本当に美紀のことが心配で仕方がなかったのだろう。 考えてみれば、昨日圭吾は会社を休んでまで美紀を探したのだ。そんな彼が、娘のことを思っていないはずがない。「美紀、ほら、先生にご挨拶して」「……」 昨日父親に嫌と言うほどどやされたので、文句こそ口にしないが、美紀にとってここで帝太郎に挨拶をすることは完全なる敗北を意味しているのだろう。 二枚貝のように口をつぐんで、かたちばかりの抵抗を試みている様子だ。「美紀!」 その態度に、圭吾が声を荒げるのを、帝太郎が片手で制した。それから小さく首を横に振って、彼女を怒らないで下さいと言外に含ませる。「美紀ちゃんのことはお任せ下さい。僕たちが責任を持ってお預かり致します」 そう言ってにっこり微笑むと、部屋の戸を開け、圭吾にやんわりと退出を促す。「……それではお願いします……」 どこか不安げな表情で、スーツ姿が『つくしんぼクラブ』を出て行く。 後には一口も口をつけられなかったコーヒーが残された。「さ、美紀ちゃん、あっちの部屋に行こ?」 圭吾が出て行ったのを確認すると、おいでおいでをしてみんなが遊ぶプレイルームへと誘う帝太郎。 その言葉が聞こえているのかいないのか、無言で机の上を見詰める美紀に「それともココア飲んでからにする?」 のほほんとした口調でそう問いかける。 途端、「あたし、別に誰かにお世話してもらわなくても平気だもん!」 吐き捨てるように美紀が叫んだ。 父親が居なくなったことで、思いのたけをぶつけられるようになったらしい。 その声に、子供たちと楽しそうに遊んでいた菜奈子と玉郎が、一瞬ぎょっとしたように動きを止める。 大丈夫だよ、というニュアンスをこめて二人に微笑むと、帝太郎は部屋の戸を再び閉めた。(この子はこう言う所も君にそっくりだね……) 自分の知る子と言動がそっくりな美紀。扱いは
Last Updated : 2026-05-08 Read more