本を読んだり剣の手入れをしたりするが、どうにも落ち着かない。頭の中がラウルでいっぱいだ。「はぁ……」 盛大なため息をつき、ベッドに横たわる。ラウルが無理をしていたのは、騎士団に入ってからではない。きっと物心つく前から無理をしていたのだろう。彼がどんな人生を歩んできたのかは知らないが、そんな気がした。カミリアも酷な人生を送ってきたが、ラウルはそれ以上に酷な人生を送ってきたはずだ。だからこそ、彼はどこまでも優しく、強く在るのだろう。 誰かがドアをノックし、思考が止まる。起き上がって返事をすると、オネストが入ってきた。「どうしたの?」「貴女に聞きたいことがあります。貴女がここに来る前、ラウル様はシャムスに行って、貴女と会っていたのではありませんか?」 鋭い質問と視線に、言葉が詰まる。ラウルは今までシャムスの騎士団長であることを、彼らに隠していた。きっとラウルなりの考えがあってそうしていたのだろう。それを自分が話してしまっていいのだろうか? 真実を話して、彼らがラウルをどう思うだろう? そう考えると、何も言えない。「貴女を責めているわけではありません。貴女なら、何か知っていると思って訊ねたのです」 オネストはそう言って笑みを浮かべるが、とてもぎこちない。まるで今笑うのが初めてのようだ。「えぇ、ラウルは確かにシャムスに来ていましたが……」 サウラと会っていたことにしようとしたが、そしたら何故自分と知り合いなのか説明するのに困ってしまう。サウラは騎士団のことを気にかけてはいるが、騎士団長と王子は身分の差が離れすぎているし、自分が彼と親しい間柄と嘘をつくのは気が引ける。 どう答えるか悩んでいると、オネストが笑った。今度は自然な笑みだ。「ラウル様は、騎士団に入団されたのではないですか?」 隠していたことを言われ、カミリアは目を丸くする。オネストは困った人だと呆れ返る。「何故、分かったんですか?」「あの方は大人しそうに見えて、突拍子のないことを平然とやってのける方ですから」 団長であることを隠しても無駄だろうと悟ったカミリアは、観念して洗いざらい話した。オネストは相槌を打って大人しく聞いてくれた。
Zuletzt aktualisiert : 2026-02-02 Mehr lesen