京介がここまで考えなしに芽生へ情事の痕跡を刻み込むのは、なんだか彼らしくない。だとすれば、そうしなければ耐えられない何かが、京介にあったということだ。 (京ちゃん、昨日……様子がおかしかった……) 先程千崎と対面している京介は〝いつも通り〟に見えたけれど、それは千崎の前だから気を張っているだけかもしれない。 そう思うと、一刻も早く京介の傍へ戻りたいと思った。 *** キスマークの残る首筋を隠したくて、タートルネックのセーターにロングスカートといういでたちでリビングへ戻ると、京介と千崎はまだ同じ位置に立っていた。 芽生がいない間に話が進んでいるのかいないのか……。ただ、二人の間に漂っていた緊張感は、先ほどよりは幾分やわらいでいるように感じられた。「……ごめんなさい、お待たせしました」 ぺこりと頭を下げる芽生に、千崎が「いえ」と短く返す。そんな二人に京介がソファを手で示し、「まぁとりあえず座ろうか」と促した。 芽生は二人の視線に少し身を縮めながら、京介の隣へ腰を下ろす。 芽生が座ると同時、どこからともなく殿様が現れて、芽生のひざの上に陣取った。芽生は、殿様のお陰で少しだけ勇気をもらえた気がして、沈黙を破るように正面へ座る千崎に向けて口を開く。 「……あ、あのっ、千崎さん。さっきたまたま聞いちゃったんです。破門……とか絶縁とか……一体どういう意味ですか?」 芽生の真っすぐな視線を受けた千崎が、だが自分では語りたくないみたいに京介へと視線を送った。 京介は一度だけ短く息を吐くと、ゆっくりと芽生の方へ顔を向ける。「……簡単に言やぁ、破門は謹慎処分、絶縁は極道の世界から追放されるってことだ」「……え……? でも京ちゃん、絶縁って……」 確か、千崎は〝破門じゃなくて絶縁〟と言っていたはずだ。 芽生が眉根を寄せて京介を見つめたら、京介がフッと表情を緩める。 「ああ、そうだ。俺は晴れてお前と同じ堅気の人間ってこった」 なんでもないことみたいにニッと口角を上げてみせる京介に、芽生はズキンと胸の奥が痛くなる。 京介はさも平気だという風を装っているけれど、平気じゃないから昨夜、様子がおかしかったんだと……今更のように得心した。「京ちゃん……」 京介が泣い
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