◇ 屋敷に着くなり、私は千隼に手首を掴まれ、自室へと引きずり込まれた。 バタンッ! 扉が乱暴に閉められ、鍵がかかる音が響く。 広い寝室に、二人きり。「ち、千隼……?」 振り返った千隼の顔を見て、私は息を呑んだ。 余裕なんて欠片もない。 髪は乱れ、瞳は血走っている。ネクタイを乱暴に緩めながら、彼は私を追い詰めるように距離を詰めてきた。「消毒が必要です」「……は?」「あいつに触れられた場所も、あいつの声を聞いた耳も、あいつを見て笑った目も。……全部、俺のもので上書きしないと気が済まない」 ドンッ、と背中が壁に当たった。 逃げ場はない。 千隼の両腕が私の顔の横に突き立てられ、私を檻の中に閉じ込める。 至近距離で見る彼の瞳は、暗く、深く、私を飲み込もうとしていた。「千隼、落ち着いて……んっ!?」 言葉は、唇によって塞がれた。 キスなんて生易しいものじゃない。 唇を噛み破るような、捕食。 舌が強引にねじ込まれ、口内を荒らし回る。息ができない。彼の熱い唾液と、私の味が混ざり合い、頭が真っ白になる。「ん、あ……っふ……!」 抵抗しようと胸を押したが、びくともしない。 彼は私の両手首を片手でまとめ上げ、頭上へ押し付けた。 無防備になった首筋に、彼の顔が埋められる。「あいつが触れたのは、ここですか」 手の甲。 彼が唇を押し付け、吸い付く。 ちゅ、じゅる……という水音が、静かな部屋にいやらしく響く。「い、や……変な音、させないで……」「嫌? カフェではあんなに無防備に触らせていたのに?」 千隼の声には、棘があった。 彼は私の手の甲を強く吸い上げ、さら
Last Updated : 2026-02-13 Read more