなく眺めたり、視線があちこちに泳いでいる。そのせいか、会話は思ったほど弾まないまま、気づけばお互いの皿は空になっていた。テーブルの上には、食べ終わったケーキの皿とコーヒーカップ。さっきまで漂っていた甘い匂いだけが、静かに残っている。沈黙が少し長くなったころ、ヒナタくんがぽつりと言った。「……なんかトイレ」少し困ったような顔で立ち上がりかける。「あ、外出てすぐのところにあるから、先行ってきたら?」そう言うと、なぜかヒナタくんは急にそわそわし出した。視線が泳いで、落ち着かない様子で椅子に座り直す。「いや、俺はいいから。紗月ちゃん行ってきなよ」どこか余裕のない言い方だった。……なんで?少し不思議に思いながら、私は首を傾げる。「いや、じゃあもう出ようか」そう言うと、ヒナタくんは「うん」とだけ短く答えた。それから、なんとなく気まずい空気のままレジへ向かう。……年下だし、ここは割り勘かな。そう思って財布を出そうとした瞬間だった。ヒナタくんが、当たり前のような顔で二人分の会計を済ませてしまった。「あ、いくらだった?」思わず聞くと、「あ、いいよいいよ」軽く手を振って、あっさりそう言う。私が財布を出しかけても、ヒナタくんはそれ以上何も言わせないような、少しクールな顔で会計を終えてしまった。……え、普通に払うんだ。さっきまでそわそわしていたのに、こういうところは妙にスマートだ。店を出たあと、ヒナタくんは「トイレ行ってくる」と言って奥へ向かった。私は入口の近くでぼんやり待つ。けれど、なかなか戻ってこない。スマホを見たり、店内を眺めたりしているうちに、気づけば十分くらい経っていた。ようやくヒナタくんが出てきた。少し気まずそうな顔をしている。「あー……ちょっとお腹壊した」苦笑いしながらそう言った。「あ、大丈夫?」「うん、大丈夫」そう答えたあと、少し間を置いてからヒナタくんが言う。「あのさ、タバコ吸っていい?」「この建物の七階に喫煙室あるらしいよ」スマホで調べてそう言うと、二人でエレベーターに乗った。七階の喫煙室は、ガラス張りで小さな部屋だった。中にはスーツ姿の人や、スマホを見ながら煙を吐いている人が何人かいる。ヒ
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 13

喫煙室から出てきた彼は、さっきまでの落ち着かなさが嘘みたいに、どこかすっきりした顔をしていた。 肩の力が抜けて、いつもの彼の雰囲気に戻っている。 「お待たせ!」 そう言って小走りに戻ってくる。 時計を見ると、ほんの三分くらい。 思ったよりずっと早い。 「早かったね!」 そう言うと、彼は少し照れたように笑って、 「うん〜ありがとねんっ」 と、いつもの軽い調子で返してきた。 その声音がさっきより明るくて、なんだかほっとする。 慣れない場所で、少し落ち着かなかったのかな。 そう思うと、さっきのそわそわしていた様子も、なんだか可愛く感じてしまう。 「次どこ行こっか?」 私がそう聞くと、彼は少し考えるように視線を泳がせてから、 「ゲーセンとかどうかな?」と言った。 ゲーセン? 思わず頭の中でその言葉が反響する。 高校生ぶりかもしれない。 なんだか急に、時間が少し巻き戻ったような気持ちになる。 「俺、ゲーセンめちゃ得意なんよな」 彼はちょっと得意げな顔でそう言った。 「へえ〜!私下手だから羨ましい」 私たちは歩いてすぐのゲームセンターへ向かって、ゆっくり歩き出した。 店内に入ると、彼はゲーム機が並ぶフロアをぐるりと見渡してから、ふと私の方を見た。 「なんか欲しいのある?」 と言った。 「……え」 一瞬、言葉が止まる。 そんなこと聞かれると思っていなかったから、胸がふわっと跳ねた。 ゲーセンデートなんて、初めてかもしれない。 少し照れながら、棚に並んだぬいぐるみの中から一つを指さす。 「このキャラすき」 そう言うと、彼はすぐに顔を明るくして、 「よっしゃ!絶対とるぜぃ!」 と、軽く腕をまくるような仕草をした。 機械の前に立つと、さっきまでのゆるい雰囲気とは少し違って、表情が真剣になる。 100円玉を入れる音が、カラン、と小さく響いた。 アームがゆっくり動き、ぬいぐるみに近づく。 私はその横に立ちながら、なんとなく彼の横顔を見つめていた。 集中しているときの表情って、どうしてこんなに格好よく見えるんだろう。 「もうちょい!」 彼が小さく呟く。 何度か挑戦して、気づけば三千円くらい使っていた。 アームは惜しいところ
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 14

ゲーム機のアームが、最後のひと押しのようにぬいぐるみをつついた瞬間だった。 ふわり、と持ち上がっていたぬいぐるみがバランスを崩し、そのまま ポトリ と取り出し口に落ちる。 「お!おおっ…!」 隣で見ていたヒナタくんの顔が、ぱあっと子どものように明るくなった。 さっきまで真剣な顔でコントローラーを握っていたのに、その瞬間だけ、緊張がほどけたみたいに表情がゆるむ。 取り出し口に手を入れて、ぬいぐるみを持ち上げる。 「とれたー!」 思わず二人で同時に声をあげてしまった。 ゲームセンターの騒がしい音の中なのに、その瞬間だけ、そこだけ小さな世界ができたみたいだった。 ヒナタくんはぬいぐるみを手に持ったまま、少し得意そうに笑っている。 それから、まるで当たり前のことみたいに私の方へ差し出した。 「はい!あげるー」 にこにこした顔のまま、ぽん、と私の手の中にぬいぐるみを乗せてくる。 その無邪気な仕草に、胸がきゅっと締めつけられた。 ……可愛い。 そして、それ以上に。 さっきまで真剣な顔で何度も挑戦していた姿を思い出して、胸の奥がじんわり温かくなる。 私のために、一生懸命ぬいぐるみを取ろうとしてくれていたんだ。 「ありがとう。めちゃめちゃ嬉しい…」 ぬいぐるみを抱きしめながら言うと、 「俺も紗月ちゃんが喜んでくれて嬉しい」 ヒナタくんは、当たり前みたいにそう言った。 その言葉を聞いた瞬間、また胸がきゅんと鳴る。 ヒナタくんは、何に対しても一生懸命だ。 それに、私ともきちんと向き合おうとしてくれる。 最初に会ったときは、もっと軽い人なのかなと思っていた。 でも、話して、時間を過ごして、少しずつ内面を知っていくうちに気づく。 この人、すごく…うぶというか、誠実なんだ。 だからこそ、気づけばどんどん好きになっていた。 そして、今までどこかで傷ついていた心が、少しずつやわらかくほぐれていくのを感じていた。 胸の奥に溜まっていた気持ちが、ふとあふれる。 「あのさ…ヒナタくん。ありがとうね」 自分でも驚くくらい素直な声が出た。 「もっと早く出会いたかった」 言った瞬間、少し恥ずかしくなって目をそらす。 でもヒナタくんは、困った顔も照れた顔もせず、 ただ
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 15

部屋の電気を少し落として、ベッドにごろんと寝転がる。 天井をぼんやり見つめながら、今日の出来事を一つひとつ思い返していた。 「楽しかったなぁ…」 思わず小さくつぶやく。 胸の奥が、ふわっとあたたかい。 こんなに満たされた気持ちになるのは、いつぶりだろう。 みおんに出会ってからというもの、ずっと恋愛の傷を引きずっていた。 何をしていても、ふとした瞬間に思い出してしまう。 楽しいはずの時間の途中でも、急に胸が沈んでしまうことがあった。 恋愛で空いた穴を、また別の恋愛で埋めようとして。 うまくいかなくて、また傷ついて。 そのたびに、少しずつ心がすり減っていくような感覚だった。 でも今日は違う。 胸の奥が、静かに澄んでいる。 ——次こそは。 そんなふうに思えた。 ヒナタくんは、今まで出会ってきた男性たちとはどこか違う。 明るくて、素直で、何より私に対して一生懸命だ。 私を傷つけるようなことは、きっとしない人だと思う。 ちゃんと向き合おうとしてくれる。 ヒナタくんの隣にいたら、もしかしたら私は、本当に幸せになれるのかもしれない。 そんなことを考えていると、自然と口元がゆるんでしまう。 気づけば、ひとりでニヤニヤしていた。 そのとき、スマホが震える。 画面を開くと、ヒナタくんからのLINEだった。 「今日はありがとうね!!!紗月ちゃん可愛かった。 無事帰れたかな?」 その文字を見た瞬間、胸がきゅっと甘くなる。 ……ほんとに、幸せすぎる。 さっきまで一緒にいたのに、もう恋しくなっている自分に少し驚く。 私、本気でヒナタくんのこと好きかもしれない。 スマホをぎゅっと握りながら、メッセージを打つ。 「ヒナタくんの声聞きたい」 送った直後。 すぐに着信画面が表示された。 一瞬、息を止める。 ドキドキが急に速くなる。 胸の鼓動を落ち着かせるように、一呼吸おいてから電話に出た。 「もしもし」 すると、電話の向こうから明るい声が飛び込んできた。 「もっしもーし!」 相変わらず元気な声に、思わず笑ってしまう。 「今日はありがとうね」 そう言うと、「こちらこそ!俺もマジで楽しかった!」 少し興奮したような声が返ってくる。
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 16

「北海道旅行に友達と行ってきますっ!」ヒナタくんから送られてきたそのメッセージには、いつものように明るい絵文字がついていた。画面を見ながら、私は自然と笑ってしまう。「いいなぁ、北海道。楽しんできてね!」そんなやり取りをして、その日は終わった。その頃の私たちは、毎日のようにLINEをしていた。朝の「おはよう」から始まり、仕事の合間のちょっとした日常報告。今日食べたもの、見つけた面白い動画、仕事の愚痴、くだらない冗談。特別なことは何もない。でも、その何気ない会話が、私にはとても幸せだった。ラブラブ、という言葉がしっくりくるくらい、穏やかで、あたたかい時間が続いていた。だから——その日を境に、LINEが止まるなんて思いもしなかった。一日目。「旅行で忙しいのかな」そう思って、私は特に気にしなかった。二日目。スマホを何度も確認してしまう。通知は来ない。でも、インスタグラムのストーリーは更新されていた。雪の残る街並み。湯気の立つ味噌ラーメンの写真。“北海道ラーメン最高”ヒナタくんは、ラーメンが好きだと言っていた。その言葉を思い出して、少し胸があたたかくなる。「楽しんでるんだな」そう思うと同時に、胸の奥が少しだけざわついた。三日目。ストーリーがまた更新される。ホテルの部屋で、仲間と笑っている写真。その上に一言。「暇」……暇?思わず画面を見つめたまま、動けなくなる。暇なら、どうしてLINEは来ないの?え……?私、なにかしちゃった……?胸の奥に、冷たいものが落ちてくる。久しぶりに、あの感覚が蘇った。——突き落とされるような感覚。心臓の奥が、ぎゅっと掴まれる。四日目。朝からずっと、落ち着かない。スマホを開いては閉じ、また開いて、通知がないことを確認する。頭の中で、ぐるぐると考えが回り続ける。もしかして、何か気に障ること言った?重かった?めんどくさくなった?それとも——今まで好きだと言って、私を裏切ってきた男たちの顔が浮かぶ。あのときもそうだった。優しくて、「好きだよ」と言ってくれて、安心した頃に突然離れていく。ヒナタくんも、もしかして……。私の気持ちを、弄んでただけなの?胸の奥が、じわじわと痛くなる。どうして私は、こんなに恋愛がうまくいかないんだろう。仕事を
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 17

スマホは、ベッドの上でずっと震え続けていた。画面には「ヒナタくん」の名前。何度も、何度も、同じ名前が表示される。でも——私は出なかった。今このまま電話に出たら、きっといらないことを言ってしまう。胸の中がぐちゃぐちゃで、言葉を選べる自信がない。怒りなのか、不安なのか、悲しみなのか。自分でもよくわからない感情が、胸の奥で渦巻いている。スマホが震えるたびに、心臓まで揺さぶられるようだった。私はそっとスマホをベッドの端に置き、距離をとる。「……今は無理」小さく呟いて、視線をそらした。しばらくして、ようやく着信が止まる。部屋の中が急に静かになった。その静けさの中で、今度は短い電子音が鳴る。ピロンメッセージの通知だった。恐る恐るスマホを手に取る。画面にはヒナタくんからのLINE。「ごめん!北海道はしゃぎすぎて全然返せてなかった」泣きマークと、謝罪の絵文字がたくさん並んでいる。続けて、「また電話できる時かけて来てほしい!」画面を見つめながら、深く息を吐いた。さっきまでぐちゃぐちゃだった心が、少しだけ落ち着いてくる。……怒りたいわけじゃない。ただ、心配していた。それだけなのに。少し時間をおいて、10分ほど経ってから返信を打つ。「大丈夫だよ!でも心配してた笑」送信ボタンを押した瞬間だった。すぐに、着信画面が表示される。ヒナタくん。今度は、出た。「……もしもし」すると、電話の向こうから大きな声が飛び込んできた。「ごめんなあああ!!楽しすぎてライン返せなかった!」勢いよく謝る声。でも、その言葉を聞いた瞬間。胸の奥に、小さな違和感が生まれる。「……うん」短く返事をする。忙しくて返信できない。それなら、わかる。でも。楽しくて返信できない。その理由が、どうしても引っかかってしまう。だって私なら——楽しいときこそ、共有したくなる。「これ見て」「これ食べた」「めっちゃ美味しい」写真くらい、送ると思う。「旅行から帰ったら100件くらい溜まっててびっくりした」ヒナタくんは笑いながら言う。「そうなんだ…」そう返しながら、胸の中で静かに思う。もしかしたら、この人とは合わないかもしれない。一日ならまだわかる。でも、三日も音信不通になるって……。私はどちらかというと、マメな人が好きだ。急に連
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 18

「またか」 思わず、声にならない声が漏れた。 スマホの画面をぼんやり見つめながら、胸の奥に重たいものが沈んでいく。 また、このパターンだ。 最初はいつも同じ。 勢いよく好意を向けてくる。 「好きだよ」 「紗月ちゃんは特別」 「大事にするから」 そんな甘い言葉をまっすぐに投げてくる。 だから私は、少しずつ心を開いていく。 信じてみようと思う。 でも——私が本気になった頃。 だいたい三ヶ月くらい経つと、 まるで人が変わったみたいに態度が急に冷たくなる。 距離ができて、連絡が減って、気づいたときにはもう前みたいな温度は残っていない。 なんで?なんでなの? 胸の奥で、何度も同じ言葉がぐるぐる回る。 私が悪いの? 人を本気で好きになることって、そんなに悪いことなの? スマホを握ったまま、天井を見上げる。 「……またか」 ここまでくると、悲しみというよりどこか諦めに近い気持ちだった。 信じようとして、裏切られて。 また信じて、また裏切られて。 その繰り返し。 気づけば、人間不信はどんどん強くなっていく。 男性ってみんな、こんなにも共通しているものなのだろうか。 手に入った瞬間に、価値がなくなる。 そんなふうに感じるものなの? 恋愛って、なんなんだろう。 胸の奥が、ずしんと重い。 ……もう疲れた。 気づけば、不安がピークに達していた。 考えたくないのに、 嫌な想像ばかりが頭に浮かぶ。 その衝動のまま、私はInstagramを開いた。 ヒナタくんのアカウント。 フォロワー欄を、無意識にスクロールしていく。 やめればいいのに。 でも、手は止まらない。 指先が画面を滑り続ける。 そして——「ん?」ふと、指が止まった。 自撮りのアイコン。 可愛い女の子。 なんとなくタップする。 プロフィール画面が開く。 北海道のコンカフェキャスト。 胸の奥が、ドクンと鳴る。 もう一度ヒナタくんのフォロー欄を見る。 ……一人じゃない。 同じ店のキャストを、何人もフォローしている。 え……指先が、少し震える。 その女の子の固定ストーリーを開く。 画面に映るのは、店内の写真。 ショットグラスが並
Read more

【第四章】年下の可愛い系チャラ男 19

「ヒナタくん、電話できる?」メッセージを送ると、すぐに返信が来た。「18:30〜19:30までのどこかのタイミングで出来ると思う!」その文字を見たとき、胸の奥で小さく息をついた。LINEでは攻めるようなことは言いたくなかった。文字にすると、どうしても感情が強く出てしまう気がしたから。だから、できるだけ冷静に。できるだけ普通に。そう自分に言い聞かせる。でも、心の中はまったく違った。胸の奥には、裏切られたような気持ちと、どうしようもない絶望感が渦巻いている。息をするだけでも、胸の奥がぎゅっと痛い。今にも崩れてしまいそうだった。それでも——もしかしたら違うかもしれない。誤解かもしれない。そう思いたかった。ほんの少しの希望にすがるように、私は「話す機会」を待っていた。スマホを握ったまま、時間だけが過ぎていく。18時を過ぎて、19時を過ぎて。画面は、静かなままだった。そしてようやく、着信が来たのは 19時24分。「ごめん!6分くらいしか話せない」電話に出た瞬間、そう言われた。胸の奥が、じんわり冷たくなる。……遅いよ。そして、6分。私との電話って、そんなに億劫なの?喉の奥に言葉が詰まる。でも、それを飲み込んで言った。「うん…大丈夫だよ」声が少し震えていた。それでも、なんとか平静を装う。「……あのさ、北海道で何してたの」するとヒナタくんは、軽い調子で答える。「え、仲間とラーメン食べたりドライブしたり…それくらいかなあ」その声を聞いて、彼も何かを察したのか、少しトーンが落ちた。私は一呼吸おいてから、
Read more
PREV
1
...
5678910
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status