「感じのいい子だね。僕はティミッドのところに行ってくるよ。さっき見かけたんだ」「なるべくはやく戻ってきてね」「あぁ、分かってるよ。行ってきます」 ラウルはカミリアの髪にキスを落とすと、ティミッドを探しに行った。「キザなんだから……。他の女性にもしてるんじゃないでしょうね?」 髪に触れながら出てきた自分の言葉に驚く。(ラウルを好きになってるみたいじゃない。違う、ただ、人たらしなところに呆れてるだけなんだから) 自分にそう言い聞かせていると、誰かがカミリアにぶつかってきた。驚いてそちらを見ると、アストゥートだった。オールバックにしていた焦げ茶色の髪は少し崩れ、額には玉の汗が浮かんでいる。顔色もかなり悪く、今にも倒れそうだ。「失礼……。君は、確かラウルの……」「顔色が優れませんね。どうしたんですか?」 カミリアの質問に、アストゥートは眉をひそめる。「レディにこういうことは言いたくないが、彼女達の香水の匂いがキツくてね……。公務で疲れた心と身体には毒だよ……。君は、強い香水を使っていないんだね。だからラウルにも好かれるんだろう」 こうして話している間にも、アストゥートの顔色はどんどん悪くなり、汗が流れている。アストゥートに苦手意識はあるものの、こうも具合が悪そうだと心配になる。「休憩室で休んではどうですか?」「あぁ、そうしたいんだけど、そこまで歩いていける自信がなくてね……。悪いけど、付き添ってもらえるかい?」 休憩室に連れて行ってほしいというアストゥートに、カミリアの顔が強張る。ラウルからは他の男性と休憩室や庭の茂みに行くなと、口を酸っぱくして言われている。カミリアとしても、アストゥートと妙な噂ができたら不愉快だ。「もしかして、警戒してる? こんな病人が、女性を襲うと思うのかい? 今はそんな元気はないし、俺はそんな外道じゃないよ」 彼の言葉はあまり信用できないが、今にも倒れそうなアストゥートを放っておくのも気が引ける。カミリアはドレスの上から、そっとナイフに触れた。(何かあったら、反撃すればいい。病人に好き勝手されるほど、私はヤワじゃないんだから)
Terakhir Diperbarui : 2026-02-03 Baca selengkapnya