「司令官。私と瓜二つの初級ロボットを一台用意してください。十日後、私の代わりに結婚式に出席させるために」それは、高度に暗号化された極秘回線による通話だった。電話の向こうで、司令官の声がわずかに戸惑ったように響く。「どうした?何か心境の変化でもあったのか?」「もう、どうでもよくなったんです。司令官、『国家AIロボット開発計画』への参加を決めました」司令官の声色が厳粛なものに変わる。「この計画は国家最高機密だ。世間から隔絶された基地で生活し、生涯、外部との連絡は一切断たれることになる。その覚悟はあるのか?」江原詩音(えはら しおん)は、きっぱりと言い放った。「あります」「ならば歓迎しよう。君が参加してくれれば、研究の進捗は劇的に加速するだろう。何か条件はあるか?可能な限り叶えよう」「私専用の万能型ロボットを一体いただきたいのです。初期プログラムは私自身の手で書き上げます」「それくらいなら容易いが……理由を聞いても?」詩音は重く息を吐き出し、静かに答えた。「ロボットだけが、永遠に心変わりしないからです」……通話を終えた詩音は、鏡に映る純白のウェディングドレスをじっと見つめた。今日は、婚約者の藤堂樹(とうどう いつき)に連れられ、ドレスの試着に来ていたのだ。だが今この瞬間、彼女の夫となるべき男は、カーテンの向こうで花嫁姿を心待ちにしているわけではなかった。彼はすぐ隣の試着室にいる。それも、別の女と一緒に。壁一枚隔てた隣の個室から、衣擦れの音が漏れ聞こえてくる。女の声は、とろけるような猫なで声だった。「私に会いたかった?」男の声はすでに荒い息遣い混じりで、欲望に低くかれている。「ああ……結婚式の準備で忙しくて、ずっと会えなかったからな」「もう、声が大きいわよ。隣に詩音がいるんだから」「大丈夫だ。あいつの補聴器なら俺が持ってる。補聴器がなけりゃ、あいつには何も聞こえないさ……」続いて聞こえてきたのは、生々しい口づけの音と、衣服がこすれ合う音。さらには、耳を塞ぎたくなるような卑猥な音が響き始めた。相手の女は、赤の他人ではない。詩音の双子の姉――江原玲奈(えはら れな)だ。二人の顔立ちは瓜二つだが、性格は全く違っていた。姉は気が強く、欲しいものは何でも手に入れないと気が済まない。詩音
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