裕衣の視線をベタベタと受け続けていた伏見の背筋には、悪寒が走っていた。 このまま裕衣との会話を続けていたら、仮面が剥がれてしまいそうだ、と判断した伏見は半ば無理矢理会話を終わらせた。 「──〜っ、くそっ、気色悪い……っ」 まるで全身を舐め回すようなねっとりとした視線だった。 自ら恭の母親だ、と自己紹介をしておきながら、他の男に対して色を含んだ視線を向けるなど、考えられない事だ。 伏見が両腕を摩りつつリビングに戻ると、音羽がリビングのソファに向かってゆっくり歩いて来ているのが見えた。 「随分長くお話されていたんですね、蓮夜」 「──音羽!歩いて大丈夫か?」 「だ、大丈夫ですよ。ゆっくり歩けば大変じゃないですから……」 慌てて駆け寄ってくる伏見に、音羽は微かに頬を染めて顔を逸らしつつそう答える。 音羽の可愛らしい反応を見た伏見は、癒される心地がした。 「音羽、抱き上げるぞ」 「えっ、わっ、きゃあ!」 伏見はそう言うなり音羽を抱き上げ、そのままソファに腰を下ろす。 向かい合わせになるように音羽を抱いたまま座った伏見は、音羽の肩に額を乗せてぐりぐりと擦り付けた。 「蓮夜……?どうしたんですか。それに髪の毛がまだびしゃびしゃじゃないですか!家の中はエアコンが効いてて涼しいんですから、しっかり乾かさないと風邪をひいちゃいますよ!」 「……音羽が乾かしてくれ。俺は来客対応でぐったりした……最悪だ……」 「ええ?一体誰が来たんですか?お仕事関係の人ですか?」 音羽は浴室から持って来ていたのだろう。 大判のタオルを広げると、伏見の髪の毛に被せてぽんぽん、と軽く叩き水分を拭って行く。 音羽にされるがままだった伏見は、裕衣の名前を呟いた。 「来たのは、玉櫛 裕衣だった……」 「──え」 伏見の髪の毛を優しく拭いていた音羽の手がぴたり、と止まる。 だが伏見は言葉を続けた。 「もしかしたら、以前に俺と音羽の後ろ姿か何かを遠目から見たのかもしれない。俺の妻が音羽かどうか探っている感じだったな……。勿論名目は恭の母親として挨拶をしに来たって体を装ってたが」 「……それで、蓮夜はどう答えたんですか?」 「音羽が一緒に住んでいる事は本当だからな。妻とは数年前から、と話した。嘘は言っていないだろう?」 伏見のその言い方で、上手く誤魔化してくれ
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