Semua Bab 氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜: Bab 121 - Bab 130

179 Bab

121話

 舞踏会を3日後に控えた昼下がり、ラプティスがふたりの男性を連れて屋敷に来た。男性達は両手に大荷物を持ち、ラプティス本人はいつもの仕事用トランクケースのみを持って涼し気な顔をしている。 ルナは彼らを衣装部屋に案内し、オネストは逃げるようにしてラウルとカミリアを呼びに行く。ふたりはカミリアの部屋でダンスの練習をしていた。「ラウル様、ソニア様。仕立て屋が来ました」 苦虫を噛み潰したような顔でラプティスの到着を報告するオネストに、カミリアは不思議顔をする。「ラプティスは色々うるさい人だからね。オネストの格好が古臭いから、仕立て直したいんだよ」「私はこのままで結構です」 オネストは燕尾服のラペルを軽く引っ張った。その仕草と顔から、絶対に脱がないという意志がひしひしと伝わってくる。「あぁ、オネストはそのままでいいよ。ラプティスはいつもの衣装部屋かな?」「はい」「行こうか」 ラウルにエスコートされ、衣装部屋へ行く。ここに来たばかりの頃はエスコートされるのはあまり好きではなかったが、今は嫌悪などを抱くことはない。人は変わるものだと思いながら、衣装部屋に入る。「あぁ、ソニア様! ご機嫌麗しゅう!」 げっそりとやせ細り、目の下に濃い隈を作ったラプティスが、うっとりした表情でカミリアの正面まで来る。近さとなんとも言えない迫力に、カミリアは気圧され、1歩下がる。「お、お久しぶりです、ラプティスさん」「あぁ、ソニア様にお名前を覚えていただけていたなんて、光栄ですわ!」 ラプティスが更に距離を詰め、カミリアの手を取ると、ラウルは咳払いをした。ラプティスは忌々しげにラウルを睨むと、カミリアの手を離して中央の大きなテーブルの前へ行く。「ソニア様のドレスを3着作ってまいりました。それと、こちらにはソニア様のお身体にぴったりのものをご用意しました」 ラプティスが手で示す壁には、色とりどりのドレスが、何着もかかっていた。ラプティスに気圧されて気づかなかったが、ふたりの男性がドレスのシワ伸ばしをしていた。
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122話

「あぁ、あれは私の手足みたいなものですから、お気になさらず」 カミリアが男性達を見ているのに気づいたのか、ラプティスはカミリアの前に立って笑顔を作った。冷静に彼女の顔を見ると、頬の赤みもなく、肌もガサガサだ。きっと何日も徹夜をしてドレスを作ったのだろう。そう思うと、申し訳なくなる。「ラプティスさん、顔色がよくありませんが大丈夫ですか?」「ソニア様のドレス姿を見れば元気になるので問題ありませんわ」 ラプティスは3着のドレスをテーブルの上に広げて見せた。1着目は花飾りがあしらわれた真っ赤なドレスで、胸元が大きくあいている。スタイルに自信はあるが、肌をこんなに露出するのは、抵抗がある。 2着目は紺色の生地に金の糸で刺繍が施された上品なドレス。よく見ると刺繍は星や月を象っており、フェガリらしいドレスだ。 そして3着目はツートンドレスとなっており、ウエストの大きな赤いリボンを境に、ウエストから上は深みのある赤、スカートの部分は紺色になっていた。「どのドレスもラウル様のご希望で、スリットが入っていますのよ。ラウル様ったら、意外とそういうのがお好きなのね」 いやねぇとひとりで盛り上がるラプティス。カミリアは、何故ラウルがスリット入りにするように言ったのか、察しがついた。ナイフはレッグホルスターに入れて持ち歩くことになっている。万が一のことが起きた時、ナイフをすぐに使えるようにするためだ。「さぁさぁ、ソニア様! お気に召したものを試着なさってください」「では、このドレスを」 カミリアが手にしたのは、3着目のドレスだ。好みだけで言えば2着目が1番気に入っているが、3着目のドレスは両国の国色が入っているので交友パーティにぴったりだと思った。それに、赤を着てみたいという気持ちも、少しだけあった。「まぁ、お目が高い! 早速試着しましょう。ほら、男共は出ていきなさい!」 ラプティスの一言で、男達は衣装部屋から逃げるように出ていく。彼らが出ていくと、ラプティスは笑顔でカミリアに向き直った。
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123話

「さぁ、ソニア様。楽しい楽しい試着の時間ですよ」 どことなく狂気が滲むラプティスの笑みに、カミリアは頬を引きつらせる。(着替えするだけで、なんでこんなに緊張するの……) カミリアはラプティスにドレスを着付けてもらう。その間、妙にそわそわしてしまったが、無事に着替えることができた。「まぁ、素敵ですわ! 鏡をご覧になって!」 ラプティスはカミリアの腕をぐいぐい引っ張り、姿見の前に彼女を立たせた。鏡に写った自分の姿を、カミリアは不思議な気持ちで見つめる。ドレスを着ただけで、どこかの令嬢のように見える。少なくとも、騎士の面影はそこにはない。まるで他人の空似でも見ているような、そんな気分だ。「お気に召しませんの?」 何も言わないカミリアに、ラプティスは不安げに聞く。彼女の顔を見ると、眉尻を下げ、口を一文字にしている。クマや痩けた頬も相まって、余計に可哀想に見えてしまい、カミリアは必死に首を横に振る。「いいえ、そうじゃないんです。こんなに素敵なドレスを着るのは初めてだったので、自分じゃないような気がして……」 カミリアの言葉に、ラプティスの表情はぱぁっと明るくなる。気がつけば距離を縮められ、手を握られていた。「もったいないお言葉です! あぁ、私はなんて幸せ者なんでしょう! ソニア様が望むのなら、私はどんなドレスでも……」 ラプティスのマシンガントークは、ラウルがドアをノックして止めた。ラプティスは忌々しげにドアを睨みつけると、大きなため息をついてドアを開けた。「想像以上によく似合ってるよ、ソニア。とても綺麗だ。こんなに素敵な女性と舞踏会に行けるなんて、夢みたいだ。3日後が待ちきれないよ」 ラウルはカミリアを見るなり、手放しに褒める。ラウルの甘い言葉には慣れたつもりでいたが、ここまで褒められると照れてしまい、どう返していいのか分からなくなる。「ありがとう……」 小声でお礼を言って顔を背けると、ラウルに抱きしめられる。仄かな甘い香りと自分より高い体温に、胸の鼓動がやかましいくらいに高鳴る。
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124話

「本当に綺麗だ……。僕にはもったいないよ」 しみじみと言われ、どう返そうか考えていると、ラプティスのため息が聞こえた。「えぇ、本当に勿体無いです」「厳しいなぁ」 ラウルは苦笑しながらカミリアから離れる。カミリアは内心ラプティスに感謝するが、彼女が何故こんなにもラウルを疎ましく思うのかが理解できない。「他のドレス姿も見ていきたいところですが、そろそろお暇しますわ。ソニア様、着たい服があったらいつでもお声がけくださいね」 ラプティスは猫なで声でカミリアに言うと、トランクケースを抱えて部屋を出た。「嵐のような人ね」「昔からああなんだよ」 ラウルはやれやれと肩をすくめ、苦笑する。口ぶりからしてラプティスとも付き合いが長いのだろう。「ねぇ、ラウル。ラプティスさんはあなたを嫌ってるように見えるけど、何かあったの?」「あぁ、何かあったというか、彼女の勘違いだね」 何がおかしいのか、ラウルはクスクス笑う。「叔父が生きてる頃から彼女にはお世話になっててね。僕が小さい頃、採寸する時に服を脱ぐのを嫌がって、薄手の服の上から測ってもらったことがあったんだ。ラプティスは、僕が裸を見られるのを恥ずかしがってる女の子だと勘違いしてね。張り切ってドレスやワンピースを作ってきてくれたんだけど、納品時に叔父から僕が男だと聞かされ、ショックを受けたんだって」「一生懸命作ったのに着てもらえないのはショックでしょうけど、それであの態度はちょっと……」 カミリアは仕立ててもらったドレスに目をやる。服の知識はほとんどないが、この短期間でこれだけ立派なドレスを3着も作り上げるのは、並々ならぬ努力がいるだろう。 きっとラウルのためにワンピースなどを作った時も、こだわり抜いて作ったはずだ。それが無駄になるのはショックだろうが、それでもラプティスのラウルに対する態度は褒められたものではない。「ラプティスがショックだったのは、服が無駄になったことじゃなくて、僕が男だったことだよ」 思い出し笑いしながら言うラウルに、カミリアの頭の中は疑問符でいっぱいになる。このページを編集する
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125話

「ラプティスは女性向けの服を作るのが大好きでね。これからこんなに可愛い女の子の服をたくさん作れると思ったのに、って、がっかりしたんだよ。今はルナに服を作って発散してるらしいよ」「どおりで私の服を張り切って作ってたわけね……」「そういうこと。さて、僕は仕事に戻るよ。カミリアは着替えたら、少し休むといい。ラプティスといたから疲れたでしょ?」 ラウルはカミリアの髪を1房手に取ると、キスをして部屋を出た。「ある意味、あなたといる方が疲れるんだけど……」 カミリアはキスをされた髪にそっと触れ、ポツリと言った。 舞踏会当日。カミリア達は馬車に揺られながら、フェガリの城へ向かう。その間、ラウルはカミリアに1週間の予定を教えることにした。「本当はもっとはやくに教えるべきだったんだけど、忙しくてこんなギリギリになってしまってすまないね」「忙しかったのはお互い様でしょ?」 カミリアはラウルに優しく微笑みかける。彼女は赤と紺色のドレスに身を包み、髪をアップにまとめている。シンプルな装飾品と薄化粧が、カミリアの魅力を更に引き立てている。「そう言ってくれるとありがたいよ。今日は参加者全員が集まる舞踏会。これは顔合わせみたいなものさ。2日目も舞踏会なんだけど、今日よりも規模が小さいんだ。会場もいくつかに分けて行うそうだよ」「何故分けるの?」「ひとつはフェガリの魅力をシャムス人に知ってもらうため。土地が違えば、特産品も違う。後でフェガリのどこの何が美味しかったって、シャムス人同士で話してくれた方が、フェガリ人が説明するより広まる。他にも色々あるけど、割愛しよう」 今の説明で、交流のためだと理解できた。きっと他にも合理的な理由があるのだろうと、勝手に思い込むことにする。気になりはするが、今はあれこれ聞いて知識を蓄えている場合ではない。
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126話

「3日目はシャムスの貴族の屋敷で晩餐会。ここではシャムス人とフェガリ人が同じ人数集められ、本格的な情報交換をする場となっているんだ。4日目は舞踏会。晩餐会で一緒になった人達は確実にいるだろうね。前日の晩餐会参加者を1組として、3組から4組集めた小さな舞踏会なんだ。5日目はフェガリの貴族の屋敷で晩餐会。6日目は4日目と同じような感じで、7日目はまた全員集めた舞踏会」「なんだか面倒ね」 カミリアはため息をつく。正直、舞踏会と晩餐会が繰り返されるとしか覚えていない。ラウルはそんなカミリアを見て、困ったように笑う。「貴族は面倒なのが好きだから仕方ないね。僕としても、もっとシンプルな方法で仲良くなってほしいんだけど、彼らは疑り深いから」 ラウルの話を聞いて、貴族の考えは性に合わないと、改めて思う。はやく1週間が終わらないかと考えていると、ラウルは真剣な顔をした。自然とカミリアの背筋も伸びる。「国王候補に、アストゥート・ギタレスという男がいるんだけど、この男に気を付けてほしい。彼は外面はいいんだけど、黒い噂が絶えなくてね。特に、欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れると言われてるんだ」「私が思い描いてた貴族像ね、気をつける」「アイツは、そんな生ぬるいモンじゃないよ」 眉間に皺を寄せるラウルに、カミリアは息を呑む。彼がここまで言うのなら、よっぽど悪どい男なのだろう。「分かった、ちゃんと気をつける」「あぁ、是非そうして」 ようやくラウルの表情が和らぎ、カミリアは内心ホッとする。それから城に着くまで、ラウルは舞踏会の作法を教えこんだ。 城に着くと、お揃いのマスカレードマスクをつけて中に入る。舞踏会場へと続く廊下を歩いていると、シャムスの騎士と、青い鎧を着た騎士とすれ違う。青い鎧は、フェガリの騎士なのだろう。彼らはしきりにあちこちを見回し、鎧をガシャガシャいわせている。フェガリの騎士団が心もとないというのは、事実のようだ。
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127話

「ソニア、彼らが気になるのは分かるけど、普通の令嬢は見回り兵を気にしないよ」 ラウルに耳打ちをされ、前を向く。するとラウルは小さく笑い、彼女の肩を抱き寄せる。驚いて見上げると、ラウルは困ったように笑う。「僕達は婚約してることになってるんだから、それらしく振る舞わないと」「そうね、ごめんなさい。緊張しちゃって」 カミリアが身を寄せると、ラウルは満足げに微笑み、彼女の髪を撫でた。少し恥ずかしくもあるが、心地がいい。もう少し撫でてほしいと思ってしまった子供っぽい自分に、呆れ返るのと同時に少し驚いた。あれだけ嫌っていた男という存在に甘えたいと思う日が来るなんて、思ってもみなかった。 舞踏会場に着くとその絢爛豪華さに、目を見張る。まず目に飛び込んでくるのは大きなシャンデリア。そして色とりどりのドレスを着た淑女達。紳士達も立派な装いをしているが、やはり女性達の方が華やかだ。全員がつけている仮面も相まって、知らない世界に迷い込んだ気分だ。 壁際にはオーケストラもいて、優雅な音色を奏でている。「別世界に迷い込んできたみたい」「君も十分、この別世界の住人だよ。まずは挨拶回りをしないとね」 カミリアはラウルの挨拶回りに付き添う。てっきりフェガリ人にしか挨拶をしないのかと思ったが、ラウルはシャムス人にも挨拶をしてもらった。むしろ、シャムス人の割合が多く感じる。「へデン伯爵、ご無沙汰しております」「あぁ、フェガリの若造か。確か、ラウルといったな。仮面をしているというのに、よく私が分かったな」「あなたの気品は、仮面では隠しきれませんよ」「アムゼル夫人、お久しぶりです。男児をお産みになったと聞きました。貴女の子供なら、きっと聡明で美しい青年に育つでしょう」「まぁ、マルティネス公爵ったら。フェガリからでは遠いでしょうけど、良ければうちの子を見にいらして」「えぇ、もちろんです。以前アムゼル夫人がお気に召したワインと、ワインに合うチーズをお持ちしましょう」 こんな調子で、ラウルはシャムスの貴族達と挨拶を交わしていく。カミリアは意外に思いながら、その様子を眺めていた。
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128話

ラウルやサウラから聞いた話から、シャムスとフェガリはもっとギスギスしていると思っていた。こんなににこやかに挨拶ができるのも、ラウルの人徳があるからこそなのだろう。 彼の人たらしもある種の才能で、外交に必要なものだと知る。「ラウル?」 聞き覚えのある声に振り返ると、サウラがいた。黒髪が映える白い仮面をつけていても、風格が滲み出ていた。「あぁ、サウラ。久しぶりだね」 ふたりは穏やかな笑みを浮かべ、握手をする。ラウルの表情は先程の貴族達と話している時よりも柔らかく見える。彼らは本当に親友同士なのだと実感した。「そちらのレディは?」 サウラはカミリアに目を向ける。一瞬、何故そんなことを聞くのかと思ったが、自分とサウラは初対面ということになっているのを思い出した。「彼女は婚約者のソニアだよ。ソニア、こちらはサウラ・ホワード。彼はシャムスの王子で、僕の親友なんだ」「サウラ・ホワードだ、よろしく」「初めまして、ソニアと申します。シャムスの王子様にお会いできて光栄ですわ」 白々しいやり取りに笑いを堪えながら、サウラと握手をする。思えば、サウラに触れるのはこれが初めてだ。「それにしても、お似合いだな」 サウラは微笑ましそうにふたりを見る。気恥ずかしさに否定しようとすると、ラウルに肩を抱かれて言葉が引っ込んでしまった。「婚約者ですから」(後で殴ってもいいかしら?) 爽やかな笑顔でカミリアを自慢するラウルを見上げ、内心ため息をつく。いくら任務でも、サウラの前で婚約者を名乗ったり、仲がいいフリをするのは恥ずかしい。「羨ましい限りだ。俺はまだ挨拶回りがあるから、この辺で失礼するよ」 そう言って立ち去るサウラは、どこか寂しそうに見えた。「サウラが気になる?」 耳元で囁かれ、肩を揺らす。ラウルを見上げると、彼はイタズラっぽく笑っている。「サウラは禁断の恋をしていてね。その恋を叶えるためにも、僕らはシャムスとフェガリを変えるのさ」 ふと、客間でのふたりのやり取りを思い出す。確かにあの時、サウラにも想い人がいるような口ぶりだった。好きな人がいるのはその時に察してはいたが、まさか禁断の恋をしているとは思いもしなかった。
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129話

 サウラの恋を叶えるためには、どう変えるのか聞こうとすると、ワルツが流れ始めた。辺りを見ると、紳士は淑女をダンスに誘っている。「愛しい人、僕と踊っていただけませんか?」 ラウルは微笑を浮かべ、手を差し伸べている。優雅な笑顔と仕草に不覚にもときめいてしまい、断りたくなったが、今の自分はラウルの婚約者だと言い聞かせ、彼の手を取った。(ドキッとしたのは、この場の空気のせい) ラウルにときめいたわけではないと、無理やり思い込みながら、ラウルの肩に手を添える。 ゆったりとした音楽に合わせ、ステップを踏む。馬車の中では上手く踊れるか心配だったが、ラウルに身を委ね、リラックスして踊れている自分がいた。あちこちから賞賛の声が聞こえ、嬉しさと照れくささが入り交じる。「注目されてるね、僕達」「あなたが私を踊らせるのが上手いから」「カミリアが魅力的だからだよ。他の男に取られないように、気をつけなくちゃ」 不意に耳元で囁かれ、胸が高鳴る。ときめきを、雰囲気のせいにできなくなってしまった。 曲が終わると、ふたりは飲み物を取りに食事が用意されている部屋へ向かう。その途中、誰かがラウルを呼び止めた。「やぁ、ラウル。さっきのダンス、素晴らしかったよ」 焦げ茶色の髪をオールバックにした青年が、にこやかに話しかけてくる。黒い仮面をしていても、美青年なのが分かる。「ありがとう、アストゥート。僕のパートナーが素晴らしいからね」 ラウルはカミリアの肩を抱き寄せる。その手は他の貴族に紹介してもらった時よりも、力がこめられていて。守られているような気がした。「美しい女性だね。初めまして、俺はアストゥート・ギタレス。ラウルとは古い知り合いなんだ。よろしく」「ラウル様の婚約者、ソニアです」 差し出された手に気づかないフリをして、うつむき気味に挨拶をする。「ソニアはちょっと人見知りでね」 ラウルはカミリアの髪を撫でながら、彼女を愛おしそうに見つめる。アストゥートは一瞬顔をしかめるも、すぐに笑顔になる。
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130話

「それは失礼。ところでティミッドが君を探していたよ」「え? 彼が来ているのかい?」 ラウルは目を丸くする。来ているだけでこんなに驚かれるティミッドがどんな人物なのか気になり、ラウルを見る。彼は困り顔をしていた。「向こうの壁際にいたよ」 アストゥートは自分の斜め後ろを指差しながら言う。そちらに目を向けるが、人が多くてここからでは見えない。「そうか……。ソニア、悪いけどここで待っててくれるかい? ティミッドは女性恐怖症でね。近くにいるだけで何も喋れなくなってしまうんだ」「けど……」 離れてしまってはラウルの護衛ができない。それに、アストゥートがいる。ラウルがカミリアの不安を和らげるように、柔らかな笑顔を向ける。「大丈夫、すぐに戻るから。僕がいない間、他の男と踊ってはいけないよ」 そう言ってラウルはティミッドがいる方向へ行ってしまう。すかさずアストゥートが距離を詰めて来て、1歩下がる。だが、アストゥートは再び距離を詰めてくる。「そう警戒しないで、ソニア。俺とも踊ってくれないか? 君に一目惚れしたんだ」 アストゥートは馴れ馴れしくカミリアを抱き寄せる。嫌悪で肌が粟立ち、反射的にアストゥートを突き放した。「私は、ラウル様の婚約者です。あの方を心の底から愛していますので」 アストゥートを睨みつけると、彼はあからさまにがっかりする。「あーあ、フラれちゃった。それほどまでに愛し合ってるカップルを邪魔するわけにはいかないね」 意外にもあっさりと、アストゥートはその場を去っていく。安堵するも、気は抜けない。カミリアは遠ざかっていく背中を睨みつけた。 アストゥートはひとり、外に出て葉巻に日をつけた。青白い三日月を睨みつける。「あの女……、この俺をフるなんていい度胸してんな」 ソニアの生意気な目を思い出し、イライラして近くの石像を蹴り飛ばす。地面が柔らかな土だったおかげで割れることも、大きな音が出ることもなかった。 アストゥートは倒れた石像に腰掛け、足を組んだ。
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