All Chapters of 氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜: Chapter 151 - Chapter 160

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151話

 夜になると馬車に揺られてフローレス家の屋敷へ行く。ラウルと同じく公爵なだけあって、立派な屋敷だ。「ソニア、今夜は仮面をつけて。サウラとノクス王がいるから、今回は仮面をつけるようにって言われてるんだ」 馬車が止まると、マスカレードマスクを手渡される。カミリアはマスカレードマスクをつけると、改めて身だしなみを整える。今夜は両国の国王や王子がいるということで、1日目に来ていたドレスを着ている。身だしなみチェックが終わると、ラウルのエスコートで馬車から降りた。 水音がする方を見ると、大きな池と水車小屋があった。水辺の近くだからか、少しひんやりする。「大丈夫?」 肩をさすると、ラウルが抱き寄せてくれる。「ありがとう、大丈夫」 カミリアはやんわりとラウルから距離を取る。少し前なら婚約者に見えるようにと身を寄せただろうが、恋心を自覚してしまったせいで、それができなくなってしまった。 屋敷に入ると、両国の騎士がいた。その中に、ハーディの姿を見つける。呼びかけたいのを堪えていると、鈴のような声がカミリアを呼んだ。「ソニア、また会えて嬉しいわ」 リュゼが可憐な笑みを浮かべ、カミリアに歩み寄る。カミリアは駆け寄りたい気持ちを押さえて、できるだけ優雅にと心がけながらリュゼに歩み寄った。「実は、またソニアに会いたくてお父様に無理を言ってラウル様を招いていただいたの」 イタズラっぽく笑う様はとても愛らしく、抱きしめてしまいたくなる。「僕のソニアをそんなに気に入ってくれて嬉しいよ」 ラウルが声をかけると、リュゼは目を輝かせてラウルを見上げる。その目は、やはり恋する乙女の目だ。つい1ヶ月前まで騎士だった自分より、美貌と教養を身に着けたリュゼの方がラウルにふさわしいのではと思ってしまい、静かに落ち込む。「今夜はソニアのために、とっておきの料理を用意したの。席も、無理を言って隣同士にしてもらったのよ。はやく行きましょう」 リュゼは無邪気に笑い、カミリアの手を引く。彼女の可憐さに、落ち込んでいた気持ちが溶けていく。妹みたいだと思いながら、リュゼと一緒に食堂に入った。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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152話

 食堂には既にサウラが来ていた。彼の向かいには、赤髪の中年男性が座っている。お誕生日席のすぐ近くに座っていることから、彼がノクス王なのだろう。 ラウルはリュゼからカミリアを開放すると、ノクス王の元へ行く。「お久しぶりです、ノクス王」「そんな堅苦しい呼び方はやめてくれ。そんなことより、そちらの女性が噂になってる婚約者か? 俺にも紹介してくれよ」 ノクス王は鬱陶しそうに手を振ると、カミリアに好奇の目を向けた。その手の目線は苦手で、目を逸らしたくなるが、相手は国王だからと気づかないフリをする。「えぇ、もちろんです。こちらは僕の婚約者、ソニアです。彼女は外面も内面もとても美しい女性なんですよ」「お初にお目にかかります、ノクス国王。ソニアと申します」 カミリアがドレスの裾をつまんで挨拶をすると、ノクス王は目を細めた。「俺がもう少し若ければ、横取りしていたな。他の男共に取られないよう、気をつけるんだぞ」「もちろんですよ」 そう言ってラウルはカミリアの肩を抱き寄せた。どうするのが正解か悩んでいると、サウラが話に加わった。「イチャつくのは余所でやってくれ。いつまでも立ってないで、座ったらどうだ?」 サウラに言われ、ノクス王の隣にラウルが座る。その隣に座ると、リュゼがカミリアのドレスを軽く引っ張る。「やっと座ってくれた。寂しかったんだから」 拗ねたように言うリュゼがとても可愛くて、頬が緩む。カミリアははやくも食後の時間を楽しみにしていた。もちろん任務のことは忘れていないが、歳が近い同性と話せるのはカミリアにとって貴重な時間だった。 他の客も集まると、晩餐会が始まる。ラウル、サウラ、ノクス王はラウルが国王になること前提で、両国の未来を語っている。その間、様々な料理やワインが運ばれてくるが、カミリアはほとんど食べられないでいた。 コルセットで少量しか食べられないというのもあったが、頭がボーッとする。まるで酒でも呑んだかのように、顔が熱くなっていく。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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153話

「ソニア、このワイン、とても呑みやすくて美味しいの。呑んでみて」 リュゼに勧められ、ワイングラスを傾ける。酒に弱いカミリアは、文字通り傾けるだけ。それでも押し寄せてくるアルコールの匂いに、目眩を覚える。 強い酒を呑んでいる者がいるのか、部屋の中にアルコールが充満しているような気がする。(どうしよう、気持ち悪くなってきた……) アルコールにあてられ、火照った頬に触れる。すると、右頬に冷たい手が触れた。悲鳴をこらえてそちらを見ると、リュゼが心配そうにカミリアの顔を覗き込んでいる。「ソニア、顔赤いよ? 大丈夫?」「ちょっと、アルコールにやられちゃったみたい。大丈夫よ」 ヒソヒソ声で話すと、カミリアは水を飲んだ。少しでも良くなればと思ったが、良くなるどころか更に熱くなる。「ちょっと外に行かない? お父様、ソニアがお酒にやられちゃったみたいだから、外の空気を吸わせに行ってもいいかしら?」「あぁ、私は構わんが……」 フローレス公爵は、ラウルをチラリと見る。ラウルはカミリアの顔を覗き込んだ。「辛そうだね。リュゼになら任せてもいいかな。お願いできる?」「はい」 リュゼが返事をすると、ラウルは大きく頷いた。カミリアはリュゼの肩を借りて立ち上がる。「ごめんね、リュゼ……」 廊下に出ると、カミリアはリュゼに頭を下げる。リュゼはカミリアがいる晩餐会を楽しみにしてくれていた。それなのに、勧めてくれたワインや料理をあまり口にできなかっただけでなく、こうして迷惑をかけてしまい、いたたまれない気持ちでいっぱいになる。「いいの、気にしないで。近くでキツイお酒を呑んでる人がいたから、仕方ないわ」 リュゼの優しさが心に沁みる。本当にいい友達ができたと、心の底から思う。だが、交友パーティが終われば、自分は騎士に戻る。そうなったら彼女と会うこともなくなるだろう。罪悪感と寂しさが押し寄せる。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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154話

「外は冷えるから、ストールを持ってくるわね。ねぇ、そこのあなた。ソニアを外に連れて行ってあげて。そうね、池の近くがいいわ」 聞き覚えのある声に顔を上げると、ハーディがこちらに近づき、カミリアを抱き上げた。ただでさえハーディが来たことに驚いているのに、お姫様抱っこをされて困惑する。ここまでしなくてもいいのにと思ったが、カミリア自身も、体調を崩した令嬢をお姫様抱っこしたことがあるので、人のことを言えない。「すいません……」「いえ、仕事ですから」 流石にバレるんじゃないかとヒヤヒヤしながら、ハーディに身を預ける。懐かしい親友の匂いに、気持ちが落ち着いていく。 ハーディに抱き上げられたまま、外に出る。ひんやりとした風が気持ちいい。池に近づくと、ベンチが見えた。「あの、ここで大丈夫です。ありがとうございました」「どういたしまして、カミリア様」「え?」 本名を呼ばれてハーディを見上げると、彼女は冷たい目でカミリアを見下ろしていた。ハーディは大股で進むと、屋敷のすぐ近くにある穴にカミリアを落とした。 考える間もなく、カミリアは穴に落ちてしまった。穴の幅は2mほどで、高さは3mといったところか。地面は泥になっていたおかげで大した怪我もせずに済んだ。「そこで大人しくしてなさい、裏切り者」 ハーディは吐き捨てるように言うと、穴の縁より少し下にあるフックにランタンをひっかけ、その場を去っていった。「待ってよハーディ! 裏切り者ってどういうこと!? 私があなたに何をしたっていうのよ!?」 叫んでも、ハーディは戻ってこない。途方に暮れていると、足元がひんやりする。徐々に増えていく水が、ランタンに照らされている。「何これ、どういうこと!?」 親友の裏切りに、押し寄せてくる水。カミリアはパニックになった。どうして自分が裏切り者呼ばわりされ、こんな穴の中にいるのか、この穴が何のためにあるのか、理解できない。 ひとつだけ分かっているのは、このままでは溺れ死ぬということだけ。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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155話

 ちなみにこの穴の上部には屋敷の地下牢に繋がっている穴がある。フローレス公爵の性悪な父親が用意したものだ。 地下牢の空気孔から抜け出したら、この穴に落ちる仕組みとなっている。池の水を塞いでいる栓に紐が繋がれており、その紐の先端は反対の壁に固定されている。落ちた脱獄囚で栓が抜かれ、池の水が徐々に流れていくようになっている。 暗闇の中でも徐々に増えていく水に脱獄囚が怯えるように、ランタンを設置するフックまでつけられていた。「どうしよう……」 何か無いかと漁るも、ナイフしか持ち合わせていない。泳げないカミリアは、徐々に増えていく水に恐怖し、絶望した。 ハーディにカミリアを任せたリュゼは、自室で鼻唄を歌いながら、化粧直しをした。「ラウル様は渡さない」 真っ赤な口紅を引き、口元に三日月を描く。 リュゼはずっとラウルに恋い焦がれていた。他の令嬢と違い、地位や顔に惚れたのではない。ラウルの優しさに惚れ込んだのだ。昔から背が低いことがコンプレックスだったリュゼ。ダンスを教えてくれる教育係にも、もう少し背があればと嫌味を言われ、母には「小さく産んでごめんね」と謝られた。 社交界に出れば、他の令嬢達に子供が来る場所ではないと笑われた。そんなリュゼを励ましたのがラウルだった。大事なのは中身であって、見た目じゃない。身長なんて気にしなくていいと言ってくれたのを、昨日のように思い出す。 この前の社交シーズンで会った時に覚えてもらえていなかったのはショックだったが、当時の自分に魅力がなかっただけだと開き直り、ラウルに好きになってもらえる努力をし続けた。今回の交友パーティは、予定よりはやくラウルに会えると歓喜していたが、隣に邪魔な女がいた。 ソニアと名乗る女だ。あの美貌だから仕方ないと諦めかけたが、明らかに付け焼き刃のマナーで気が変わった。あんなメッキの教養で、ラウルのそばにいようなんて図々しいにも程がある。ラウルの隣にいるべきは、自分だと。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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156話

 そんな中、ソニアを忌々しげに見つめるシャムスの女騎士がいた。それがハーディだ。彼女の話によれば、ソニアというのは偽名で、本名はカミリア・ケリー。シャムスの副団長である彼女が、何故令嬢のフリをしているのか、ラウルがシャムスの騎士団長に昇り詰めたのか、謎ではあったが、そんなことはどうでもいい。 重要なのは、ハーディもカミリアを憎んでいるということ。これは最高の駒になると、リュゼは思った。だから父親に晩餐会でラウルを招き、シャムスの騎士を警護につけるように懇願した。父はラウル達が晩餐会に来るのはすでに決まっていたと教えてくれた。そして、シャムスの騎士の警護も。 それを聞いた時、リュゼは神が味方をしているように思えた。嘘つきのカミリアを消し、ラウルの隣に立つために、力を貸してくれたと。 ハーディから、カミリアは酒に弱いことと泳げないことを聞き、この作戦を立てたのだ。カミリアの料理は水に微量の酒を入れ、酔ったところで外に連れていき、穴に落とす。 ハーディにはあの穴に入れておけばカミリアが自力で出ることはできない。晩餐会が終わった頃に引き上げ、泥まみれのカミリアを食堂に連れていけば、彼女はラウルのそばにいられなくなると吹き込んだ。 あの仕掛けも、カミリアを溺死させるつもりでいることも、ハーディは知らない。ネタバラシをしたら、彼女はどんな反応をするだろう? そう考えるだけで心が踊る。「リュゼ様、ハーディです」 ノックと共に、ハーディの声が聞こえた。リュゼは悪魔の様な笑みを一瞬浮かべると、鈴のような声でハーディを入室させた。「言われたとおり、カミリアは穴に落として、フックにランタンを下げておきました」「お疲れ様。晩餐会が終わる頃に、彼女の死体を見つけてね」 歌うように言うリュゼに、ハーディは目を見開く。「今、なんと?」「だーかーらー、晩餐会が終わる頃、外の見回りをして、あの子の死体の発見者になれって言ったの」 分かりやすく言い直すと、ハーディの顔が見る見る青ざめていく。それが面白くて、リュゼは笑い声を上げる。声を上げて笑ったら教育係に怒られてしまうが、彼女を咎める者はここにはいない。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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157話

「あの穴はね、落ちたら池に繋がってる栓が抜けるようになってるの。まぁ、小さい穴だからすぐに満タンになることはないでしょうけど。きっと怖いでしょうね」「そんな……!」「私はそろそろ戻らなきゃ。じゃあね、親友殺しさん」 ショックで座り込むハーディを部屋に残し、ドアを閉めた。昔意地悪な教育係つけたアオリ止めの鍵を締めると、食堂に戻っていった。 食堂に戻ると、リュゼは使用人にカミリアの食器を下げ、ラウルの隣に自分の食器を移動させた。「ラウル様、ソニアは具合が悪いみたいなので、客室に寝かせてありますわ。ソニアの話を聞かせてもらっていいかしら?」「ソニアが? それは心配だ。部屋に案内してくれるかい?」 立ち上がろうとするラウルを、リュゼはやんわりと止めた。「心配なのは分かりますが、ソニアは眠っています。起こしたら可哀想です」「そう……そうだね……」 ラウルは諦めて座り直す。リュゼは内心ほくそ笑んだ。(ラウル様、すぐに虜にして差し上げますわ) 妖精のような可憐な笑みを浮かべ、ラウルの服の裾をそっと掴んだ。 その頃カミリアは、ナイフでドレスのスカート部分を引き裂いていた。ヤケになったわけではない、カミリアなりに脱出方法を見つけ出したのだ。ドレスを紐状にしていき、紐になった部分を片手に縛り付け、残りは濡れないように首に巻きつけていく。既にところどころ濡れてしまっているが、全部濡れるよりはマシだ。 全部を結びつけてロープが出来上がる頃には、水は腰あたりまで来ていた。 レッグホルスターからナイフを取ると、刃に布が当たらないように気をつけながら結びつけていく。「あ……」 ナイフの柄がサテンのロープから滑り落ち、水の中に入ってしまった。ダメ元で手を伸ばすも、届かない。「何か重りになるもの……」 周囲を見回したり、自分の身体を触ったりして重りになりそうなものを探す。ひとつだけ、重りになりそうなものを見つけたが、重りにしていいものかためらってしまう。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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158話

「ラウル……」 カミリアは今朝もらったばかりのネックレスを手に取る。大きな宝玉が、ランタンの光を反射して輝いた。ラウルはお守りにとこのネックレスを渡した。それなら、生き残るために使っても問題ないはずだ。それに、回収できる可能性は高い。 何より、この想いを伝えずに死ねない。少し前まではラウルへの想いは胸に秘めておこうと思っていたが、こうして命の危機に瀕して、想いを伝えなければ後悔すると悟った。 ラウルはサウラの禁断の恋を叶えるためにも、両国を変える必要があると言っていた。それなら、自分達の恋も叶うはず。ラウルなら、きっとそんな未来を切り開いてくれる。都合のいい解釈かもしれないが、生存本能がその考えを確かな未来と錯覚させた。「ラウル、私を助けて……」 カミリアはネックレスを外すと、両手で握って祈りを捧げる。その間にも水は徐々に増えていき、へそのあたりまで来ていた。 カミリアはネックレスのチェーンをサテンのロープに縛り付けると、振り回してフックめがけて投げた。ネックレスがランタンをかすめ、落ちてくる。カミリアは水没する寸前で、ネックレスをキャッチした。宝玉に小さな傷ができてしまい、心が苦しい。「落ち込む必要なんてない。ロープがフックに届くって分かっただけで無駄じゃなかったんだから」 カミリアは自分に言い聞かせて気持ちを奮い立たせると、何度もロープを投げた。水が胸まで来た頃、ようやくフックにサテンのロープが巻きついた。「まずは第一段階クリア。ここからが勝負ね……」 深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、目を閉じて記憶を辿っていく。思い出すのは、子供の頃の記憶。 泳げないカミリアに、せめて浮くことができるようにと、ハーディが一生懸命教えてくれた。『溺れかけても焦って手足をバタバタさせちゃダメ。身体の力をぬいて浮くの。怖がらないで」 再び深呼吸をすると、カミリアは足を離した。ダラリと力を抜くと、身体が浮き上がってくる。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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159話

『口から息を大きく吸って、吐く時は鼻からだよ』 肺に空気を溜めていくイメージで、口から吸い、鼻からゆっくり吐き出した。それを何度も繰り返す。その間水は徐々に増えていき、手首に巻いたロープがたゆんでくる。カミリアはたゆみがなくなるまで、手首にロープを巻きつけた。『やればできるじゃない! 溺れそうになった時は、そうやって浮くの。近くに流木とかがあったら、それにつかまって』 子供のハーディが、とびきりの笑顔を見せて褒めてくれる。それだけで勇気が湧いてくる。「ありがとう、ハーディ。絶対に生き残るから」 ハーディはリュゼの部屋で頭を抱えた。「どうしよう、私のせいでカミリアが……」 一時は死んでほしいと思ってしまったが、それは発作的なものであって、本当に死んでほしいと思っているわけではない。ただ、少し痛い目を見て、ラウルにフラレて欲しかった。 もしカミリアが本当に死んでしまったら、きっと後悔する。「助けなきゃ……」 ハーディは立ち上がり、ドアを開けようとするが……。「どうして開かないの!?」 ハーディは知らない。外から鍵をかけられたことを。どんなにゆすっても、ドアは開かない。「あの女……! はやく行かないといけないのに! 誰かいないの!? ここを開けて!」 ハーディは必死に声を張り上げ、ドアを叩いた。 その頃、ラウルはカミリアのことが心配で仕方がなかった。リュゼにカミリアのことを話せは話すほど、彼女が気になる。途中で話を切り替えられたが、相槌を打つのが精一杯だ。「リュゼ、やっぱりソニアの様子を見たいんだ。起こさないように気をつけるから」「でも……」「リュゼ、連れて行ってあげなさい。友達思いなのはいいことだが、ソニア嬢はお前の友達である以前に、ラウルの婚約者なんだぞ?」「はい、お父様……」 フローレス公爵が後押しをすると、リュゼはようやく頷いた。ラウルはそんなリュゼを不審に思いながら、彼女と一緒に食堂から出る。
last updateLast Updated : 2026-02-03
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160話

 リュゼの案内で2階の客室に入るが、そこには誰もいない。「リュゼ、ソニアはどこなんだい?」 強い口調で聞くと、リュゼは悲しげな目をしてラウルを見上げた。「ラウル様は、本当にソニアを愛しているのですね」「当たり前だろう。だから、はやく彼女のところへ連れて行ってくれ」 苛立ちが募り、怒鳴り気味になってしまうが、そんなことを気にしている余裕はない。カミリアに危険が迫っている。そんな気がしてならないのだ。「ラウル様、お可哀そう……。ソニアは、ラウル様を愛しておりませんのよ。今頃別室で、うちの使用人と夜を楽しんでいますわ」 リュゼは目にいっぱいの涙を溜めながら上目遣いで見上げてくる。(犯人はコイツか!) 気づけばラウルは、リュゼの胸ぐらを掴んでいた。リュゼはガタガタ震え息を荒くする。「あの子はどこだ? 言え」 自分でも驚くほど低い声で問いただすも、リュゼは震えてばかりで何も答えない。痛めつけてやろうかと考えていると、フェガリの騎士が勢い良くドアを開けた。「ラウル様! お連れ様は庭にいるそうです!」 ラウルはリュゼを投げ捨て、騎士に駆け寄り、彼の肩を掴んだ。「庭のどこにいる!? 無事なのか!?」「お、落ち着いてください! 今話しますから!」「ふふ、あっはは……! 無駄よ!」 ふたりの後ろで、リュゼが不気味な笑い声を上げるのだった……。 フェガリの騎士、ジャスティンに部屋から出してもらったハーディは、急いで食堂へ向かう。本当はすぐにカミリアの元へ行きたかったが、自分ひとりでは助けられる自信がない。それに、一刻もはやくラウルに知らせなければならないと思った。 粗方事情を話したジャスティンがどこかに行ってしまったのは癪だが、今は彼に構っている場合ではない。 食堂のドアを勢い良く開けると、貴族達は一斉にこちらを見た。だが、その中にラウルとリュゼの姿がない。
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