駙馬(ふば/皇帝の婿)は二十五歳、官位は三品に至る高官であり、その人生における唯一の汚点は、この私だ。私は粗野で無知な、誰からも疎まれる公主(こうしゅ/姫)だった。運命が変わったのは、同腹の弟が皇帝に即位し、私の身分もより高貴になってからだ。その後、私は時の宰相が一番の愛弟子、裴知昼(はい ちちゅう)に嫁いだ。裴知昼は善人だった。私が軍営育ちで、詩書に通じていないからといって、決して見下したりはしなかった。世間が私の悪口を言えば言うほど、彼は私に優しく接し、私の部屋を訪れる回数も増えた。そして、蛍灯(けいとう)を盗み見る回数も増えていった。蛍灯は、先代皇帝である父が崩御される前に私に下賜された侍女だ。幼い頃は令嬢として育ち、詩書にも通じていたが、父親が罪を犯した原因で、下女になったという。礼儀正しく、才ある彼女は、私とは対極の存在だった。父上が彼女を私に与えたのは、彼女を手本にして私に淑女になってほしいという願いからだったのだろう。「じゃあ、『小石榴(こざくろ)』っていうのがあの美しい侍女で、『蛍灯』様が公主ってこと?」「違う違う!公主様のお名前は唐榴(とう りゅう)。裴様が『小石榴』と呼ぶのに慣れてしまっているだけよ。滅多なことを言うもんじゃないわ!」「ええ、でも蛍灯の方が、いかにもお姫様らしい響きだもの」二人の下女が盛り上がっている背後に、私が立っているとも知らずに。……蛍灯は私のそばで、おどおどと立ち尽くし、一言も発しない。早朝の掃除に出ていた使用人たちが、こちらの騒ぎに気づき、皆が嘲笑おうと待ち構えている。軍営上がりの粗野な公主が、癇癪を起したらどうなるか。裴の屋敷はひっくり返るような大騒ぎになるだろう、と。私は彼らの期待通りに振る舞うつもりなど毛頭なく、わざとらしく咳き込むと、風邪を理由に部屋へと戻った。中庭には、呆気にとられた使用人たちが取り残された。「小石榴、朝議が終わったよ。お菓子を持ってきた」裴知昼が扉を開けて入ってくる。その体には外の風雪がまとわりつき、眼差しは温かく潤んでいる。私が彼の上着を脱がせている間、彼は持ってきたお菓子を蛍灯の懐に入れた。「お前の好きな味もある。食べなさい」蛍灯は温かいお菓子を抱え、怯えたような目で私を見る。私は視線を外し、何でもない風を装って言
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