Se connecter夫と夫の愛人の裏切りによって無実の罪で刑務所に入れられてしまった音羽 刑務所で暴行を受け、救急搬送された事がきっかけで、夫との子供を妊娠していたと知る 音羽を刑務所から出すと優しく告げた夫 だが、当初の刑期が何故か伸びてしまった 子供も夫と愛人に奪われ、実の母は死んだと言われる 夫は、音羽の筆跡を偽造し、勝手に離婚をしていた 途方に暮れる音羽の前に現れたのは、どこか危険な香りを纏う男だった 「表の世界に戻れないなら、俺と一緒に来ればいい」 表の世界で、輝かんばかりの日々を送る元夫と、愛人 せいぜい表の世界でふんぞり返っていればいい 私は、裏の世界からあなた達を引きずり落とす 元夫が泣いてすがっても、もう遅い
Voir plus「──園外、学習ですか……?」 飯野から話された内容に、音羽は驚きの声を上げた。 「はい、実は毎年この園外学習はあるのです。園児達が2泊3日で地方に向かい、都心では学べない地方ならではのお仕事を見学、体験するといった行事なのです」 「……恭ちゃんは、昨年も参加したのですか?」 「ええ、私が坊っちゃまに付き添いを」 飯野の返答に、音羽は眉を顰める。 園外学習に、樹はおろか裕衣も着いて来なかったと言う事なのだろう。 音羽の考えが分かったのだろう。 飯野は慌てて口を開く。 「旦那様も、奥様もこの時期は仕事がお忙しく……それで、坊っちゃまの事は私に任せて下さっていて……」 「──それで、今年もその園外学習があると?」 飯野の言葉に、伏見が返す。 先程飯野から渡された園外学習のしおりを渡されており、それに目を落としていた。 「は、はい……今年も私が坊っちゃまに付き添う予定なのですが……その……もしよろしければ……」 飯野の、期待と不安が伴った瞳──。 伏見は口元に笑みを浮かべ、くつりと喉を鳴らすと言葉を返した。 「俺と音羽に、参加してもらいたい……。そう言いたいんですか?」 伏見の言葉に、音羽も恭も驚き目を見張る。 音羽は驚いていたが、恭は伏見の言葉を理解するとじわじわと期待が混じった視線を音羽と伏見、2人に交互に送った。 キラキラ、と輝く恭の瞳に見つめられてしまえば、にべもなく「ノー」と断り難い。 音羽は不安そうに飯野に質問をした。 「だけど……私たちは恭ちゃんのご両親じゃないですし……。その、無関係の私たちが参加するのは……」 「そ、その辺りは大丈夫です……!坊っちゃまが通っていらっしゃる園は、似たような境遇のご家族も多く、ご両親揃って参加出来る方は少ないですし、私のような立場の者が付き添いとして参加している場合も多いですから……!」 「……どうしましょう、蓮夜」 音羽は意見を求めるように伏見にちらりと視線を向ける。 すると、伏見はあっけらかんと答えた。 「俺たちが参加しても大丈夫、と言うなら本当にそうなんだろう」 そこまで言葉にすると、伏見はしゃがみ込んで恭と目線を合わせた。 「恭の園外学習、どうやらおじさんやおばさんも参加出来るみたいだ。……恭のお勉強している所を、見に行ってもいいか?」 「──っ!」 伏
子供をそっちのけにして、樹と裕衣は自分達の欲望のまま生活し続けているのだ。 それを理解した瞬間、音羽は恭を抱きしめる腕の力を込めた。 音羽の腕の力が強くなった事に、恭は不思議そうに瞳を瞬かせたが、嬉しそうに頬を綻ばせて恭も自分の腕に力を入れて音羽にぎゅっと抱きつく。 ぎゅうぎゅうと抱き合う母子を優しい眼差しで見つめていた伏見はくつくつと喉奥で笑い声を上げながら口を開いた。 「ずるいな、俺も混ぜてくれよ」 「えっ、わあっ!」 「ちょ、ちょっと蓮夜……!」 伏見は音羽と恭に向き直り、恭を間に挟んで音羽をしっかりと自分の両腕で抱きしめる。 体の大きな伏見に、背後からすっぽりと抱きしめられ、目の前には音羽の体があって。 恭は今まで感じた事のない安心感と、どこか懐かしい音羽の香りに自分の鼻がつん、とした。 ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれる腕の力は決して強くはないけれど、温かく恭を守るように回されている。 音羽の笑い声も、不思議と落ち着く心地だ。 「ふっ、ふふっ!」 恭は嬉しくて嬉しくて、思わず自分の口から笑い声が漏れてしまった。 「ちょっと、蓮夜……!恭ちゃんが潰れちゃう……っ!」 「そうか?苦しいか、恭?」 「全然苦しくないです!もっとぎゅっとしてください!」 「ははっ、任せろ」 ベンチで3人、わあわあ騒ぎながら、時折笑い声を零しながら抱き合う。 そんな様子を、運転手の飯野は公園の入口から見守っていた。 時間がやって来て、恭を迎えに来たのだが飯野は本当の親子のように触れ合う3人の邪魔をしたくなくて暫くその場で待機していたのだ。 だが、視線に敏感な伏見は飯野の存在に既に気付いている。 一頻り笑い合った後、不意に腕を離して恭と音羽を解放すると恭の頭を撫でた。 「恭、飯野さんが迎えに来てるよ。そろそろ帰ろうか」 「あっ、本当ですね」 伏見の言葉を聞き、恭が公園の入口に顔を向ける。 すると、そこにはひっそりと目立たないようにして立っている飯野の姿があった。 伏見は入口に背を向けていて、見えないはずなのに。 人の視線や、人の気配に鋭い伏見の一面を見て、音羽は心の中で「流石ね」と独りごちる。 (私なんて、恭ちゃんに夢中で全然気が付かなかった……。私の方が公園の入口が見えるのに……) いつ気がついたのだろうか。 そう思いつつ
「ありがとうございました」 「どういたしまして」 写真を撮ってくれた親子にお礼を告げ、公園から去って行く親子を見送る。 恭は先程3人で撮ってもらった写真に釘付けだ。 伏見のスマホで写真を撮ったため、伏見がベンチに座り、膝に恭を乗せて一緒に小さなスマホの画面を見ている。 傍から見れば、本当に仲睦まじい様子の親子だ。 そんなに沢山写真を撮ったのだろうか? そう不思議に思いながら音羽が2人に近付いて行くと、恭が伏見に話しかけている。 「このドレスを着ているおばさん、すっごく綺麗です!」 「そうだろう?まるで天女のようだった。この会場にいる人全員の視線を音羽は独り占めしていたよ」 「わああ……いいなあ、僕もこんな綺麗なおばさんを見たいです……」 「いつでも見れるさ。今度一緒にパーティーに参加するか?」 揶揄うような伏見の提案に、恭はキラキラと目を輝かせて頷く。 「いいんですか!?」 「ははっ、恭のお父さんとお母さんがいいよって言ってくれたらな。どこにでも連れて行ってやる」 「──お父さんとお母さん……」 伏見の言葉を聞いた瞬間、それまで弾けんばかりの笑顔を見せてくれていた恭の表情が一瞬で曇る。 寂しそうに俯く恭を見た音羽は、堪らなくなってすぐ隣のベンチに腰掛けた。 「恭ちゃん……お父さんとお母さんとはあまりお話とかしないのかな?」 今まで、避けてきた話題──。 幼い恭を傷付けてしまわないか、と敢えて話題にしなかった。 だが、恭の親権を取り戻すためには避けては通れない道。 隣に座った音羽に、恭は伏見の膝から手を伸ばして音羽に抱きつくとぎゅっと力を込めて呟いた。 「お父さんも、お母さんも……僕の事が嫌いなんだと思います……」 「──どうして、そんな風に思うの?」 「昔から、僕とはあんまりお話してくれないし……お母さんは、僕の本当のお母さんじゃないから……。僕の事、邪魔なクソガキだって、ずっと前から言ってます……」 「──っ」 なんて、酷い事を……! 音羽は、思わずそう叫び出しそうになってしまった。 だが、ここで取り乱してしまったら元も子もない。 音羽は苦しそうに、悲しそうに呟く恭を強く抱き締め、頭を撫でた。 「そんな酷い事を、恭ちゃんに対して本当のお母さんじゃない女性が言っているの?」 「──はい」 こくり、
◇ 「おばさん、こんにちは!」 「こんにちは、恭ちゃん。今日も凄く元気ね」 翌日。 音羽は伏見と一緒に恭が保育園から帰って来るのを待っていた。 音羽が近くに住んでいる。 それが分かった樹と裕衣が、恭を保育園に行かさずに家に閉じ込めるのではないか。 そんな不安があったのだが、恭は変わらず保育園に行っている。 それに、音羽や伏見の事を樹や裕衣から聞かされていないのだろう。 恭の態度は今までと変わらず、音羽にも伏見にも笑顔で挨拶をしてくれる。 恭の運転手である飯野も、樹達から何も聞いていないのだろう。 普段と変わらずにこにこと笑って恭を音羽と伏見に送り出している。 「伏見様、それに奥様。それでは私は少し家に……坊っちゃまの事をよろしくお願いいたします」 「ええ、大丈夫ですよ」 「恭を連れて公園にいますね。何かあれば連絡してください」 頭を下げて家に入って行く飯野を見送り、音羽は恭と手を繋いでお喋りをする。 「恭ちゃん、今日は保育園でどんな事をしたの?」 「今日はお友達と一緒に絵本を読んでもらいました。その後は、園庭でかけっこをして!」 「ふふふっ、そうなの?元気いっぱいね。楽しかった?」 「はい!」 手を繋ぎ、歩く姿は本当の親子のよう。 伏見は手を繋いで歩く音羽と恭の少し後ろからスマホを構え、手を繋いで歩いている後ろ姿を写真に収めた。 カシャ、と言う音が聞こえたのだろう。 不思議そうに振り返る音羽と恭。 振り返るタイミングも、不思議そうに首を傾げる様子も、親子そっくりだ。 伏見は自然と笑い声が漏れてしまう。 「蓮夜?どうしたんですか?」 「写真?おじさん、写真を撮ったんですか?」 キラキラ、と目を輝かせる恭に、伏見はしゃがんで恭の目線に合わせてやると「ああ」と言いながら今しがた撮ったばかりの写真を恭に見せてやった。 「夕日がちょうど綺麗でな。手を繋いで歩いている2人が絵になったから、写真を撮ったんだ」 「──わっ、本当に綺麗……」 「わああ!本当ですね!いいなぁ……この写真、僕も欲しいです……」 「なら、今度飯野さんにプリントアウトしたものを渡そうか?」 伏見の言葉に、恭は嬉しそうにぱっと顔を輝かせた。 だが、すぐに首を横に振ってしまう。 恭の行動に、音羽は一瞬だけ寂しそうに表情を曇らせたが、恭が次
◇ 玉櫛ホールディングス。 ビルの目の前にある小さな公園。 そこにやって来ていた音羽と、伏見。 ベンチに座る音羽の隣に、伏見がゆったりと座っていた。 刑務所に居る時の伏見は、何というか今目の前にいる伏見と比べて柔らかい雰囲気で、太陽の下にいても何ら違和感など無かった。 だが、今音羽の目の前に居る伏見は太陽の明るい日差しはどこか似合わない。 全身が真っ黒だからだろうか。 音羽はそう考えたが、それだけじゃないような気がする。 刑務所に居た頃の伏見と、今の伏見では全身から醸し出される雰囲気がまるで違う。 どこか夜を感じさせるような伏見の雰囲気──空気間、とでも言うのだろうか。
それからは、あっという間に時間が過ぎた。 音羽が恭を手放して、どれくらい経っただろうか。 数ヶ月はもうとうに過ぎているかもしれない。 そして、そんな頃──。 同じ留置所に入っていて、当初から音羽に良くしてくれていた律子の、仮釈放が決まった。 「おめでとうございます、律子さん!」 音羽は、律子からその話を聞くなり、まるで自分事のように喜び、律子に抱きついた。 「そ、そりゃあ嬉しいけどさ……だけど、音羽……あんたはまだまだ──……」 律子は、悔しげにぐっと唇を噛み締める。 模範囚として認められた律子以上に、音羽は真面目に過ごし、音羽こそ模範囚として認められてもおかしくない程な
音羽は、裕衣の憎悪が自分の腹に向かっている事に本能的に気が付いた。 「──何っ、その目は……っ!」 裕衣の視線から、咄嗟に音羽がお腹を庇う。 すると、裕衣は音羽の行動を見て嘲笑うかのように真っ赤な唇を歪めた。 「やだ……っ、そんな反応……っ、まるで動物みたいだわ……!」 「何ですって!?」 「メスが危険から咄嗟に我が子を守る姿、とでも言うのかしら?ふっ、ふふ……動物が我が子を守る時ってこんな感じなのかしら?……まあ、私は人間ですから、音羽さんのように本能で動きませんけど……」 くすくす、と裕衣の嘲笑う声が音羽の耳に嫌にへばりつく。 裕衣の侮辱も、嘲笑う様子を見ても、音羽は顔
律子達が医務室で手当てを受けている間。 音羽は、カウンセリング室で伏見のカウンセリングを受けていた。 「気分は?気持ちが不安定になっていたりはしないか?」 「だ、大丈夫です伏見先生。びっくりはしましたが……」 「それなら、良い。……ここから軽作業場が良く見える。いきなりあんな騒ぎが起きて驚いた」 音羽の言葉に、伏見は緩く口元を笑みの形に変えた後、表情を引き締め、そう続けた。 「この部屋から見えたんですね。だからあんなに早く駆けつけて……!だ、だけど伏見先生!いくら先生が男性で、力が強くとも、あんな風に暴れている人に近付いたら危ないです!女性だからと言って、その……ここは、刑務所
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