All Chapters of 夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした: Chapter 181 - Chapter 183

183 Chapters

181話

◇ 恭の園外学習の当日。 音羽と伏見は、飯野に迎えに来てもらい園外学習の保護者待ち合わせ場所に向かっていた。 恭は飯野が既に園に送り届けているらしく、音羽と伏見が来てくれる事を本当に楽しみにしているらしい。 車を運転しつつ、飯野が2人に2人の立ち位置の説明をした。 「今日、伏見さんと奥さんは、坊っちゃまのご両親として振る舞ってください」 「──えっ!?だけど、大丈夫なんですか?」 「はい。坊っちゃまの園に旦那様と奥様が来た事は1度もございません。苗字は玉櫛、と呼ばれてしまいますが、お2人は普段からお名前で呼び合っておられますから、大丈夫ですよね?」 「それは大丈夫ですが……園に提出している名前と違うけど、大丈夫なんですか?」 飯野の言葉に、伏見が心配そうに確認する。 だが、それにも飯野は自信満々に頷いた。 「ええ、問題ございません。本日の書類にはお2人のお名前を記載させていただいておりますので」 「──まあ」 「坊っちゃまにも、お2人の事を今日はご両親だと思って振る舞ってください、と伝えております。ですので、お2人も坊っちゃまの事はお子様として本日だけは接してください」 「──分かりました、任せてください……!」 音羽にとって、願ってもいない事だ。 音羽はぱっと笑顔で頷いた。 ◇ 「こちらが保護者の集合場所です。これからは、私もお2人を旦那様、奥様と呼ばせていただきますね」 飯野は車から降りる前にそう伝える。 音羽と伏見は、こくりと頷いた。 車から降りて少し歩くと、園児達が1箇所に集まっていた。 この集合場所で一旦落ち合い、園児達と保護者達は別々のバスに乗って目的地まで行くらしい。 音羽と伏見の姿に気がついたのだろう。 恭はぱっと表情を明るくして興奮したように頬を染めると、2人に向かって手を振った。 そんな恭の姿が可愛らしくて、愛おしくて堪らない。 音羽も満面の笑みで恭に手を振り返す。 恭は、自分の隣にいる園児に何やら話しかけられ、音羽達から顔を逸らしてしまったが、音羽の胸には例えようのない感情がぶわり、ぶわりとこみ上がってくる。 これは、歓喜だろうか。 それとも、感動だろうか。 自分の子供のイベントに参加する事が、音羽にとっては夢だったのだ。 それが、まさかこんなに早く叶うなんて。 音羽は、隣に立
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182話

音羽と伏見、そして飯野が保護者用のバスに乗り込む。 これから数時間、バスに揺られて地方にある工場見学に向かう。 工場は、食品の加工工場で、どんな風に食べ物が加工され、そして流通するのかを係の人が説明してくれる。 そして、園児達に実際加工し終わった食品の出荷準備をしてもらうらしい。 「──へえ、結構本格的なんだな」 「ええ、そうですね」 園から配られたプリントを、音羽と伏見はじっくりと確認していた。 音羽の隣に座っている伏見が、音羽にも見やすいようにプリントを傾けてくれていて、音羽はそれを覗き込んでいる。 2人で1枚のプリントを見ているから自然と2人の距離は近付いており、そんな仲睦まじい2人の様子を周囲の保護者達は羨ましそうに見つめていた。 園児達のバスが先に出発し、次いで保護者達を乗せたバスが出発する。 都内を出て、高速に乗り何度かの休憩を挟む。 休憩時間になると、園児達と保護者達は合流して少しばかり交流をする。 1回目の休憩時。 園児のバスの隣に保護者のバスも止まる。 「音羽。俺は喫煙所に行ってくる。恭と一緒に居てくれ」 「ええ、分かりました」 先にバスを降りてサービスエリアの喫煙所に向かって歩いて行く伏見を見送った音羽は、園児達のバスの入口に向かう。 ちらほらと園児が降りて来るのが見えて、音羽はそわそわしながら恭を待っていた。 すると、見慣れた恭の姿が見える。 「──恭ちゃん」 「っ!」 友人と話していた恭が、音羽の声に反応してぱっと顔を上げる。 嬉しそうに表情を綻ばせた恭は、笑顔で階段を降りて音羽に駆け寄った。 「お母さん……!」 「──っ」 恭が「お母さん」と言いながら音羽に駆け寄り、そのまま音羽のお腹に抱きつく。 危なげなく恭を抱きとめた音羽は、恭の口から出た「お母さん」と言う言葉に感極まり、すぐに言葉を返せなかった。 「坊っちゃま、喉は乾いていませんか?おトイレは?」 「喉は大丈夫です。だけど、おトイレには行きたい……。お母さん、着いて来てくれますか?」 もじもじと可愛らしく見上げて来る恭に、音羽は笑顔のまま頷いた。 「ええ、もちろんよ。手を繋いで一緒に行こうね」 「──はいっ!」 音羽に抱きついていた恭は、嬉しそうに笑顔で頷くと差し出された手を掴み、しっかりと音羽と手を握る。 「私も
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183話

◇ 喫煙所。 一足先に喫煙所で一服をしていた伏見は、煙を吐き出してバスをちらりと見やる。 音羽がバスから降りて来て、恭と合流している姿が見える。 飯野もしっかりと2人の背後に付き従ってくれているのが見える。 「──……」 先程から、音羽に対してチラチラと熱い視線を向けている男がいるのには気が付いていた。 (……金持ちには不倫する輩が多いとは聞いていたが……、まさか本当だったとはな) 自分の子供のイベントに参加していると言うのに。 それなのに、他の園児の保護者にうつつを抜かす男が居る事に伏見は驚いていた。 (……まあ、音羽の元旦那も似たような人種だしな。だが、飯野がいい具合に防波堤になってくれている) 運転手の飯野も、音羽に向けられる父親達の視線に気が付いている。 だからこそ、音羽と恭をガードするようにしっかりと付いてくれている。 (……恭をあれだけ大切に思ってくれている。近々引き抜くか) 飯野はとても優秀だ。 状況判断に長けており、情も厚い。 (そんな男は、恭にとっても信頼出来る人間になる) 最後の一吸いをした伏見は、吸殻を灰皿に押し付けて捨てると、喫煙所を出た。 音羽達が居るトイレ方面に足を向けた所で、背後から声をかけられる。 「あっ、あの……!」 「──?」 振り返ると、そこには同じバスに乗っていた園児の母親が数人居た。 女性達は皆、媚びるような目を伏見に向けて甘ったるい声で伏見に話しかける。 「すみません、火を貸していただいてもいいですか?」 「私たち、ライターを忘れてしまって……」 「もし良かったら……」 軽く頬を染め、伏見を窺うように話しかける母親達の声も、表情も甘ったるい。 伏見はあからさまに不快感を顕にして冷たく顔を背けた。 「俺は吸い終わったので。妻と子供の所に早く行きたいので失礼します」 呼び止める隙もなく、そのまま歩いて去ってしまう伏見に、母親達は悲しそうに眉を下げた。 (信じられないな。父親が父親なら、母親も母親か……) どこにもろくでもない両親は居るものだ、と伏見はがっかりしながら音羽と恭の元に向かった。 「飯野さん」 「──あっ、旦那様!」 音羽と恭がトイレに向かっている間、少し離れた場所で待機していた飯野に、伏見は話しかける。 それまで周囲を警戒するように強ばってい
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