そして、その上に添えられた一通の封筒。「昨日の『ビジネス』に関する、感謝と謝罪の印とのことです」「……捨てろ」 千隼が低く吐き捨てた。「そのゴミを今すぐ持ち帰れ。でなければ、この場で燃やすぞ」「千隼、待って」 私は千隼の背中から顔を出した。 ここで騒ぎを起こせば、また注目を集めてしまう。それに、観音がただの嫌がらせでこんなことをするはずがない。 そこには必ず、次の「手」が隠されている。「……受け取るわ」「お嬢!」「いいから。……中身を確認するだけよ」 私は千隼を制し、封筒を受け取った。 花束は、千隼がひったくるように奪い取った。彼が握りしめた茎が、メキメキと音を立てて折れていく。 封を開ける。 中に入っていたのは、招待状だった。 今週末。都内の会員制レストランでのディナーへの招待。 そして、手書きのメッセージ。『チェックメイトだ、愛しいライバル』 背筋がぞわりとした。 ライバル。 彼は私を、敵対組織の娘としてではなく、対等な「プレイヤー」として認めたのだ。 そして、その認識には、粘着質な執着が含まれている。 昨日、千隼が感じ取った「別の種類の化け物」の気配が、この文字から漂ってくるようだった。「……なんて書いてあるんです」 千隼が、私の手元を覗き込む。 メッセージを読んだ瞬間、彼の手の中で、薔薇の花束が握り潰された。 真紅の花弁が、血飛沫のようにアスファルトに散らばる。「……殺す」 千隼の声は、これ以上ないほど静かで、だからこそ恐ろしかった。「あいつ、死にたいらしいな。……俺の目の前で、俺の女に手を出そうなんて」「千隼、落ち着いて」「落ち着いていられますか! これは宣戦布告だ! あいつは貴女を、ただの交渉相手として見
Last Updated : 2026-02-16 Read more