◇ 恭の園外学習の当日。 音羽と伏見は、飯野に迎えに来てもらい園外学習の保護者待ち合わせ場所に向かっていた。 恭は飯野が既に園に送り届けているらしく、音羽と伏見が来てくれる事を本当に楽しみにしているらしい。 車を運転しつつ、飯野が2人に2人の立ち位置の説明をした。 「今日、伏見さんと奥さんは、坊っちゃまのご両親として振る舞ってください」 「──えっ!?だけど、大丈夫なんですか?」 「はい。坊っちゃまの園に旦那様と奥様が来た事は1度もございません。苗字は玉櫛、と呼ばれてしまいますが、お2人は普段からお名前で呼び合っておられますから、大丈夫ですよね?」 「それは大丈夫ですが……園に提出している名前と違うけど、大丈夫なんですか?」 飯野の言葉に、伏見が心配そうに確認する。 だが、それにも飯野は自信満々に頷いた。 「ええ、問題ございません。本日の書類にはお2人のお名前を記載させていただいておりますので」 「──まあ」 「坊っちゃまにも、お2人の事を今日はご両親だと思って振る舞ってください、と伝えております。ですので、お2人も坊っちゃまの事はお子様として本日だけは接してください」 「──分かりました、任せてください……!」 音羽にとって、願ってもいない事だ。 音羽はぱっと笑顔で頷いた。 ◇ 「こちらが保護者の集合場所です。これからは、私もお2人を旦那様、奥様と呼ばせていただきますね」 飯野は車から降りる前にそう伝える。 音羽と伏見は、こくりと頷いた。 車から降りて少し歩くと、園児達が1箇所に集まっていた。 この集合場所で一旦落ち合い、園児達と保護者達は別々のバスに乗って目的地まで行くらしい。 音羽と伏見の姿に気がついたのだろう。 恭はぱっと表情を明るくして興奮したように頬を染めると、2人に向かって手を振った。 そんな恭の姿が可愛らしくて、愛おしくて堪らない。 音羽も満面の笑みで恭に手を振り返す。 恭は、自分の隣にいる園児に何やら話しかけられ、音羽達から顔を逸らしてしまったが、音羽の胸には例えようのない感情がぶわり、ぶわりとこみ上がってくる。 これは、歓喜だろうか。 それとも、感動だろうか。 自分の子供のイベントに参加する事が、音羽にとっては夢だったのだ。 それが、まさかこんなに早く叶うなんて。 音羽は、隣に立
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