「──何だ、平田か?」 「どうしたの、樹」 平田の声が聞こえた樹は、声が聞こえた方向に顔を向けた。 樹に腰を抱かれている女性は、甘ったるい声を上げて樹に擦り寄る。 そんな女に構わず、樹は平田を探し、そこで見つけた。 平田は誰かと喋っているように見える。 だが、その顔色は薄暗いフロア内でも真っ青になっているのが分かる。 (何か面倒事を起こしたのか……?) そこで樹は、平田の前に立っている2人の男女に視線を移した。 背が高い男と、男の腕に腰を抱かれている女。 その2人は後ろ姿しか見えないが、男に関しては背中からでも分かるくらい、ただものではない雰囲気を纏っていた。 そして、男の隣に居る女を上から下まで舐めるような視線で見つめた樹は納得する。 (随分いい体の女だな。平田はまた悪い癖を出して、他の男の女に手を出そうとしたのか……。金では靡かなかったのなら、相手もある程度権力のある人物か) 平田の女好きは相当なものだ、と樹は認識している。 恐らく自分より女遊びが激しく、誰彼構わず手を出そうとする所は無鉄砲で危なっかしい。 (だから普段はそういった店に連れて行ってやってると言うのに……こんな所で騒ぎを起こすなよな……) 面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。 だが、平田は平和テックの社長子息だ。平和テックには随分会社も助けられている。 大手取引先である平和テックを今、失うのは痛手だ。 (息子を手助けしてやっているからこそ、社長は今も尚こうして取引を続けてくれている部分もある。ここで見捨てたら社長の逆鱗に触れるかもな) 面倒だが、助け舟を出してやるか──。 そう考えた樹が歩きだそうとした時、樹が連れている女性が声を上げた。 「樹、私あちらの方にご挨拶をしたいのだけど……一緒に挨拶をしましょうよ?」 「──あれは」 女の示す方向に顔を向けた樹は、その人物を見て呆れた。 (あれはたいした取引先ではない。俺が一緒に行く意味はないな) そう判断すると、女の腰から手を離した。 「好きにしろ。俺は少し離れる」 「あっ、ちょっと樹──」 背後から自分を呼び止めるような女の声が聞こえたが、樹は足を止める事なくそのまま歩いて行く。 平田や、後ろ姿の男女に近づいて行く。 後ろ姿しか見えない女──その姿を視界に入れた樹は、女性の後ろ姿の美し
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