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『組カノ』結婚式裏話〜それぞれの祝福〜【②桐生百合香】

 今日は相良さんと芽生ちゃんの結婚披露宴。 このメンバーで唯一〝私だけが堅気〟ということで、二人から招待状が届いた。 本当は、ここにいるみんなを呼びたいんだろうな? と思う。 だけど裏の世界と決別した相良さんに、そんなことは出来ないし、『雄相会』の面々もそれは心得ている。 千崎雄二に、「俺たちの分まで祝ってやってきてくれ」と頼まれた時は、喉元まで出かかった『一人で行けって言うの?』という言葉を寸前のところでグッと飲み込んでにっこり笑顔で「任せて」と言ってしまっていた。 いつもそう。 私は……彼が極道の世界と堅気の世界を天秤に掛けて、堅気の私ではなく、組の息がかかった雪絵さんを結婚相手に選んだ時から、大好きな雄ちゃんに、何一つ本音を言えない女になってしまった。 ――本当は雄ちゃんと結婚したい! そう言いたかったくせに、『日陰の女でいいからそばに居させて?』だなんて都合のいい女を演じて……。 結果的に雄ちゃんの心をいつまでも縛り付けて、雪絵の心を壊す悪女になってしまった。*** 出がけに、『雄相会』のみんなが私に向かって深々と頭を下げてきた。「百合香さん……俺たちの分まで、二人の門出をしっかり見てきてください」 その言葉に、何だか胸が詰まった。 託されたご祝儀袋は、私一人が参列するには多すぎる額面のお金が入っている。きっと、相良さんと芽生ちゃんには、〝みんなからの〟お祝いだって分かるはず。 本来ならみんなの想いを届けるべきなのは『姐さん』と呼ばれる雪絵さんであって、私じゃない。 でも、雪絵さんは私と違って正式な『雄相会』会長・千崎雄二の妻だから……だから今日はこちらの世界とは決別して
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『組カノ』結婚式裏話〜それぞれの祝福〜【③栄蔵&奈央子(花嫁控室)】

 ノックのあと、「はーい」という声を聞いて、わたしは【花嫁控室】のドアを静かに開けた。 すぐそばに、芽生の結婚を機にこちらの施設へ転院してもらった奈央子さんがいる。 外には社の者も来賓もいる。せめてこの部屋でくらいは肩の力を抜きたいので、奈央子さんが入ったあと、私はぴっちりと扉を閉ざした。「おじいちゃん、おばあちゃん」 鏡越しにわたしたちの姿を確認したんだろう。真白のドレスに身を包んだ芽生が笑顔で振り向いた。 その様に、奈央子さんと二人して息を呑む。綺麗だ。 それに……。 やはり、目元の下がり方も笑ったときのえくぼも、栄一郎にそっくりだ。栄一郎を産んですぐに亡くなった最愛の妻、澪の面影までもが重なって見えて、私は思わず吐息を落とす。 それと同時、「田畑さん、前にもお話ししましたけどね。私、やっぱり爪の形と口元のラインはどう見ても沙奈だと思うの」 隣にいた奈央子さんが、手にした杖で床をトントンしながらつぶやいた。「いや、栄一郎だ」「いいえ、沙奈」「栄一郎」「沙奈」「え、えっと……」 芽生が困って肩をすくめたので、わたしは咳払いで話題を変えた。 いかん、いかん、せっかくの孫の晴れの日に、ケチをつけるところだった。 奈央子さんと顔を見合わせて〝ひとまず休戦〟と示し合わせると、わたしは芽生ににっこり微笑みかけた。「……ところで、芽生。おじいちゃん、今日は芽生に結婚生活の心得を持ってきたんだよ。十箇条だ」 言いながら、懐から茶封筒を取り出して中身を芽生へ差し出す。昨夜したためたばかりの金言集だ。『第三条:喧嘩はその日のうちに解決せよ』など、我ながら隙がない出来になっていると自負している。「まあ、奇遇ですね! 私も心得を作ってきたの。五箇条だけど厳選版よ、芽生ちゃん」 奈央子さんは手が不自由だが、最近は左手で結構綺麗な字を描けるようになったと言っていた。それもこれも可愛い孫
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『組カノ』結婚式裏話〜それぞれの祝福〜【④葛西了道】

 相良と田畑んトコの孫娘の結婚披露宴を明日に控えた夜、俺は田畑栄蔵を屋敷へ呼び寄せた。「……二人の門出に俺みたいなのがしゃしゃり出て水を差すわけにゃいかねぇ。すまねぇがお前からこれを渡してやってくれねぇか」 言って、俺は用意していた桐箱を田畑の方へスッと差し出す。中には、金細工師に特注させた純金の盃が二つ、一対で収められていた。 縁には松竹梅と鶴亀の意匠を彫らせた。大会社の重役としても見栄えが立つ品だが――俺にとっては裏の契りを思わせる象徴でもある。「盃、ですか」 蓋を開けた田畑が、わずかに目を細める。「筋を通した契りってぇのは、裏でも表でも変わらねぇだろ。……あの二人にゃ相応しい」 そう言って、俺は盃を託した。例え気に入らなかったとしても金としての価値もある。悪くねぇ祝いの品だろ? と思った。 その折だ。 玄関先で慌ただしい気配がした。 使用人が取り次いでいたのは、千崎の女房の雪絵だ。 こちらを不安げに見つめる娘と手を繋ぎ、どこか全てを諦めた顔をして立っていた。 田畑が怪訝そうにこちらへ視線を投げてきたが、俺は軽く首を振った。「気にすんな。祝いの品、頼んだぞ?」 それ以上は語らなかったが、そこは心得たもの。田畑も何も言わずに帰ってくれた。「すみません、来客中だったのですね」 深々と頭を下げた雪絵のまとう影は深かった。 ――今日が目の前の女の誕生日であることを、俺は知っていた。 そういうのを知らねぇ間柄じゃない相手の娘だからこそ、千崎に雪絵を娶るように勧めたのだ。 千崎と所帯を持たせりゃー、俺を守って死なせちまった男の娘も幸せになれると思ってたんだがな。 どうやら俺の見込み違いだったらしい。*** 相良と田畑の孫娘の披露宴当日、俺は千崎を呼び出した。 畳敷の広間へ座らせて、真正面から奴を見据える。「…&hell
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