「藤堂先生」俺が部屋に入ると、そこには堤氏が既に居た。「あぁ、久遠先生」藤堂氏はそう言って少し微笑む。「見ての通り、報告を聞いていたところだ」そう言われて堤氏を見る。堤氏は俺に頭を下げ、そして微笑む。俺は藤堂氏の居るベッドに近付き、改めて頭を下げる。「本日はお力を貸して頂き、本当にありがとうございました」一礼すると、藤堂氏が言う。「いや、頭を上げてくれ、久遠先生」そう言われて俺は藤堂氏を見る。藤堂氏は堤氏を見て頷く。堤氏はそれに応えるように頷き、言う。「こちらとしても千堂彰には少々、困っていたところなんですよ、久遠先生」堤氏にそう言われて俺は聞く。「困っていた、というと?」俺がそう聞くと堤氏が苦笑する。「千堂彰は最近、厚生労働省の人間にコンタクトを取り始めていたんです」そう言って堤氏が俺に一枚の紙を差し出す。受け取り、それに目を通す。そこには厚生労働省の役人の名前が数名分、載っていた。「そちらに記載のある役人たちは、つい最近、千堂彰とコンタクトを取った者です」まだ数名、いや、もう数名か。「千堂彰に接触した者たちは、何を持ち掛けられたんですか?」そう聞くと堤氏が藤堂氏を見る。藤堂氏が堤氏に頷いて見せ、堤氏が言う。「認可ですよ」そう言われて俺は驚く。「……それは、あのベンゾジアゼピン系物質で作られたものを、という事ですか?」そう聞くと堤氏が頷く。「そうです」乾いた笑いが込み上げる。不意に扉がノックされる。「はい」藤堂氏が返事をすると扉が開いて、高嶺さんと燈が入って来る。俺は口元を覆い、込み上げて来る吐き気を抑える。◇◇◇藤堂氏の居る特別室に入ると、そこには湊が居た。湊は顔色が悪く、口元を覆っている。「ご挨拶に伺いました、藤堂先生」遼大がそう言う。私は湊が気になり、聞く。「大丈夫?」そう聞くと湊は苦笑する。「あぁ」一体、何を話していたんだろうと思っていると、湊が私に手に持っていた紙を渡す。遼大と共にその紙に目を通す。「これは?」遼大がそう聞くと、湊と一緒に居た男性が言う。「千堂彰が接触を図った厚生労働省の人間のリストです」その紙には数名の人間の名が記されている。私が顔を上げると、その男性が微笑み、言う。「私は厚生労働省の堤と申します」そう言って私に握手を求める。それに応え、握手する。「佐
Última atualização : 2026-06-10 Ler mais