LOGIN夫と夫の愛人の裏切りによって無実の罪で刑務所に入れられてしまった音羽 刑務所で暴行を受け、救急搬送された事がきっかけで、夫との子供を妊娠していたと知る 音羽を刑務所から出すと優しく告げた夫 だが、当初の刑期が何故か伸びてしまった 子供も夫と愛人に奪われ、実の母は死んだと言われる 夫は、音羽の筆跡を偽造し、勝手に離婚をしていた 途方に暮れる音羽の前に現れたのは、どこか危険な香りを纏う男だった 「表の世界に戻れないなら、俺と一緒に来ればいい」 表の世界で、輝かんばかりの日々を送る元夫と、愛人 せいぜい表の世界でふんぞり返っていればいい 私は、裏の世界からあなた達を引きずり落とす 元夫が泣いてすがっても、もう遅い
View More深夜0時──。 夜中になっても、伏見は帰らない。 音羽はそれでもじっと待ち続けた。 深夜1:00──。 じとり、とした空気がじっとりと汗を滲ませる。 音羽は額にかいた汗をハンカチで拭いつつ、伏見を待ち続けた。 「蓮夜……何かあったの……?」 夜遅くなる、と言っていた。 帰ってこない、とは言っていなかった。 「どうしよう……電話、しても大丈夫かな……」 音羽はスマホの電源をつけ、伏見の番号を呼び出す。 電話をかけてもいいだろうか。 だけど、仕事をしていたら──。邪魔をしてしまうだろうか──。 「蓮夜の仕事の邪魔になったら、嫌だ……」 音羽はそう呟くと、伏見の名前を呼び出していたスマホの画面を消す。 「もうちょっと……、もうちょっとだけ待ってみよう……」 ふう、と息をつきつつ音羽は汗を拭う。 だがそうして音羽が待っていても、伏見の車が戻ってくる事はない。 深夜、2:00。 「……流石にこの時間まで戻って来ないのは変だわ……」 もしかして、伏見の身に何かあったのではないか──。 今度は、そんな不安さえ込み上げてくる。 伏見の身に何かあったらどうしよう。 音羽は顔色を悪くさせると、誰か──、と必死に頭を働かせた。 そこで、ふとある人物を思い出す。 「──そうだ、律子さん……!」 そう言えば律子は伏見と連絡を取り合っていた事を思い出したのだ。 もしかしたら顔見知りだったのかも、と音羽は律子と伏見の様子を見てそう思った事がある。 「りっ、律子さんならもしかしたら蓮夜の事を知っているかも……っ」 音羽は慌てて自分のスマホの電源をつけ、律子の名前を呼び出そうとした。 だが、音羽が律子に電話をかけるより早く──。 音羽のスマホが着信音を鳴らした。 スマホの画面には、今音羽が電話をかけようとした人物──律子の名前が表示されていた。 ◇ 都内にある高級ラウンジ。 そこに、とても機嫌の悪い男がソファに深く座り込み項垂れていた。 「──若」 「うるさい、俺に話しかけるな」 若、と呼ばれた男──伏見の隣で恐る恐る話しかけた黒服の男は、眼光鋭く伏見に睨みつけられ、低い声でそう言われすぐに口を噤んだ。 高級ラウンジには、複数の男女が伏見を遠巻きにして気まずそうに揃っていた。 綺麗なドレスを身にまとっている女性達も、
薄っすらと明かりのついたリビング。 音羽は、壁掛け時計に視線を向けた後、悲しそうに溜息を吐き出した。 時計の針が示す時刻は深夜23:50。 もうすぐで日付が変わってしまう時間帯。 こんな時間になっても、伏見が家に帰ってくる気配は無い。 「どうしよう……蓮夜が怒って、もう二度と帰って来てくれなかったら……」 音羽は座って座っていたソファから立ち上がり、落ち着きなくうろうろとリビングを動き回る。 「私は、どうしてあの時すぐに嫌じゃなかったって答えなかったの……っ」 朝の自分の行動に、後悔してもしきれない。 「……夫がいたのに、蓮夜に触れられるのが嫌じゃないって事が知られたら……だらしのない女だって……快楽に弱い女だって、蓮夜に思われたら嫌だったんだもの……」 実際、音羽は伏見に触れられるのは嫌じゃなかった。 だけど、誰でもいい訳じゃない。 触られるのが伏見だから、嫌じゃなかったのだ。 「あの刑務所で……出会って……、助けてくれたのは蓮夜だもの……」 沢山話をした。 「蓮夜は、挫けそうになっていた私を沢山励ましてくれたもの……」 ずっと励ましてくれていたのだ。 「それに、私が馬鹿な事をしようとしても……蓮夜は止めてくれた……。そればかりか、家に住んでいいって、働く事まで助けてくれたのに……っ」 これだけ沢山助けてくれて、優しくしてくれて。 ドン底に居る時にあんな風に優しくしてくれて、助けてくれて。 惹かれない訳がない──。 そうだ、伏見に惹かれるのは、当然だ。 人生のドン底にいる時に優しく手を差し伸べてくれて、その時だけじゃなくて今だってずっと助けてくれている。 それで、好きにならない人なんているのだろうか。 「──私は、蓮夜が好き……、なのね……」 だから、あんな風に体に触れられても。 キスをされても。 ちっとも嫌じゃなかった。 「……蓮夜が好き、だからこそ……」 音羽は自分の口で、自分の気持ちを言葉にして改めて自覚する。 自覚すると同時に、じわじわと頬が熱くなってきた。 「蓮夜……っ、蓮夜にちゃんと言わなきゃ……っ」 音羽はぱっとリビングの窓から外を見る。 だが、暗い外に、車のライトの光は未だ見えない。 音羽は上着を羽織り、外に出てみる事にした。 もしかしたら、伏見がもうすぐ帰ってくるかもしれな
「ちっ、違──、無理とか、我慢とか……っ!」 音羽は慌てて伏見を見上げ、そう言葉を紡ぐ。 だが、そこまで言葉を紡いだ音羽はハッとしたように目を見開くと、突然口を両手で塞いだ。 「音、羽……?どうした……?」 突然狼狽えだした音羽に、伏見は心配するように彼女の顔を覗き込んだ。 音羽の目は驚いたように見開かれていて。 瞳が動揺したように揺れていた。 そんな音羽の様子を見た伏見の瞳が翳る。 黒い瞳が仄暗く沈んで行く。 「すまない、俺は部屋を出るから……」 これ以上音羽のそんな様子を見続けるのが嫌で。 伏見は掴んでいた音羽の肩をぱっと離し、体も離した。 (こんな事を言って……いざ音羽から拒絶されたらと思うと……) 辛すぎる。 だから、音羽から拒絶される前に伏見は逃げてしまう事を選んだ。 本当は少しだけ期待していた。 音羽が「嫌じゃない」ともしかしたら言ってくれるのでは、と浅ましい期待をしていたのだ。 実際、音羽は伏見の前で良く笑顔を見せてくれるし、頼ってくれているように見えた。 体に触れても、嫌がる素振りは見えなかった。 だから、もしかしたら──。 元夫にかけていた愛情の、ほんの一欠片くらいは自分に心を許してくれているのでは。 そんな風に浅ましい希望を抱いて──。 だが、黙り込んでしまった音羽の態度が、答えだ。 伏見がベッドから降りた瞬間、音羽は弾かれたように伏見を振り返る。 「仕事に行ってくる。……今日は遅くなるから夕飯はいらない」 それだけを口にすると、伏見は音羽の返事を聞かずにそのまま扉を開けて寝室を出て行ってしまった。 「れ、蓮夜──!」 音羽は慌てて伏見の名前を呼び、彼を呼び止めようとした。 だが、扉が閉まってしまい、音羽の声は扉に阻まれ伏見には届かなかった。 「れ、蓮夜……っ、違うっ、嫌じゃなかった事を説明しなきゃ……っ」 音羽は慌ててベッドから立とうとしたが、先程散々伏見に快楽を与えられた足はぷるぷると震え、力が入らない。 音羽の声も掠れたままで、何度か咳き込む。 「わっ、私がすぐに返事をしなかったから……っ、蓮夜に勘違いさせてしまった……っ」 傷付いたような、顔をしていた。 「あんなに助けてもらったのに……っ」 ぷるぷると震える足に必死に力を入れ、ようやく音羽は立ち上がる。 何とか壁
「んぅ……ッ!?」 突然の事に、音羽は驚き口を薄っすらと開けてしまった。 すると、僅かに開いた唇の隙間から冷たい水が流れ込み、無意識の内にそれを嚥下した。 こくこく、と音羽が水を飲むのが分かり伏見はほっとする。 音羽が全て水を飲みきった事を確認した伏見が唇を離すと、音羽は追いかけるように伏見に顔を寄せた。 「──っ、」 「もう少し……ください……」 とろんとした音羽の瞳。 伏見は先程までの熱が再びぶり返すような感覚に陥ったが、必死に理性を総動員して「抱いてしまいたい」という衝動を何とか抑える。 「分かった」 こくり、と頷いた伏見は再びペットボトルの水を自分の口に含むと、音羽に顔を近付ける。 伏見の顔が近付き、音羽はとろんと落ちそうになっていた瞼を伏せ、口を開いた。 (──ああ、くそっ) 伏見は胸中で嘆き、音羽の後頭部に自分の手を回して引き寄せた。 ◇ ペットボトルの中身が半分程になるまで、口移しで水を飲ませてもらった音羽。 キスがこんなに心地良いものだとは思わなくて。 音羽がぼうっとする頭のままされるがままになっていると、水を飲み干した音羽の口内にするり、と伏見の舌が入り込んだ。 ぴくり、と音羽の肩が震えたが、伏見の舌が入り込んでも音羽は嫌な感情など微塵も湧かず、目を閉じて受け入れる。 先程までの暴力的な快楽ではなく、優しい口付けが音羽はとても心地よかった。 舌を絡め合っていても、いやらしさや艶めかしい雰囲気にはならず、ただただ優しくキスが落とされる。 「──音羽」 「……ふっ、……蓮夜?」 唇を離した伏見が、何とも言えない表情で音羽の名前を呟く。 ぽやぽやとした頭のまま、音羽はただ伏見をじっと見つめ返す。 その音羽の表情に、伏見は何かに耐えるようにぐっと眉を寄せると咎めるように声を低くした。 「少しは、抵抗してくれ……。簡単に体を許してくれるな……」 「抵抗……」 「ああ。こんな風に……望まぬ行為をされてるのに無抵抗でいたら駄目だ。しっかりと拒絶しろ」 「望まぬ行為……」 音羽は、ぼんやりとした目で伏見に言われた言葉を復唱する。 そんな音羽の様子を見て、伏見はやり過ぎた、と頭を抱えたくなる。 確かに我慢出来なくなって、音羽に色々してしまった自覚はある。 だが、もっと本気で拒絶してくれないと──。