そう聞くと高嶺遼大が言う。「行ってないよ。全然。颯太は来いって言ってたけどな」高嶺遼大はそう言って苦笑いする。(それはそうよね……森崎家の女主人が嫌な顔をするんだもの)そう思うと高嶺遼大もまた、孤独だったのだと分かる。「でもまぁ、こんな事態なんだし、父さんにも話は通してあるからね」そう言う高嶺遼大を見ると、彼の瞳には挑戦的な光が宿っている。「化けの皮を剥がしてやるさ」高嶺遼大はそう言って私を見て微笑む。「だから燈は少し待ってて。情報を仕入れて来るよ」加山良江やくるみの現状は高嶺遼大に一旦、任せて良いだろう。じゃあ私はその間、何をしようか。私が出来る揺さぶりは何だろうと考えて、思い付く。「私は別の角度から探りを入れてみるわね」そう言ってカバンの中から聖カトリーナの特権を示す身分証を出す。それを見た高嶺遼大がクスっと笑う。「燈は七年前の颯太の事を調べるんだな?」そう聞かれて私は頷く。「えぇ、何か見落としてる気がしているの。ずっとそうだった……何かを見落としてる」七年前の颯太の事故後、搬送されて来た颯太を私が担当した。開放骨折、重度の挫創が見られた……思い出すだけで胸が苦しくなる。「大丈夫か?」高嶺遼大にそう聞かれて苦笑いする。「えぇ、大丈夫」私にとってもあの事はPTSDを患っていてもおかしくない状況だった。フラッシュバック、胸の動悸、眩暈を感じる事さえある。それでも私が平静を保っていられたのは、いつも心のどこかにあった“違和感”のお陰だったのだ。「何を見落としているのか、分からないけど、もう一度、カルテを見てみるわ」そう言った私に高嶺遼大が聞く。「俺が居なくて大丈夫か?」そう聞かれて少し笑う。「ダメかもしれないけど、あなたにはあなたのやる事があるもの」そう言って高嶺遼大に寄り掛かる。「何かあったら、連絡入れてくれよ。すぐにすっ飛んでいくから」◇◇◇お気に入りの服を着て、聖カトリーナの湊の居る部屋に行く。ここのところ、湊からの連絡が無くなって、病院も好きに歩くなと言われてしまったから、来ないようにしていたけれど。待っているだけじゃダメなのは分かっている。そして何よりも。燈が何か動き出しているような気がしている。七年前の颯太の事故、その後の燈の処置、そして五年前の燈の流産。全てにおいて私は誰にも疑われる事無く
Last Updated : 2026-02-20 Read more