それで何か言う奴がいたら、「それがどうした?」と胸を張って言い返してやろう。 自分が瑠璃を全力で守ってやればいいだけの話じゃないか。 彼女の目を見ていたら、いつの間にかそんな風に思えるようになっていた。 結局その日、隆親は御霊屋に入ることなくそこを後にした――。「俺がもしも狂っちまったら……その時はお前の手で終わらせてくれ」 隆親二十四の夏――。 瑠璃と隆親が結婚して、四ヶ月ばかり過ぎたころ。 縁側に腰掛けて、二人して井戸から引き上げたばかりのスイカにかぶりついていた時、和真がふと真顔になってそう言った。 一瞬何のことを言っているのか理解出来なかった隆親に、ニヤリと笑って「頼んだぞ」と告げた親友の声が、数十年経った今でも時折蘇る。 その時は「そうなったら一生封じの鬼としてこき使ってやるよ」などと軽口を叩いた隆親だったが、その日がそれから遠からずして訪れてしまうなんて、思いもしなかった。 明るく気さくな性格だった和真が、締め切った薄暗い部屋から出て来なくなり、時折奇声を発するようになったのは、その年の暮れのことだった。 それは日を追う毎に顕著になり、また状態もどんどん悪くなっていく。 そうなると、周囲から和真はもう駄目だと囁き合う声が聞かれるようになり――。 せめて友であるお前の手で終わらせてやれ。 そう詰め寄られたのは、丁度今時分の季節――二月の初旬頃――だったと記憶している。 皆からそう提案された時、隆親は身を引き裂かれるような思いがしたのだ。 断れば、ならば別の者に頼むまでだと吐き捨てられた。 玉封師は鬼を消すことを生業としているわけではない。 鬼を消すというのは、その存在自体を無に帰すということ。 それは、彼らの想いを聞き届け、全てを包み込んで害のない存在へと変えていく、玉封師とは性質を異にしている。 玉封師は封じの玉を使って怨嗟に捕らわれた鬼を縛し、時間をかけてその業を玉
Last Updated : 2026-05-29 Read more