目障りな事に、燈はそれでも医師として成功していた。その成功の裏側は私にめちゃくちゃにされているというのに、それを燈は感じさせない。それがさらに私を苛立たせた。どうやって燈の立場を奪ってやるか、どうやって私を見下していた燈を私の前に跪かせるか、思案を巡らせ、一つ一つ奪ってやるつもりだったのだ。そして。あの日が来た。私の夫である森崎颯太の事故。担ぎ込まれた病院は聖カトリーナ国際医療センター。救急救命医として担当するのは燈の筈だと踏んだ私の予想は的中した。だから私は伝えなかったのだ。颯太の薬品アレルギーを。その事故でさえ、私が誘発した事を。私の思惑通り、とんとん拍子で物事が進んで行き、私は内心、笑いが止まらなかった。私は可哀想な未亡人となり、燈は湊に責められる日々。更に燈は颯太の命を救えなかった事で、メスを置いたって言うじゃない。最高だった。でも、まだまだ、これからだと思った。それからは未亡人として、可哀想な私を演じつつ、湊を誘惑した。湊は燈とは関係が拗れている。だからちょっとお酒を飲ませて、その気にさせるだけで済んだのだ。簡単だった。五年前にその辺の、顔が良いだけのチンピラ男と関係を持って、妊娠した時は肝を冷やしたけれど、それを利用して湊を繋ぎ留めようと思い付き、実行した。そしてあの日、私が仕組んだ毒によって燈が完全に壊れ、流産した。その裏で私は燈の夫を自分の手中に収め、颯太の死を引き合いに出しては、同情を買い、私の元へ繋ぎ留めた。私のどす黒い感情を目にした燈の顔は見ものだった。私が燈の流産を誘発した可能性について、燈は微塵にも疑っていないのが更に滑稽だった。教えてあげないわよ、一生ね! 罪悪感に押し潰されてしまえば良い。そう思っていたのに、燈は立ち上がったのだ。私たちを、私を見下すあの目つきをして。燈が失踪してから、五年。その間、私はそれまでと同じように湊を繋ぎ留めようとしたけれど、何故か湊からは拒否される事が増えた。それが湊の燈に対する執着と後悔ゆえなのだと知った時には、身がよじれるくらいの悔しさだった。湊の家は燈が住んでいたあの頃のまま、保存してあったし、私がそれに手を付ける事は許されなかった。お腹の子供が育って行く事が不都合だった私は燈に飲ませた薬を自ら飲んで流産を誘発した。その時だけは湊も私の傍に居てくれた。この五年、私は湊の家である久
最終更新日 : 2026-01-31 続きを読む